教育ICTリサーチ ブログ

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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.2(2020年6月4日)

 2020年6月4日に、京都教育大学附属桃山小学校で1年生を担任されている中西和也 先生にオンライン授業についてのインタビューをさせていただきました。

 京都教育大学附属桃山小学校では今年度のスタート時に、オンラインで授業を進めていく方針が学校として決まっていたので、入学式を1クラスずつ行い、片方のクラスが入学式を行っている間、もう片方のクラスで保護者との連絡ツールであるClasstingアプリの説明とオンライン授業で活用することになるロイロノート・スクールの操作説明会を実施したそうです。
 1年生の2クラスとも、保護者の端末を活用してのオンライン授業を実施しているそうです。オンライン授業で活用されている機器は、タブレットとPCとスマートフォンがそれぞれ約30%ずつという状況だそうです。休校期間が延長されるに連れ、スマートフォンでは画面も小さく操作がしにくいために新しくタブレットを用意するなど、協力的に環境を整備される家庭が多くなったそうです。
 1年生のオンラインでの学習には、保護者の協力が不可欠なので、学校としても保護者との関係づくりを意識していると中西先生は言います。例えば、入学式の翌々日に、すべての家庭に電話をして、問題がないかを確認したそうです。また、質問箱をロイロノート・スクール上で作り、そちらでも気軽に質問をすることができるようになっているそうです。

 実際に、どんな課題を出しているのかを中西先生に伺ってみました。1年生ということで、この機会に家庭に協力を得ながら、時間のかかる体操服の着替えを一人でできるようになろうという課題に取り組まれたそうです。ここには、オンライン授業だけれども身体を実際に動かしてもらうという配慮も入っています。
 着替えの手順をロイロノート・スクールで順番に見られるようにして配信して、着替え終わった写真をお家の方に撮影して提出してもらい、中西先生は、提出してもらった写真に花丸をつけたり、コメントを書き込んだりすることで、コミュニケーションを行っていました。
 また、粘土の作品を作ってもらって、できあがった作品を提出してもらうということもしていました。

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 国語科では、京都教育大学附属桃山小学校で使っている光村図書の国語の教科書にはQRコードがついているので、そこからリンクされている動画を見て「正しい姿勢で線を引いてみよう」という課題も出していたそうです。
m-manabi.jp

 オンライン授業を実際にされてみて、中西先生は「教えるときは、やっぱり動画がいい」と言います。
 ひらがなの練習の授業も、中西先生は動画を作って行っていました。動画のなかで、中西先生は「“こ”の字を書くときのポイントは3つです、自分で考えたい人は動画を一度ストップしてね」と言って、説明をしていました。動画はどうしても一方通行になりますが、動画は好きな場所で説明を止めたり、何度も聴き直したりできるという利点もありますので、それらをうまく組み合わせて授業を設計されているのだな、と感じました。

 中西先生は、授業動画を撮影・作成するときには、できるだけデータの容量を小さくすることと、どの端末でも見ることができるように工夫をされているそうです。いろいろと試してみたところ、ロイロノート・スクールのカメラで撮影するとどの端末でも見られるようだとわかり、その形式で授業動画を用意されているそうです。こうして実情に合わせながら、テクノロジーを使っていくことが重要だと思います。
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 それと、中西先生のオンライン授業では、最後に必ず自分の言葉でふりかえりを録音してもらっているそうです。もらったふりかえりの言葉は、次の授業のときにフィードバックをしているそうです。
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 中西先生は、「オンライン授業はいつもの授業とは別物です。子どもたちの反応が返ってこないからです」と言います。ですが、逆に音声でふりかえりを一人ひとりから送ってもらうことで、オンライン授業をせざるを得ない状況のなかでも、子どもたちの声に耳を傾け、関係を作っていく、という姿勢が話の中でひしひしと伝わってきました。
 ICTを使い、保護者にも協力をしてもらうことで、1年生であっても学びの場を作ることができるということを感じました。

 No.3に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)