教育ICTリサーチ ブログ

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新渡戸文化中学校 授業レポート No.4(2020年8月7日)

 2020年8月3日から7日の5日間に渡ってオンラインで行われた、新渡戸文化中学校の中学1年生から3年生までが参加する「Happiness English夏期特別授業〜英語の正体に迫る5日間」(担当:山本崇雄 先生)を参観させていただきました。

 最終日のDay5では、「Are you a good learner?」という問いに答える、英文を書いていきます。
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 そのための練習として「Do you like natto?」という質問に、Zoomで生徒を指名して答えてもらいます。「I don't like natto.」「No, I don't.」など、答え方はいろいろ出てきました。英語の授業では、一つの答え方をみんなで練習することもありますが、実践の英語だと確かにいろいろ答え方は多様だな、と思いました。
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 山本先生は、「でも、これで終わると会話はつながらないよね。回答としては弱いですよね。意見を書くためのコツを今日は伝授します」と言い、「Do you like natto?」への答えを例にして、「Opinion(意見)→Reason(理由)→Explanation(説明)→Opinion(意見)」という流れを、頭文字をとってOREO(オレオ)と紹介しました。
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 ブレイクアウトルームに分かれて、それぞれに練習してみます。山本先生は、「うまく言えない人は先生のをコピーしてもいいです。英語はコピーしていいんだよ。真似をすることはすべて大事。たくさん真似すると、ちょっと変えてみようかな、が生まれてくる」と言います。
 ブレイクアウトルームが終わるときには、「ああっ!」「やばい!」というリアクションが生徒から聞かれることもありました。知りたいことができて、それを話し合っているときなどにちょうどブレイクアウトルームでの対話が終わってしまうことがあるからです。
 この日は、ブレイクアウトルームから戻ってきてすぐに「先生、“ふつう”ってどう言うんですか?」と質問がありました。山本先生は、その質問に「“ふつう”って日本人らしい発想で、英語でバッチリ合う表現はないんだけど。“I like it but I don’t love it.”とかかな」と回答します。


 今度は、「Are you a good learner?」という問いに答えるために、ブレイクアウトルームにまた分かれて、「良い学びって、いい学習者ってなんだろう?」という意見交換を行いました。日本語での意見交換をしていきます。山本先生は、「これって英語で何ていうの?」もOKだよ、といいます。
 僕の参加していたブレイクアウトルームでは、「自分から積極的に学ぶ」「プロジェクトとかに参加する」などの意見が出ました。もちろん、「思いつかん…」という生徒もいます。そしていよいよ、「Are you a good learner?」という問いへの答えを一人ひとり、書いていきます。
 英語の文章を書くことについて、山本先生はどんどん生徒たちの背中を押していきます。スクリーンショットを撮った文章例を「“真似る”ってことを大切にしてほしい。パクればいいわけです」「Google先生に訊きながらでもOKです。書いてみましょう。難しく考えなくてもいいよ」と言います。
 書いた英文は、チャットにどんどん書き込まれていきます。「わからないことがあれば、チャットにどんどん書いてください」と山本先生が言うと、何人かの生徒から質問が書き込まれ、山本先生が「こうふうに書けばいいかも」とヘルプをしていきます。
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 授業の最後に、山本先生は「学びは巨大なジグソーパズルです。ピースを置いていく感じをもってください。と言っていました。こうしてオンラインでみんなで一緒に学ぶことも、学校という場も、一人ひとり英語の文章を書く時間も、ひとつひとつが学びのピースとなるのだと思います。
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 授業の最後に山本先生は、「padletに出してもらえば、添削します。学校で出してくれてもいいです。そういう一つずつが、学びのピースになる。勇気を出して学び取っていく感じです」と言いました。
 そして、5日間の講習の最後は、 “We Are the World”の2020年版を流しながら、モハメド・アリの言葉「不可能は可能性、不可能は通過点、不可能なんてない」が紹介されました。
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 この5日間で、生徒の英語力が飛躍的に伸びるわけではないと思いますが、学び方のコアがしっかりでき、なりたい自分に向けて、自律して学んでいくマインドセットが整うのだと思います。「できないこと」をマイナスに捉えず、どんどん背中を押していくのが先生の役割で、オンライン授業であっても精神的なつながりを持ちつつ学びのコミュニティーを作っていくことができるのだと実感しました。山本先生のオフラインの「教えない授業」がオンラインでも実現することを目撃できたことは、今後のオンライン授業やEdTechの可能性を広げる観点で貴重な機会になりました。

(為田)