教育ICTリサーチ ブログ

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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.4(2020年1月15日)

 2020年1月15日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。京都教育大学附属桃山小学校は、文部科学省の学校ICT活用フォーラムの視察先の一つとして選ばれていて、午後に学校ICTを活用フォーラムが行われましたので、そちらにも参加させてもらいました。

 実際にiPadを活用した授業を見学することができましたので、それぞれのクラスに10分ほどしかいなかったので、見学できた範囲でレポートしたいと思います。

3年生 理科

 3年1組では、中西和也 先生が理科の授業を行っていました。電球がつくかどうかをみんなが見られるように、先生のiPadのカメラで撮影した映像をリアルタイムで大型モニターに接続していました。こうすることで、先生の手元での実験の様子を教室全体で見ることができます。
 学習課題としては、「どのようなものが電気を通す/通さないのだろうか」を考えます。児童の机の上にある一人1台のiPadでは、ロイロノート・スクールを立ち上げていて、そこにはカードがたくさん並んでいて、どれなら電球がつくのかを考える際の教材として使えるようになっていました。中西先生は、「1円玉は?」「ハサミは?」と質問し、みんなで考えていきました。
 最後に、「課題の解決のためにはどうすればいい?」と中西先生が質問すると、児童は「実験!」と答えていました。

 iPadを使うことによって手作業で行う実験などがまったくなくなってしまうわけでは当然ありません。iPad等のデジタルと、これまでの授業で大事にしてきた児童が自分の手でする実験を通しての「わかった!」という喜びは、両立するものです。これをどのようなバランスで両立させるのかが、先生方の授業設計力そのものだと感じます。
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1年生 国語

 1年1組では、山口翼 先生が国語の授業を行っていました。児童はiPadでロイロノート・スクールを立ち上げて、シンキングツールの一つであるフィッシュボーン図を使って、「ものの名前」の勉強をしていました。
 フィッシュボーン図の魚の頭の部分に「まとめてつける名前」を書き、背骨の部分に「1つ1つの名前」を書いていきます。児童は、キーボードを使わず、iPadに手書きで文字を書いていきます。例えば、「1つ1つの名前」のところに「ぞう」「ライオン」「チーター」「くま」「パンダ」と書いてあり、「まとめてつける名前」に「どうぶつ」というふうに書いていきます。
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 ロイロノート・スクールを使って、児童に提出をしてもらえば、先生の方でそれをまとめてみることができます。山口先生は、モニターに児童の作ったフィッシュボーン図を提示して、みんなで共有しながら考えていきます。
 自分ががんばって考えたもの、書いたものを先生はアナログでの授業よりもずっとたくさん見ることができますし、見せることもできます。こうしたやりとりができるようになったときに、どんな授業を設計すればいいのかということを、先生方は考えていかなくてはならなくなります。
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5年生 国語

 5年1組では、長野健吉 先生が国語の授業を行っていました。児童はiPadでロイロノート・スクールを立ち上げ、シンキングツールの一つであるピラミッドチャートを使って、評論文の筆者の考え(「判断できる人間になってほしい」)に説得力を持たせるために、どういった要素が入ればいいのかを考えていました。
 iPadを活用することで、ノートや教科書はどう使うようになるのだろう?という質問をときどき受けますが、教科書やノートもより一層見るようになっているクラスも多いように思います。児童は、教科書もノートもiPadも、学びの道具としてそれぞれの用途で使いこなしていきます。
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 授業をする側も同様で、長野先生はモニターに児童の作ったピラミッドチャートを映し出して説明しながら、ホワイトボードでの板書も行います。どういった形で児童の思考を活性化させるのか、一緒に考えていく場を作っていくのか、というのは授業を作る先生方の仕事であり続けます。
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 児童が自分で考える場面になると、長野先生はどんどん児童の間に入っていき、児童の考えを聴き、たくさんの質問を投げかけ、議論を活性化していきます。こうしたやりとりをする時間を作り出すことも、ICTが教室に入るメリットだと思います。
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 たくさんのことを書きたくなると、iPadのソフトキーボード(画面上で使うキーボード)よりも、外付けキーボードを使いたくなる児童が多いようです。京都大学附属桃山小学校では、外付けキーボードは自分で用意して持ってきているそうです。
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 学校ICT活用フォーラムの授業見学としては、以上の3つのクラスの見学で終了だったのですが、休憩時間にもう2つの授業を見学させていただけたので、そちらの様子もレポートしたいと思います。No.5に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)