川島蓉子・糸井重里『すいません、ほぼ日の経営。』を読みました。教育ICTをテーマとしている、このブログでどうして経営の本?というふうな思いもあるかも知れません。その理由は、糸井重里さんたちが作り上げた、ほぼ日という会社の働き方を、「ICTを手にしてどんな働き方/生き方が可能になるのか」ということの一つの例として読めると思ったからです。Twitterで書いた読書メモをまとめたいと思います。
「あとがきにかえて」で、糸井さんも書いています。
「どうやって活躍するかで競争しているよりも、活躍したいような「場」をつくったら伸び伸びといろんなことができるではないか。そんなことを考えはじめて、実行に移しはじめたのです。」(p.277)→これはインターネットという「無限につながる網」が使える時代があってのこと。 #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
インターネットを手にしたからこそ、できるようになった場作り。どのような場ができるのかを知っておくことが、ICTをどのようにツールとして使っていく学校環境/教室環境を作るときの助けになるのではないのかと思いました。
ほぼ日の事業の進み方
ほぼ日刊イトイ新聞で毎日更新されるたくさんのコンテンツが僕は大好きです。ほぼ日手帳も毎年使っています。そうしたプロジェクトがどのようにできあがっているのか、という話を読むことができます。
「うち(ほぼ日)のプロジェクトは、誰かが「これをやりたい」と思ったときに、もう発生しています。そして隣の席の人に「こういうの、どう?」と聞いて、「私は好きです」となったら、さらに進んでいきます。」(p.15)→これ、すごくいいな。隣の人でなく、うちならSlackで、だな。 #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
「言い出した人がリーダーのような役割になります。メンバーの役割分担は最初からはっきりと決まっていなくて、進めながらだんだん決まっていきます。「そこは私がやっておきます」「お願いします」とチームが動いていく」(p.21) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
こうした自律的なチームのコミュニケーションを支えるのに、ICTは使えるだろうな、と思います。時間や場所に囚われなくてよくなるので、自律的に進める人、「こういうの、どう?」と他者にアイデアを伝えられる人は、どんどん活躍の場を広げていく。それをサポートする人も同様です。
こうした体験を、学校という場で作るにはどのようにすればいいだろうか、ということを考えます。Google Classroomのようなものを使っても可能です。Slack+Trelloのような形も可能です。schoolTaktのいいねの付け合いを可視化する機能も使えるかもしれません。
ほぼ日の働き方
国として取り組んでいる、働き方改革ですが、ほぼ日でも進められているそうです。
ほぼ日の働き方改革(2018年春~):労働時間は1日7時間。「毎週金曜日を「インディペンデントデー」として、ひとりで考えたり、自由に使ったりする時間にしました」(p.89) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
「だから金曜日には打ち合わせの予定は入れません。みんながどこにいるかも把握しない。会社に来なくたっていい。」(p.96) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
「企業の風土を決めるのは、「なにがかっこいいか」ということです。(略)うちはなんだろうと考えてみると、やっぱり「人がうらやましがるようないい考えを出して、実行する」ことがかっこいい」(p.97-98)→このイメージをメンバーがみんな共有できれば強いな。考えよう。 #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
「多くの会社では、「働き方改革」を実践するために「集中力を高めよ」とかけ声がかかる。ほぼ日の考え方は違う。質のいいアイデアを生み出すには「もっといいアイデアがあるのでは」と問い続けることが大切であり、それは決して集中力だけが生み出すものではない」(p.138) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
この、“「もっといいアイデアがあるのでは」と問い続けること”というのも、僕としては、学校の授業で体験させてあげて、姿勢として育んで卒業させたいことのひとつです。
ほぼ日の行動指針と「クリエイティビティの三つの輪」
ほぼ日の行動指針は「やさしく つよく おもしろく」だそうです。やさしくは「相互に助け合うということ、自分や他人を「生きる」「生かす」ということだそうです。そして、つよくは「企画やアイデアやコンテンツを、会社として、組織として「実現」「実行」できること、現実に成り立たせること」です。
ほぼ日の行動指針「やさしく つよく おもしろく」:「まず「やさしく」がおおもとの前提にあり、「やさしく」を実現する力が「つよく」です。その上に、新しい価値となる「おもしろく」をどれだけ生み出せるかが、ほぼ日の特徴です。」(p.143-145) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
そして、ほぼ日のコンテンツがどのように生まれるかのところでは、「クリエイティビティの三つの輪」が紹介されていました。
ほぼ日の「クリエイティビティの三つの輪」=動機 実行 集合:「コンテンツへの読者の反応から(集合)、消費者の普段の生活への洞察を引き出して自分たちの動機とすり合わせ(動機)、社内や、他の人と組んだりしながら、新しいコンテンツを生み出しています(実行)」(p.158-159) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
このくだりを読んでいて、学校に対して新しいカリキュラムやシステム、教材などを導入する時にもまったく同じ輪を考えることができるのではないだろうか、と思いました。
ほぼ日の組織
組織的な話も出ていました。インターネットの活用によって、組織の形は大きく変わりつつあると思っています。ヒエラルキー、上下関係ではない関係が増えてきていると思うし、いろいろな場に同時に所属できるようになってきていると思っています。
ほぼ日の組織図は、人の内臓にたとえた組織図もある(p.173)→検索してみたら、ほぼ日のコンテンツの中にあった。 https://t.co/jZXw6t8MX3 #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
「内臓は、それぞれの臓器がお互いに信号を出し合い、信号を受け取り合うことで全体が動いているそうです。ぼくは内臓のように、それぞれのチームがそれぞれ自律的に動いて関係し合う仕組みが、うちに合っていると思ったんです。」(p.173) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
組織のあり方とは、コミュニティのあり方とも言えると思います。こうしたコミュニティのあり方についても、一つの可能性として知っておくとおもしろいと思います。
「社長に求められるのは、社長本人が元気で楽しそうで、社員がメシを食えるように給料を支払うことです。給料が払えるかどうかが一番の問題で、社長が絶対にやらなければいけないのは、それでしょう。」(p.243) #すいません経営
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
「「じぶんのリーダーはじぶんです」とずっと言ってきました。つまり誰かのせいにするのではなく、じぶんが覚悟を決めて選択する。じぶんのリーダーとして、じぶんで判断するわけです。社員一人ひとりがそうなって、「あなたたちがいてよかった」と言われるチームに」なる。(p.251)
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月5日
#すいません経営
そのまま適用できるわけではないのですが、ICTの活用が一人1台で進んでいる学校では、こうしたコミュニティが一部できつつあるようにも思います。生徒として各教科の授業を受け、部活に属し、イベントごとの役割をし…というようなコミュニティを、それぞれ結びつけたりすることもできるようになると僕は思っています。それぞれの場面で、「じぶんのリーダーはじぶんです」と言えるようになってもらいたい、というのも、僕にとって、子どもたちに身につけてほしい考え方です。
まとめ
そのまま直接、学校や教育の分野に持ってこられるものばかりではないですが、いろいろな考え方のヒントになりそうな気がして、読書メモをまとめました。
糸井さんは、他にもインターネットに関する本を出していますので、そちらも合わせて読むとよいかと思います。