教育ICTリサーチ ブログ

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Studyplus for School Award 2018 レポート No.3(2018年11月14日)

 2018年11月14日に開催された、Studyplus for School Award 2018に参加しました。このイベントは、Studyplus for Schoolを活用している教育関係者を招いてのパネルディスカッションや、事例報告、表彰などを行うもので、2018年のテーマは、「Education After Internet〜教育の未来〜」でした。

 続いてステージでは「EdTech活用塾によるパネルディスカッション」が行われました。登壇されたのは、学研スタディ小川武志 氏、ユニバースクール 湯浅浩章 氏、国大Qゼミ 宮田大輔 氏、進学塾MUGEN 小牧千穂 氏の4人です。

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 以下、やりとりのなかで興味深かった部分のメモを貼っていきます。最初は、それぞれの方のEdTech導入の背景、課題、活用方法についての紹介です。さまざまなEdTechの名前が登場しています。そして、共通しているのは、「導入しただけではダメ」ということです。

  • 自分も講師として、かつて黒板を使って授業をやっていた。ノウハウも身につけて、そこそこやれていたが、それが「依存させてしまっている」ことに気づいた。それで、8年くらい前にウイングネットを導入した。映像授業の走り。ライブを一切やめて、映像一本にしたのが5年くらい前。いまは一人で2校舎(高校生だけを対象)を運営している。EdTechのツールがなければ回らない状態になっている。導入しただけでは何も起こらない。映像授業はあくまで教材。テキストと同じ。塾の方でパックにして提案してあげないと使えないもの。映像授業はオンデマンドで何でもできる。生徒と話してニーズに合わせて組み立てられる。が、生徒と話しても、ニーズに合わせて組めない。生徒は大学受験についてのノウハウがないので、相談しても自分で組めない。こちらで型を作ってあげるような形にしている。(小川さん)
  • 小中学校向けの塾をやっていたが、卒業生のために高等部を作った。EdTechを入れたきっかけは、高等部を立ち上げた段階で、高校生にすべての科目を教えられる先生がいなかった=人手不足。高校生は忙しくて、効率的にやらないと勉強できないなと思った。それで、映像授業のベリタス・アカデミーを入れた。目指したのは効率性。映像授業を見せっぱなしにしていた。映像授業があればなんとかなるかな、と思っていた。1年目は多くの退塾者が出た。これはコンテンツ(映像授業)のせいではなく、塾としてのコミュニケーション不足だという反省。それから見せっぱなしをやめて、コミュニケーションを重視し、効率的に学ばせることを目指した。今年から、大学受験だけのユニバーハイスクールを立ち上げた。さまざまなEdTechを導入している。講義型の授業をベリタス・アカデミー。持ち歩く辞書として学びエイドを使っている。調べごとがあれば学びエイドで調べる。EdTechを導入するときは、自分が生徒になったつもりでアプリをいじりまくる。自分たちが楽しい、ワクワクする、これはすごい、というものを取り入れている。 (湯浅さん)
  • 小学生、中学生の学習塾をやっている。高校生を預かるときに、大学受験コースとして代ゼミサテラインを導入していた。最初は、近所で受けられない授業を提供する、という形だった。時代が変わって、授業だけでは生徒は集まらなくなりつつある。集団授業をしているわけではないので、講師を何人も常駐させるということもできない。まず、学生チューターをどうやって活性化させていくかに取り組んだ。学生が校舎の運営、生徒対応をできるように、マニュアル整備、研修整備に取り組んだ。映像授業を商品として、そのうえで生徒をどう面倒見ているかを体現するかが重要。 (宮田さん)
  • EdTechだから導入した、というわけではない。子どもたちがいかに主体的に・能動的に自分で考えて行動するようになるか、と考えたときに、そのなかにEdTechが入っていた、ということ。紙媒体でもタブレットでも黒板でも、子どもたちが自分で勉強したいと思うものだったら何でもよかった。あと、「教えるプロ」「子どもたちが上達するプロ」というところで、EdTechは優れている。atama+のように、「あなたはここが苦手だから、ここを勉強しなさい」という出題の方法を、現在の価格帯では実現できない。主体的に能動的に学ぶというところを、いかに実現するか。機械を使ってやらせておけばいい、というのではだめ。一人でやっているよりも、子どもたちの競争したい、チーム感をもちたい、というのを先生がどうサポートするか。 (小牧さん)

