教育ICTリサーチ ブログ

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宝仙学園小学校 授業レポート(2020年7月9日)

 2020年7月9日に宝仙学園小学校で、吉金佳能 先生が担当されている4年松組の理科の授業を見学させていただきました。この日の授業は、オンライン授業参観として、Zoomのウェビナー機能を使って公開されていました。吉金先生は授業の最初に、「いつも言っているように、飛沫と対面に注意して」と言っていました。保護者にとっては、学校での授業がどのようなものかはわからないので、こうして授業の様子を公開してもらえることで、安心するのではないかと思いました。
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 今回の授業のテーマは、「ものの温度と体積 発展編 ふん水チャレンジ!」でした。吉金先生の理科の授業では、「学んだことを使ってみよう」という方向性で、学んだことを実際に試してみたり、学んだ知識を使って仮説をたてたり、という活動が多く取り入れられています。
 今回の「ふん水チャレンジ!」では、最初にデモンストレーションが行われました。吉金先生の前にあるついたてには、「何かがおこります」と書いてあります。ついたての裏側に、吉金先生がお湯を注いでいきます。この時点で子どもたちは、みんなドキドキしながら吉金先生の方を見ています。こうして興味を持って、ぐっと見ることから吉金先生の授業はいつも始まっています。
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 吉金先生が手に持った水筒を傾けてお湯を注ぐと、ついたての裏から水が吉金先生の背よりも高くまで吹き上がりました。「おおー」と子どもたちがどよめきました。
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 吉金先生からは、「見てたよね?この噴水を再現してほしいと思います」というテーマが出されます。使えるのは、ペットボトル・ガラス管つきゴム栓・水・約80℃のお湯の4つです。この4つを使って、どうやったらさっきの噴水が再現できると思うか考えていきます。
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 吉金先生から子どもたちのロイロノート・スクールに配布されたワークシートには、ペットボトルとガラス管つきゴム栓がすでに書かれていました。子どもたちは、自分のiPadでロイロノート・スクールを使って考え、どうやったら噴水を再現できるのかを一人ひとりそれぞれの方法でまとめて、吉金先生に提出します。
 話し合いながら考えることももちろん行います。一人ひとりが自分の考えをまとめ、それをクラス内で共有するのにロイロノート・スクールが効果を発揮しています。
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 全員が提出を終えると、吉金先生は一覧で見せながら、「ざっと見てみると、ペットボトルの中に水が全部入ってるもの、半分くらいまで入っているもの、というふうにいくつかのパターンがありますね」と言います。
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 吉金先生は、「だいたい4つくらいの類型がありそうかな」と言うと、4人の提出物を選んで、A~Dの4つのパターンとしました。そして、教室でA~Dのどれがいちばん噴水が再現できそうかを質問してみました。また、教室内だけでなく、オンライン参観している保護者の皆さんにも、Zoomのウェビナーの機能を使ってアンケートを実施していました。
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 大体のやり方の類型が出揃ったら、実験でいちばん高く噴水が吹き上がるものを探していきます。子どもたちは実験器具とお湯を先生からもらい、グループごとに実験を始めます。噴水が吹き上がるところは、撮影したいので、お湯をかける人以外は、iPadで撮影準備をしていました。動画に撮影することができれば何度も実験の様子を見ることもできますし、「なぜこういう結果になったのか」を考察するときにも見返すことができるのはいいことだと思います。
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 何回か実験を繰り返すうちに、高いところまで噴水を吹き上がらせるグループも出てきました。最後に、今日の学びとして、「なぜふき出した?」と「どうすればもっとふき出した?」という2つの問いについて、考えてもらいます。ここでは、ノートに鉛筆でまとめてもらいます。ロイロノート・スクールで描いた自分の考えや、録画しておいた実験の様子などを見返しながら、ノートにまとめていきます。このように考えをまとめていけるのも、ICTを活用するからこその利点だと思います。
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 授業の最後に、吉金先生は子どもたちに、「ちなみに、先生は、A~Dじゃない方法でやっています」という衝撃の言葉を言いました。ここで子どもたちは、「えー!教えてー!」となります。強烈に「どうして?」「なんで?」「知りたい!」と考えるきっかけが作られた瞬間だったと思います。

 オンライン参観で、保護者の方々もどんな授業が行われているのかを見ることができます。学校での参観と違い、移動カメラも用意しておけば、教室の前から子どもたちの表情を見ることも可能になります。こうした形での授業参観も、今後は増えてくるのかもしれないと感じました。

(為田)