ナンシー・アトウェル『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』を読んでいます。ナンシー・アトウェルは、リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップを核とした国語の授業を展開している先生です。
この本を読もうと思った理由は大きく分けて2つです。ひとつには、SNS上で繋がりのある多くの先生方が読んでいるのを見たからです。リスペクトする先生方の目利きであれば、これは読んでみなければ、と思いました。
askoma.info
もうひとつの理由は、「ライティング・ワークショップ」での「書くこと」が、教育ICTと非常に相性の良い活動なのではないかと思っているからです。僕自身、大学に入ってPCとインターネットを使うようになり、タッチタイピングを大学1年生でマスターしてからは、書き方は大きく変わったように思います(その前段階としての考え方もそれに伴い変わったと思います)。
学校教育で、みっちりと「書くこと」を実施している学校は残念ながら日本ではまだ多くないですが、教育の情報化を背景として、「書く作業」はICTでサポートしてもっともっと児童生徒にしてもらいたいと思っています。そのためのヒントがあるのではないか、と思いました。
じっくりひとり読書会ということで、ハッシュタグ「#イン・ザ・ミドル中」を使ってTwitterでメモを書いています。こちらをブログには章ごとにまとめていこうと思います。
まずは第1章「教えることを学ぶ」から。
いよいよ第1章「教えることを学ぶ」です。グレンダ・ビセックスの観察から生まれた、アトウェルの座右の銘は「私たちが教える論理が、子どもたちが学ぶ論理と同じとは限らない」(p.17) この座右の銘は教室で自分の書いたカリキュラムを子どもたちにやってもらうときに常に思う。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月7日
アトウェルは、ディキシー・ゴスワミ先生に「自分がどうやって書いているのかを言語化し、そこでの発見を7・8年生や9年生以上への書く指導に活かせるように考えなさい」と指導される。(p.25)#イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月7日
結果、「自分が書き手としていかに多くの選択をしているかがわかったのに、生徒には選択させていないことに気づいた。」(p.25)→この部分、ICTも一部含まれると思う。ワープロソフトを使って書いているのに、子どもたちには手書きしか認めない、というのもこれに近いと思う。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
この、「自分が書き手としていかに多くの選択をしているか」がわかったのに、生徒には選択をさせていない、というのはおもしろいと思いました。学校の先生たちも文章をデジタルで考えたり、いろいろなものをネットで調べたりしながら書いているのではないでしょうか。だったら、教室で子どもたちが何か書くときに同じことをできるようにしてあげたいな、と思いました。
そのために、タッチタイピングが必要なのであればすべきだし、ワープロソフトの簡単な使い方も教えるべきでしょう。どちらも、最初は大変ですが、そのあとは「書きたい!」というモチベーションで引っ張っていけるのではないでしょうか。
また、最近は音声入力もだいぶできるようになっているので、「手で文字を書くのが嫌い」「タイピングが苦手」という子にもいろいろと対応できるようになりつつあります。「文章を書くのが嫌い」と「書けない」というのは違う場合もあると思うのです。そうした問題を乗り越えられないかな、と思います。
アトウェルのリーディング・ワークショップのスタート=「生徒は自分で何を書くかを選び、自分のペースで作品に取り組み、様々な読者に作品を読んでもらうことができ、作品を書いている間にクラスメイトや教師からのフィードバックもある。」(p.28)→生徒たちの「やってみる!」 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
クラスメイトや教師からのフィードバックを得られるようにするのには、Googleドキュメントでのピア・レビューなど、いろいろとICTでサポートでいることが多そうに思う。フィードバックをするタイミングとかを、どう設定するか、というのはあるかも知れないけれど。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
あと、まったく書き始められない生徒にとっても、「あ、こういうのを書けばいいのかな」というふうにクラスメイトの作品を途中で見られるのはいいと思う。書くことがわからなくてぼーっと時間が過ぎるのを待つよりずっといい。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
このあたりの記述も、クラウドを使うことでより効果的になるように思います。
「クラスの中によく書ける生徒がポツポツいる、という状況が一変しました。全員の生徒がクラスメイトや私とのカンファランスで助言を求め、集中して長い時間、創作に取り組むことができるようになったのです。」(p.30) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
