3月29日にKnewton Day Tokyo 2017 – Adaptive Learning Summit-(以下、「アダプティブ・ラーニング・サミット」と表記)に参加してきました。
基調講演のあとは、佐藤先生とKnewton Inc.のPresidentライアン・プリチャード氏が並んで登壇し、Q&Aセッション「徹底解剖:Knewtonのここが知りたい!」が始まりました。
佐藤先生が質問をし、プリチャード氏が答えていく形式でセッションは進んでいきました。
Q:
学習モデルにおいて、アダプティブ・ラーニング(Adaptive Learning)やパーソナライズド・ラーニング(Personalized Learning)、このあたりの違いとは何でしょうか?
A:
現在、アダプティブ・ラーニングという言葉は、いろいろなものを指しています。ここでは、Knewtonの定義するアダプティブ・ラーニングについて話をします。Knewtonとしては、アダプティブ・ラーニングとは、“継続的にデータをもとに、パーソナライズドされた学習を提供し、それによって成功へとつなげていく”ことです。
「学習を越えた学び」という伊藤穰一さんの言葉が(佐藤先生から)紹介されたが、生徒がどれくらい学習しているかをしっかりおさえることが、21世紀の学びには大事になる。生徒の方が、Knewtonに学習のログを提供していくことになる。さまざまなAIや機械学習を通じて、生徒の状況、使っているコンテンツの状況などを分析して、最適な学習を特定する。例えば、どういった教材を使うことで、学習目標を達成できるかを継続的に提供している。
生徒や先生方にも、いろいろな観点をもってKnewtonのモデルは作られている。このなかに、Peasonalized、Differentiated、Individualizedな学習も含まれていると考えてもいい。
Knewtonはアセスメントとデータ分析の両方を持っている数少ない会社だと言えるだろう。
学びの成果をログとしてとり、それをどう活用していくかということを考えていくと、アセスメントをすること、データを分析すること、というのは絶対に外せないことであり、Knewtonのアメリカでの実践、日本での実践において、個人的に最も興味があるところでもあります。
続いて、アダプティブ・ラーニングの成果についての質問です。
Q:
Knewtonのアダプティブ・ラーニング、成果としてあがっているものはあるのですか?
A:
2010年、2011年にアリゾナ州立大学で、アダプティブ・ラーニングを活用した数学講座を実施しました。その結果は、途中脱落率が56%減少、コース修了率が17%上昇、45%の学生が通常よりも4週早く修了することができました。
学習が始まったときには自信がない学生もいたかもしれないが、アダプティブ・ラーニングを実施することで、効果が上がったといえると思う。
出題される問題によって、学生のモチベーションも変わると思うので、当然出題をアダプティブにしていることが効果に繋がっていると思います。また、同様に習熟度の向上などについても関連しているのではないかと思います。そうしたデータも、今後出てくると学校の先生方や教材開発関係者はうれしいのではないかと思いました。
次の質問は、プラットフォーマーとしてのKnewtonのあり方についての質問でした。
Q:
Knewtonはプラットフォーマーです。そして、コンテンツの部分は、コンテンツ・プロバイダーと連携をしています。コンテンツを持たないことは、Knewtonにとって有利でしょうか?
A:
データドリブンのスタイルで、学習をパーソナライズ化することは、Knewtonのプラットフォーマーとしての強みです。コンテンツ・プロバイダーは、素晴らしいコンテンツを作るところに特化することができ、両者に得があります。
Knewtonはデータの数を増やすだけではなく、導入したコンテンツがどのように使われたかという分析を、コンテンツ・プロバイダーへ提供していきます。コンテンツの意図と実際の学習効果にギャップがあればそれを埋めていければいい、と思います。
コンテンツ・インサイトを提供できるというのは、非常にいいことだと思います。
続いての質問は、将来についての話、ビジョンの話でした。
Q:
今後の話ですが、Knewtonはビジネス面、サービス面において、どういったビジョンを持っていますか?
A:
ビジネス面としては、アメリカではコンテンツ・プロバイダーとの協業を進め、Knewtonがコンテンツを保有するスタイルでのサービスを開始しています。
サービス面では、Knewtonのパートナーは世界30カ国以上に広がっています。教育はグローバルな問題です。さまざまなパートナーとプロジェクトを行っており、それぞれの国で、どういったプラットフォームであるべきか、ということを考えています。学習は国や地域の文化や実状に合ったものでなければならないと思います。
最後に、基調講演の中でも出てきた教育イノベーターについてのメッセージを訊きました。
Q:
日本の教育シーンは、デジタル化が遅いと言われています。教育イノベーターへのコメント、アドバイスをお願いします。
A:
それは、日本だけの問題ではありません。デジタル化を加速させるためには、「緊急の問題である」ということを理解し、「対応しなければならない」と思う人が出なければなりません。また、「テクノロジーがそれを解決できるのだ」ということを印象づけ、実証して示していくことが必要になります。
最後に佐藤先生は、Knewtonをはじめとするさまざまな教育サービスについて、「覚えたことを忘れないこと」なのか「難しい問題が解けるようになった」のか、どこに評価のパラメーターを設定するかが大事ではないか、とコメントされていました。アダプティブ・ラーニングが万能薬なわけではなく、どのシーンで効果があるのか、市場へ、先生へ、学習者へ、明確な意図を持つことが大事だと佐藤先生は伝えて、Q&Aセッションは終了しました。
アダプティブ・ラーニングのプラットフォーマーとコンテンツ・プロバイダーの話、コンテンツ・インサイトの話など、非常に可能性を感じることのできるセッションでした。
No.4に続きます。
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(為田)