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京都教育大学附属桃山小学校 教育実践研究発表会 レポート No.2 (2016年11月25日)

 2016年11月25日に、京都教育大学附属桃山小学校の教育実践研究発表会に参加しました。テーマは、「誰でも指導できるメディア・コミュニケーション科を目指して ~教科としての質を高め、普遍的に指導することができるように~」でした。

 京都教育大学附属桃山小学校では、豊かな社会力の基本となる人と関わる力の育成を目指して、メディアを選択活用し、自分の思いや考えを伝えあうことができる力を向上させるための教育課程として、新教科「メディア・コミュニケーション科」の開発を行っています。2016年度は、国立教育政策研究所教育課程特例校としての研究の第1期の2年目となるそうです。

 今回は、公開授業の様子をレポートします。6年2組の授業では、「桃小ピカピカプロジェクト」の中間報告会を行っていました。現在の「学校の課題」について考えて、学校をより良くするために、グループでどの学年に何を伝えるかを消え、伝えるものを制作しています。制作したものをみんなで見て、ふりかえりを行い、さらに作品を再構成していく、という授業でした。

 発表するグループが、ムービーを見せて、プレゼンテーションをします。司会をするグループがホワイトボードのところにいて、議論をリードして、教室全体で意見を集めていきます。
 下の写真で、教室のいちばんうしろに座って、全体を見守っているのが、担任の若松俊介先生です。じっと教室全体を見て、議論の進行は、司会をしているグループの子たちに任せていました。議論の途中で、若松先生が2つの案を比較して、「どっちがいいと思う?」と訊くと、司会をしていた児童たちが「それ、ずっと訊きたくて我慢してたのに!」と怒る場面がありました。若松先生がしたいと思っていた発問を、議論をリードする子どもたちも同じように持っていて、しかもそのタイミングを図っていた、というのは、担任の先生として心強いだろうな、と思いました。
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 議論が進むのと同時に、ホワイトボードに内容を板書していきます。議論のなかで若松先生が投げかけたのは、「“廊下を歩こう”と“走るな”は同じだろうか?」という問いでした。そこから、「“走ったら危ない”と言うのか、“走らず歩こう”と書くのか。これも同じではないはず」と議論が進み、ここで司会が「(この2つは、)何がどう違って、どっちがいいのか、どう思いますか?みなさん」と司会の子がクラスに問いかけをしていました。
 こうした表現にこだわり、伝えたい学年によって、どう言ったほうがいいのか、ととことん話し合う経験をじっくりさせることは、既存の教科の中ではなかなか難しいと思います。こうした議論を、時間をかけて行えるのは、メディア・コミュニケーション科の良さではないかな、と思いました。
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 公開授業が終わった後で、東北大学大学院の堀田龍也先生が、この議論をリードしていた子どもたちについて講演のなかで、この「6年生の黒板をまとめていた子たちは、学習リーダーになりえる子たち。情報の整理の上手な子はクラスに何人かいるかもしれませんが、議論が進む中でリアルタイムでできる子はすごい」と言及していました。そして、「こうした学習リーダーになれる子を、学級経営の中に位置づけることで、情報整理のやり方を伝播させることにもつながる」とおっしゃっていました。

 No.3に続きます。
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(為田)