自分で書く題材を選ぶ目新しさは消える。「1ヶ月もたつと、何を書いたらいいのか指示してほしい、何でもいい、言われた通りに書くから、という生徒が出てきました。」(p.30)→でも、ここで戻さない。ここが大変そうだ。信じて待つこと。きっとすごい大変…。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
「ライティング・ワークショップは、実際に書いている真っ最中の生徒たちを個々に観察し、サポートし、しかも教室内で私も学ぶことを可能にする教え方です。」…「生徒たちは毎日書くことになっていますが、それはお仕着せのドリルではありません。」(p.31) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
アトウェルのライティング・ワークショップにおいては、「譲り渡す=hand over」という言葉が使われています。何を書いてもいい、どう書いてもいい、ではなく、そこに教師が柔軟性と目的をもって関わることが大切なのです。クラウドでの書く作業+教室でのカンファランスでどんな活動になるのかを考えていきたいです。
ジェローム・ブルーナーは、「大人が介入し、やってみせ、徐々に援助を減らしていくことを「譲り渡す」段階」と言う。この関わりの中に、「柔軟性と目的があることを感じる」というアトウェル。(p.35)→柔軟性と目的がある、いい表現だ。「譲り渡す」は英語では何なのだろう…? #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
ジェローム・ブルーナーについて、東大の山内先生のゼミブログで紹介されていました。こちらも参照: https://t.co/sMeC4ORvRb #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
ライティング・ワークショップで「譲り渡す」とはどういうことか。「私の書くことについての知識を教室に持ち込むこと」。良い文章について自分が学んだこと、今まで読んできた他の書き手の作品、子どもたちの発達段階についての知識、生徒各人の課題、強み、興味など。(p.36) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
「譲り渡しは、ライティング・ワークショップにおける現在の私のあり方の基本姿勢を表した言葉です。ワークショップでの私は、経験豊かな書き手・読み手です。どうすればいいかを生徒に示し、役立つ助言を与え、自分がしっかり理解した上で生徒に伝えています。」(p.36) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
「ライティング・ワークショップの両輪は、教師の知識と、生徒の自己決定です。私は、自分が教える書き手たちの選択、意図、必要を尊重しながら、同時に彼らに対応し、導き、成長する方法を示しています。日々探究しているのは、このちょうどよいバランスです。」(p.37) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
アトウェルは、ライティング・ワークショップだけでなく、リーディング・ワークショップも行っています。リーディングによって語彙や表現などを学ぶし、知識や興味関心を広げていくこともできます。この2つがどう関わっているか、というのも注目して読み進めたいです。
リーディング・ワークショップ=「生徒たちは、自分で読む本を選び、教室で毎日20分、自宅でも週に7日、毎日最低30分間読みます。大好きな本を読むということが最も大切な宿題であり、教室でも優先的に行われます。」(p.48) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
「みんなに共通しているのは、「リーディング・ゾーン」と呼ぶ「本の世界に浸っている状態」に入るとはどういうことかを知っていること、そしてリーディング・ゾーンに入ることが好きだ、ということです。」(p.48) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
「ただ楽しいだけの読書とリーディング・ワークショップを分けているのは、私から生徒への「譲り渡し」だと言えるでしょう。…読むのがとまらないほど魅力的な本と大量の読書経験が核にあるのですが、それが核になるかどうかは、私の授業の組み立て次第だからです。」(p.48) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
「リーディング・ワークショップの教師が知っておくべき大切な三つの要素が、本、教えている年代の読み手の特徴、そして一人ひとりの個別の生徒たちなのです。」(p.48) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月8日
アトウェルが設立した学校「教師と生徒のための学習センター(Center for Teaching and Learning)」では、生徒だけでなく教師も学べるそうです。この学校では、すべての学年でライティング/リーディング・ワークショップで国語を教えているそうです。
http://c-t-l.org/c-t-l.org
【追記】あすこま先生による、学校見学記をご紹介いただきましたので、リンクします。
askoma.info
この後、ワークショップについての解説を読めるので、さらに読み進めていきます。No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)