2020年9月7日に、東京都立青山高等学校を訪問し、小澤哲郎 統括校長先生に、青山高校でのICTの活用について、お話を伺いました。新型コロナウイルス対策で休校となったときの都立高校のさまざまな取組がネットでまとめられていて、そのなかで「青山高校は、早くから家庭のインターネット接続環境もアンケートで調査。環境のない生徒には学校が積極貸与。(略)Zoomの質問受けも、対象生徒以外はミュートにするなど試行錯誤して情報共有。できることは全部やっていくという方針。」と書かれていて、実際にお話を伺ってみたいと思ったことがきっかけでした。
青山高校での日常でのICTの活用
最初に、青山高校で普段どのようにICTが活用されているのかを質問してみました。「提示型の使い方をしています。だから非常に古典的で、オンラインで双方向性を求められつつあるなかで、教室での使われ方はワンウェイです。ただし、利用状況としては、全学年全クラスで必ず使っています」と、小澤校長先生から説明していただきました。
全体的にはどの教室へ行っても、一日に半分はプロジェクタを使った提示型の授業が行われているので、その授業スタイルになっている先生も多いものの、教科の特性によってどれくらい使うかの差はあるそうです。
例えば、英語は担当している先生方全員が使っているし、体育も保健の授業で使っているそうです。教材を提示するだけでなく、アプリを使って投票をさせて意見集約をしている授業もあるそうです。社会科では、年表や地図帳を毎回持ってくるのは大変なので、全員がICTを活用しているそうです。
逆にあまり使っていない教科としては、物理や数学などが挙げられました。計算やグラフが多いと使いにくいですし、単元の導入や、提示教材があった方がいいところで一部使っているそうです。また、ICTの悪いところは全体像が掴みづらいところなので、全体を見たり手で書くことが中心になる国語の授業では、ICTを積極的に使っている率は少ないそうです。
ICTは提示型の使い方を中心にしているものの、青山高校の授業では、対面授業での「脱教え込み」を重視しています。何でもかんでも教えるのではなく、「どう思う?」「どういう結果になるかな?」と考えさせていく、脱教え込みの方向へと授業の仕方を変えていっているそうです。
休校によるオンライン授業への移行
このように対面授業では提示型でICTを活用している状況だったので、新型コロナウイルス対策で休校となり、「いざオンライン授業」となったときには、「オンライン授業てどうやるんだ?」「リアルタイムか録画か?」と校内で検討をしたそうです。
この時点で、小澤校長先生は、「オンライン授業は5分でいい。最大でも15分でいい。スライドショーでいい。ペンタブで書き込みながら解説してもいいし、カメラをおいて普通に授業をしてもいい。何でもいいから、今までやってきたこと、できることをやりましょう」と先生方に伝えたそうです。
出発点をそこに定めたから、すべての教科・科目で実施ができたと、小澤校長先生は言います。ICTを活用して教える素地はあったので、オンライン授業と聞いて尻込みをする先生もいたそうですが、オンラインの定義をこちらで変えて、「いろいろなオンライン授業があるんだ」ということを伝えたら、先生方が「それであれば自分のできるところで」と考えて、さまざまなオンライン授業ができたそうです。普通に板書する授業をしたり、単語のスライドショーを作ってどんどんドリル式で進めたり、それぞれの教科特性に応じたオンライン授業となっていったそうです。
休校当初の3月は、春休み課題を例年通りに出すのに教材を渡す手立てがなかったので、全学年・全教科分、ゆうパックで送付したそうです。新学期になっても学校を再開できないとなったので、4月に少しずつオンライン授業を始めて、5月の連休明けで本格的にオンライン授業を始めたそうです。
5月の終わりに学校を再開し、6月は分散登校でした。そのときに、都立日比谷高校が時間割通りにオンライン授業を実施していることを知ったそうです。青山高校は分散登校で午前と午後に同じ授業を2回していたので、時間割通りに進めている学校と比較して授業進度が2分の1になっていました。日比谷高校は時間割通りライブ配信でやったから、1日で青山高校より2倍進む。その情報に触れて、動画での一斉配信をしなければ遅れていってしまうので、ということでオンライン授業の実践を進めていったそうです。
50分の授業をまったく同じようにそのままやろうとすれば、15分のオンライン授業にはなりません。
オンラインで提示するスライドショーや漢字などのドリルは、オンラインで解説を聴いてから紙の課題を別途やってもらいます。紙の教材をもっていれば、「やれる人はどんどん進めなさい」と言うことができます。解法や例題を授業で説明して、あとは自分でどんどん進めてもらえます。数学の計算問題や証明問題でも、「こうやって…」と説明するところと、自分でやればいいところがあります。説明部分をぎゅっと詰めて、演習をするところを自分でやってもらえば、50分の授業時間をきちんと伝えることができます。
小澤校長先生は「自分でやればいいところを授業でみんなでやる必要はない。逆に言うと、今までの授業は、自分でやればいいところが授業の中にあるんです」と言います。
No.2に続きます。
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(為田)