2018年6月4日に御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された、私塾界リーダーズフォーラム2018に参加してきました。参加者は450人を超え、会場は満席となりました。小学校で教科化した英語とICTというテーマへの関心の高さがうかがえます。
第1部のトークセッションのテーマは「未来の教室実現に向けたEdTechの活用法」でした。登壇されたのは、経済産業省教育産業室 室長の浅野大介 氏、株式会社COMPASS CEOの神野元基 氏、株式会社メイツ 代表の遠藤尚範 氏の3人でした。
現地にてTwitterで発信していた内容を中心に、補足をしたレポートを公開いたします。聞き間違いや勘違いなどにつきましては、為田の責任です。イベントレポートは、月刊私塾界にて、プロの手で報告レポートが出ると思いますので、後日、そちらもご参照いただければと思います。
最初に、経済産業省の浅野さんから、「未来の教室」についてのプレゼンテーションがありました。
経済産業省に教育産業室を作り、浅野さんが初代室長に。今日集まっているのは私塾の人たち。もともと、学習塾は経済産業省のサービス政策課の所轄だった。だが、いまはそんな小さいレベルではないだろう、と。公教育も民間教育もない世界をどう作るか。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
公教育と民間教育とEdTechのトライアングル。近代市民社会に対して、「市民」と「産業人材」を輩出することが、公教育の目的。公教育が上に出ているトライアングルではなくなってくるだろうと思っている。第4次産業革命時代の新しい「市民」と「産業人材」をどう輩出するか。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
僕らはシステムチェンジをしなくてはいけない。今日と同じ明日が来ないのは、間違いない。第4次産業革命によって、「イノベーションの作法」が変化していく。膨大なデータを前にして、AIの力を使って、問題の本質を見極めて、多様な知識や技術を編集して解決策を作り出す。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
必要なのは、創造的な課題発見・解決力(チェンジメーカーの資質)。日本だけではない、世界の教育潮流も同じ。3つのポイントがある。1 学習の個別化、2 プロジェクトを通じた文理横断的な知識理解と活用、3 上記を効果的・効率的にするテクノロジーの活用。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「学ぶ」「作る」「働く」「生きる」が一体になる学びになっていくだろう。今の教育は、ディシプリンが分かれていて、それぞれに時間をかけ過ぎている。だから、リアルな社会課題への挑戦と解決をメインにおいて、そこから逆引きで「理科も数学も必要だね」となる。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「未来の教室」のワークショップをやってきた。中学生、高校生、大学生にも参加してもらった。「なんで勉強するのかがわからなかった」と言う子どもたち。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
課題に向き合うことができれば、その後に、ディシプリンは必要になる(知識は必要になる)。このディシプリンを習得するのは圧倒的に効率的にする。そのために、EdTechを使う。STEAMと教科を行ったり来たりする。(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
浅野さんの問題意識として印象深かったのは、「何のために勉強するのかわからない状態をやめよう」ということ。問題を解決するプロジェクトに取り組むことで、必要な知識などがわかり、それを学校で学べばいい。学ぶべきことは明確になっているので、それを生産性高く≒効率的に学ぶようにしよう、ということでした。
続いて、神野さんのプレゼンテーションです。浅野さんの提示した学びの生産性について、「モチベーションの効率化」と「コンテンツの効率化」があると思う、と話をされました。
学校教育は100年くらい変わっていない。でも、社会は100年で働き方などどんどん変わっている。2045年のシンギュラリティが来て、圧倒的な変化のために、教育を変えるべきだと思っている。(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
学びの生産性。モチベーションの効率化と、コンテンツの効率化。今やりたいことって何?というのをアダプティブに手渡すのがモチベーションの効率化。Qubenaが取り組んでいるのは、コンテンツの効率化。(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
Qubenaでは、先生が学習状況をトラッキングして可視化できるようになる。先生が学習者に寄り添うことができる。(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
Qubenaのエンジンのデモ。それぞれの学年のなかに、学年体系図がある。領域をデータセットとして持っている。「数量を文字で表す」など。不正解すると、「文字式の表し方」へ戻る。間違い方から、その学習者が何をわかっていないのかをあぶり出すということをしている。(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
これを、先生や保護者は常に見るようにすべきだと思う。教育とは、「できないことをできるようにする」こと。でも、できないことをできるようになっていることは誰も評価していない。ここを可視化するのがCOMPASS MAPの意義だと思う。(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
続いて、遠藤さんのプレゼンテーションです。遠藤さんは、進学塾メイツを運営をされていますので、会場に多くいらっしゃる学習塾の経営者・社員の方に近い目線でのプレゼンテーションであったように思います。そして、塾に通っている子どもたちにとって、「現実的な未来の教室」を見る必要がある、と話をされました。
