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新渡戸文化中学校 授業レポート No.3(2020年8月6日)

 2020年8月3日から7日の5日間に渡ってオンラインで行われた、新渡戸文化中学校の中学1年生から3年生までが参加する「Happiness English夏期特別授業〜英語の正体に迫る5日間」(担当:山本崇雄 先生)を参観させていただきました。

 Day4の授業の様子をレポートします。Zoomにログインするといつものように「自分が幸せになるものをmakeを使って文章にして、チャットに入れてください」と最初の課題が書かれています。生徒たちは「Music make me happy.」「Game makes me happy.」など、どんどん文章を書いていきます。
 山本先生は、「どんどん書いてみましょう」「大文字か小文字かも、気にしないで大丈夫です」と言葉をかけて、生徒たちが文章を書きやすい雰囲気を作っていきます。これは、教室の授業でもオンラインの授業でも、先生の役割として大きな部分だと思います。
 ここでは「3単元のsが…」というような文法上の訂正や解説をせず、「makeかmakesかは、今日の授業でやります」とだけ言います。「間違いを楽しむ、間違えることは可能性」「できないことに優しく」という考え方を、山本先生と生徒たちが共有しているのを感じました。

 この日の授業の冒頭では、翌週に行われる体験ツアーの告知も行われました。山本先生は、「セブ島の貧困地域とカメラを繋いで体験ツアーを行います。現地で活動して信頼を得たNPOが協力してくれてこそ実現した体験ツアーであり、英語ができるできないに関係なく、貧困層や恵まれない地域に暮らす人たちとの対話ができる貴重な機会です。支援のために3000円かかりますが、フィリピンへ行けば20万円くらいかかるので、ぜひ参加してみてください。チャットボックスにフォームのURL入れておきます」と生徒たちに言っていました。情報提供の場としてオンラインが機能していることが感じられるやり取りでした。

 Day4のテーマは、「動詞の様々な「形」を制覇しよう」です。最初に画面に映したスライドに書かれた表を共有し、山本先生は「ここ、大事なのでスクショしてください」と言います。その後、生徒たちは各自で表を見て、どんなときに動詞が変化しているのかを考えていきます。山本先生のスライドは決して、文法のルールが書かれているわけではなく、文法への気づきを生む仕掛けがしてあります。
 山本先生は、「この表のポイントが何か話し合ってください。1年生は、先輩たちに訊いてみましょう」と言い、ブレイクアウトルームに分かれて対話が始まります。
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 ブレイクアウトルームから戻ると、教科書から、今日のテーマにあった文章を書き出していく15分間になりました。山本先生は「教科書の目次を見ると、動詞の形がわかるかと思います。最後に、こんなのあったよ、と意見交換をします」と言い、一人ひとりが教科書に向き合う時間が始まります。
 そして、山本先生が「わからない意味は、ネットで辞書機能を使うのでもOKだし、教科書の巻末にも辞書機能はあります。わからないことは自分でどんどん調べて、追記しましょう。それが大事です」と言うと、生徒たちは自分でどんどん英文を調べ、ノートにまとめていきました。
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 1年生から3年生までが一緒になって、文法をひとつひとつ解説してもらって、練習問題をひとつひとつみんなで解く、という形の授業ではないので、こうしたやり方に慣れていない生徒は、少し大変かもしれないな、と思っていたら、山本先生が以下のようなことを生徒たちに伝えていました。
 「1つ1つやりたい人は不安になるかもしれないけれど、英語を間違ってもいいから伝えてみよう、と思ってもらいたい。そうすると、使えるようになります。モヤッとしたところがある人もいるかもしれません。今日で中学校3年間で出てくる、動詞にまつわるものは、ひととおりできた。これが核になります。これがしっかり核としてできたら、あとは単語力です。Qubenaに単語を学習する機能があって、自分に合わせてAIで問題が出てくるのでどんどん練習していきましょう。教科書をパラパラ見てわからない、と思うのは、単語の問題なので、Qubenaをスキマ時間にどんどんやってください。先生に“ここをやってください”と言われてやるものではないと思います。」

 これは、山本先生の授業づくりの考え方をすごく表しているように思いました。ひとつひとつを教えてもらうのではなく、自分でわからないところを見つけて、自分でどう学ぶかを知らなければ新渡戸文化中学校が目指している「自律した学習者」にはなれないので、こうした形の授業設計になっているのだと思いました。

 いよいよ次回は、「あなたはいい学習者ですか?」という入試問題に答えることに挑戦する、最終日Day5です。

 No.4に続きます。
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(為田)