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武蔵野大学中学校 授業レポート No.1(2019年9月12日)

 2019年9月12日に武蔵野大学中学校を訪問し、中学1年生の数学の授業の様子を見学させていただきました。この授業は、経済産業省「未来の教室」実証事業に採択されたもので、Z会グループが学習サポーターを派遣し、学習を一人ひとりに最適化するAI先生「atama+」を活用した授業を実施しています。8月末に模擬授業などを行い、9月から授業としてスタートしたそうです。

 AIを活用した数学の授業では、生徒一人ひとりが自分の習熟度に適した単元を自分で学んでいきます。教室の中には「小数のかけ算・わり算」の練習問題に取り組んでいる生徒も、「1次方程式の利用」を学んでいる生徒もいます。自分で「いま、何を学ぶのか」を考えられるようになることも、先生方は望んでいるのだと感じました。
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 生徒たちがiPadで活用しているatama+では、「講義」と「演習」に取り組むことができます。ただ問題が自動出題・自動採点されるだけのデジタルドリルではなく、まるで教室で授業を受けているかのように、講義の動画を見ることができます。そのため、講義を聴くためのイヤホンをiPadに繋げている生徒も多くいました。講義の動画では、黒板に書かれて説明される内容が表示され、説明の声に合わせて画面上で線が引かれたり、数字が手書きで書かれたりします。動画になっていることで、何度も聴き直して理解を深めることもできますし、わかっているところは飛ばすこともできます。
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 講義の動画を見た後で、練習問題に取り組むと、講義の内容が理解できているかどうかの結果が表示されます。従来の数学の授業では、理解の確認はみんなで同じペースで行うことが多いと思いますが、ここをAIを活用することで個別最適化し、きちんと理解できている生徒には次に進んでもらい、理解が不十分な生徒にはもう一度動画を見てもらうこともできるようになります。
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 「講義」の後、「演習」へと生徒たちは進みます。演習では、講義の動画で学んだことを定着させるために、数多くの練習問題に取り組みます。iPadで出題された問題を、手元の紙のノートに解いて、画面に表示される回答選択欄から自分の回答をタップして回答します。手元のノートに問題に取り組んだプロセスが残っているので、不正解だったときにも、どこで間違えたのかを見直しやすいと思います。
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 こうして生徒たちは、一人ひとりが自分でどこを学ぶかを選び、講義を聴き、演習を行い、習熟を深めていきます。その間ずっと、atama+は、AIを活用して、生徒一人ひとりのつまずきの原因を特定し、必要な箇所を必要な教材で学習できるように生徒をサポートします。

 自分の習熟度に合わせて、一人ひとりが学ぶ形になっているので、どんどんカリキュラムは個別化していきます。
 例えば、小学校の学習範囲などでつまずきを抱えている生徒には、AIが効率的な「さかのぼり学習」を提供します。教室の中には、分数の計算などまで戻って学習している生徒もいるそうです。一方、数学が得意な生徒はスタートしてたったの2週間で中学2年生の学習範囲の終わりまで進んでいるそうです。
 atama+によって習熟度に応じたカリキュラムの最適化が行われることで、結果として進度が個別化していっているのがポイントだと思います。

 No.2では、先生とサポーターがどのように授業を支えているかについてレポートします。
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(為田)