進学塾メイツでは、生徒・講師が1人1台タブレットをもって指導している。学習塾ではあるが、エンジニアもいる企業。教育機関向け「英検」アプリも開発。講師1人×生徒多人数で英検対策をしている。1人ずつイヤホンをもっている。紙教材も併用、ノートもMUST。(遠藤さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
塾は学校に対するサポートをしている。学校がどうなるか、文部科学省がどうなるかしか考えられないというのもある。メイツがiPadを入れてよかったのは、文部科学省の英語4技能も、主体的な学びも、iPadで実現することができる。(遠藤さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
学習塾として考えるのは、現実的な「未来の教室」。私が考える未来の教室は、半歩先の、目先のことを考えることになる。(遠藤さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
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遠藤さんが提示した、「現実的な未来の教室」という話から、公教育の問題、民間教育(私塾である学習塾)の話、経済産業省と文部科学省の思考の違いなどについて話が展開していきました。非常に興味深く聴きました。
「経産省としては、民間教育でエッジを立てていこうと思っている。独自性を発揮する余地が、学校よりはよほどあると思っている。どこから教育変わるか、と言えば、民間教育から変わるしかないだろうと思っている。民間では、思い切って尖ったことをやってほしい。」(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「日本の教育への捉え方はダブルスタンダードになっている。ひとつは受験。もうひとつは、本当に学歴って大事なの?という思い。この思いは、年々強くなってきているように思う。STEM教育を、学習塾をしながらFCに加盟してやれる。ニーズを捉えていると思う。」(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「大学入試を変えて、教育全体を変えよう、と文部科学省は動いているように思える。この枠からはみ出るとギャンブルになる。この枠の中でやっていこうと思っている。」(遠藤さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「枠を超えてみませんか?公共政策はそのとおりにしなければならないというものではない。産業や社会の未来を、経産省としては見ているつもりなので、このままではまずいぞ、と思っている。破壊的な思考は、全部塾で習っているように思う。僕は変な塾しか行っていないんだけどw」(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「枠を超える、というのは手段であれば問題ないと思う。ただ、ゴールが枠を超えると、生徒も戸惑うし、学校と塾とで公教育だとも思っている。そうすると、そうした状況にはしたくない」(遠藤さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「文科省の枠の中でビジネスをするというのはわかるような気がする。が、未来の教室については、文部科学省の枠を全部捨て去ろうという話ではなく、次に来るものはこういうものだ、というnotice だというふうにも思う。保護者の方々も未来の教育を求めているようにも思う。」(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「なんでもいいから変化を起こせる人になりましょう、というのが、チェンジメーカーになる、ということ。ごっこじゃないプロジェクト。自分の周りの課題を解決しよう、というもの。」(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「どのくらいの学年からを想定していますか?」(遠藤さん)「幼稚園から。プレイフルラーニングですよね。日常の遊びの中でも、課題を解決するということもある。」(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「全幼稚園生に対して、ということですか?そうすると、ゆとり教育と何が違うんですか?」(遠藤さん)「ゆとり教育そのものです。ゆとり教育、ちゃんとやろうぜ、っていうことですね」(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「僕は、自己肯定感を持たせることじゃないかな、と思っています。たしかにPISAの結果はいいが、日本人に圧倒的に足りていないのは自己肯定感。これも直近の課題で、それを与えるための教育が必要。小さい頃からどう育むか。どうファシリテーションするか、という再設計。」(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「それはアクティブラーニングですよね?」(遠藤さん)「僕らが見ている方向性は、文科省とはまったく変わらない。ただ、それを実現することができるかということは、まったく別の問題。それを実現するための、学年、教科、時間数などこのままでいいのか、ということもある」(浅野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「文科省は、いまの先生方の雇用を維持しながら、いまの課題にどう取り組むかを考えている。積み上げの思考。経産省は、これからの社会から逆算して未来の教室を考えている。これは逆算の思考。両方が必要。」(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
「公教育で培ってきた教え方などにリスペクトを持ちつつ、全員で本気で考え、本気で実行する機会がここ5年で必要なのではないかと思います。」(神野さん) #slf2018
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年6月4日
積み上げ思考の文部科学省、逆算思考の経済産業省。みんなで考えて、みんなで実行しないと、本当にいろいろ間に合わないよな、と思わされるセッションでした。浅野さんは、このセッションの後に「未来の教室」とEdTech研究会がありました。こちらから出てくる成果も非常に楽しみですが、教育委員会や学校をサポートする立場で、サポートしていきたいと思いました。
No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)