 続いて、Studyplus導入の背景、課題、活用方法について紹介してくれました。

  • 管理している2校舎では、すべてがStudyplusの上に成り立っている。社員1人で2校舎を運営している。教室長が全部を把握するのが紙ベースでは難しいが、Studyplus for schoolで情報共有できるのがいい。自立というテーマでも、生徒たちが自立するのはもちろんだが、そのためにはスタッフも自立しなくてはならない。スタッフはほとんど学生。みんなStudyplusを使って、自分たちで考えて自分で組み立てられる。Studyplusはプラットフォームになっている状態。 (小川さん)
  • 生徒向けには「管理」という言葉は使っていない。「見える化」。子どもたちが1週間でどれくらい勉強しているのかなど、手に取るようにわかる。記録を見て、「なにかあった?」と訊くこともできる。課題としては、最初は「記録するのがめんどくさい」ということだった。ここは「システムだから」としてやってもらった。1ヶ月頑張ると慣れてくる。慣れたら習慣化するので大丈夫。課題としては最初が大変。 (湯浅さん)
  • 横浜で教室を展開。強豪が多い立地。ただ「代ゼミの授業」というのでは厳しく、差別優位性を持たなければならず、Studyplusを導入した。「こういう学習管理ツールがありますよ、こういうふうに学習を管理していますよ」と見える化して説明できるのは良かったと思う。自立学習は、自立した学習者を育てるのは大事だが、保護者としては「勉強させたい」。こうやって勉強しているかどうかわかりますよ、というのがわかるのは大きいと思う。課題としては、記録をめんどくさがる。勉強していない生徒ほど記録しない。どうして記録してほしいのかを説明して、納得してもらわなくてはならない。ツールとしていいものであっても、使いこなせないというのも出てきているかも。 (宮田さん)
  • Studyplusは便利。スマホでいつでも生徒の状況がわかる。去年の10月に高校生の専門校舎を作ろうとしたときに、高校生が忙しいということが問題としてあった。「主体的に」という方針があったので、子どもたちが自分で自分のことを見つめられるようになるためのツールとしてStudyplusが必要だと思った。かつ、それが先生と共有できて、先生がそれに気づくことができるのが大事。生徒がした8分間の勉強を、「勉強してないじゃん」と言うのは簡単だが、その8分間が彼にとってどういう意味があるのかをわかるのは、先生だけ。そこに反応した先生の言葉から、彼は変わり始めた事例もある。 (小牧さん)

 「Studyplusは、学習管理ツールではなく、コミュニケーションツールである。今日、英語を○分勉強したよ、と先生には言いに来ない。生徒とコミュニケーションをすることのきっかけにStudyplusはなり得る。厳密に記録した内容にこだわるのではなく、コミュニケーションの基本にしてほしい」と宮坂さんはまとめていました。(宮坂さん)

 最後に、課題として出ていた、記録しない子への対策についてのディスカッションをしました。

  • 塾を居場所にしたい。だから、チュータリングのなかで、ひたすら褒めている。やったことを認めてあげる。同じことをやるにしても、いい気分で前向きにするほうが成果が出ると思う。「少しでもいいから勉強して、その結果を記録してよ」と伝える。チュータリングで、Studyplus for schoolをあえて開いて、生徒と一緒に確認している。(小川さん)
  • 記録しない子には、高等部の責任者が毎日メッセージを送っている。ちょっとした問いかけなどからコミュニケーションをとっている。コミュニケーションをとっていくと、必然的にみんな記録するようになっていき、継続できるようになってくる。(湯浅さん)
  • 記録させるというところは徹底していて、高校1年生・2年生は忙しくてできていないところもある。勉強していないところに対して、「なんでしていないのか」と言っても仕方ない。勉強していないものに対して、記録だけはしなさい、というのはできる。勉強していないことはわかるけれど、実際に「この1週間、どれくらい勉強していないか」ということを自覚させることができるし、それが大事。記録させることによって、生徒が自覚するようになる。それをやれば、生徒から「すみません、勉強してないです」と自分から言ってくるようになる。「やってないのはしかたない、やったぶんは記録して」と言っている。 (宮田さん)
  • 全員が、Studyplusに100%記録するようにさせることが目的ではない。記録を見て、先生はいろいろなことに気づくことができる。 (小牧さん)

 Studyplusの活用方法ということを離れて、自立学習、自己調整学習ができる環境を作るのに、先生はどう関われるか、ということを考えるヒントになるのではないでしょうか。また、自立学習、自己調整学習ができる環境を作るために、Studyplus for Schoolが有効に機能していると感じました。

 No.4に続きます。

(為田)