教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

筑波大学附属駒場高校 授業レポート No.3(2018年10月11日)

 2018年10月11日に、筑波大学附属駒場高校の澤田英輔先生が教える高校2年生の現代文の授業を見学させていただきました。澤田先生は、授業の中でライティング・ワークショップを実践されています(ライティング・ワークショップについては、澤田先生が訳された『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』を参照してください)。

ライティング・ワークショップで身につけてほしいこと

 授業終了後に、澤田先生と授業についてふりかえる時間をいただきました。今回は作品集に収録する作品を書いていますが、こうした本格的なライティングを年に1回か2回、行うそうです。
 「このライティング・ワークショプで生徒たちにいちばん身につけてほしいことは何ですか?どんな生徒になってほしいですか?」と澤田先生に質問すると、「自分なりの書くプロセスを身につけてほしい。あと、書くプロセスについて理解を深めてほしい。」との答えでした。澤田先生は、「中等教育の国語でやるべきは、自分なりのプロセスをもつこと。アイデアを考える、メモを書く、構想を練る、そのときにどんな道具を使って…というのを経験させること」と言います。デジタルもアナログもどちらもできるようになったうえで、どちらの方法を使うかを選べるといいと思いました。

 その例として、書き上げた文章の校正作業のときの話が出ました。澤田先生は、印刷して確認してほしいと思っているそうですが、生徒たちはディスプレイ上で読み直していることが多いそうです。いま授業をしている図書館にはプリンタがないので、すぐに印刷することができない状態ではあるので、面倒でディスプレイで読み直してしまう、ということになっているそうですが、できればデジタルとアナログと両方を試してみてほしいと思う、とおっしゃっていました。

ライティングの基礎になる、リーディングについて

 ライティングをする力の基礎になるのは、リーディングだと思います。『イン・ザ・ミドル』のなかでも、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップは車の両輪として書かれています。

 澤田先生は、「学校の授業においては、リーディング・ワークショップだけでなく、精読もあった方がいい。共通の作品をみんなで読んでいくという体験は必要だと思っている」とおっしゃっていました。語彙は、各自の読書で増やすことができますが、読みの形式や読み方の視点というのは学ばないとわからないので、学ぶ機会はあった方がいいと思います。授業のなかの精読で、共通の作品を読んで、そこに教員からのレクチャーが入ることで、自分の読みが妥当なのかどうかを吟味する機会になると思います。

図書館の環境

 今回、澤田先生の授業が行われた筑波大学附属駒場高校の図書館ですが、環境がとてもよくて驚きました。図書の棚が多いですし、読むことを楽しむためのスペースも多く用意されています。
 また、教員お薦め図書が教科・教員別に並んでいるのもとてもいいと思いました。ライティングの基礎になるリーディングを増やす環境があるのが素晴らしいと思いました。

 先生方が開発した筑駒検索システムのQRコードが貼ってあり、手持ちのスマホで検索できるようになっています。筑駒図書館の本だけでなく、筑波大図書館、Ciniiなどの論文データベースのPDF、公共図書館なども一括で検索できるそうです(参考:「筑駒研究情報検索システム」の開発と評価 )。とてもシンプルですが、図書を生徒たちに近づけるひとつの道筋になっているのだろうと感じました。

(為田)