教育ICTリサーチ ブログ

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授業で使えるかも:GIGA端末と青空文庫で並行読書

 GIGAスクール構想による「1人1台環境の整備」によって、全国の小中学生がタブレット端末やPC等を文具のように活用して学ぶ時代が目の前にやってきています。すでに端末が納品され、校内ネットワークやインターネット接続環境が高速化されて、新年度を待たずにどんどん活用している学校もあることでしょう。反面、当初予定よりも納品が遅れていて先生方のモチベーションが下がってきているとか、この年度末にモノだけやってきても忙しい上に研修が追いついていないので子どもたちにどう使わせたらよいものか考えられない、なんてこともあろうかと思います。

 そんなときは、国語の「並行読書」にGIGA端末を利用してみてはいかがでしょうか?
 並行読書とは「当該単元の指導のねらいをよりよく実現するために、共通学習材(通常は教科書教材)と関連させて、本や文章を読むことを位置付ける、指導上の工夫のこと」です。
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www.meijitosho.co.jp

 このサイトの中では並行読書のメリットなどにも触れています。

 子供が主体的に読む姿を実現しやすくなることです。とりわけ、読むのが苦手な子供ほど、教科書の読みではなかなか見られない、主体的に学習に臨む姿が、多くの授業で見られるようになります。実践してみて強く実感できたのではないでしょうか。自分で選んだお気に入りの作品を読むということは、子供たちをこんなにも主体的な読者にするものなのかと驚くほどです。
 また、教科書以外の作品や文章を読む機会が得られることで、子供たちがより多くのストーリーやものの見方・考え方、優れた叙述などと出合うことができますし、一つの物語では見えてこなかったものが、複数の本や文章を関連付けることによって見えてくることも多いでしょう。
 さらには、教師の側から見れば、教科書の読みを自分で選んだ本の読みに適用できるようにすることで、確実な指導と評価を行うことが可能となるのです。
 日常的に読書量の多い子供たちだけを念頭に置けば、教科書教材だけで学ばせても、読む能力を高められるかもしれません。しかし、読書の絶対量が少ない、いわゆる「読むのがしんどい子」を確実に支援するためにも、並行読書の意義は大きいと言えるでしょう。

単元を貫く言語活動を支える!ねらいに応じた並行読書の工夫 - 「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A - 明治図書オンライン「教育zine」

 私も小学校教員時代に並行読書を導入したことがあります。しかし解決が難しい課題もありました。それは「本がない」問題です。学校図書室は学校規模に応じた充実が図られているものの、同じ図書、もしくは同じ著者の作品を児童数分揃えることは不可能です。県や市町村立図書館の利用を推奨しても、アクセスの問題があったり同時期に同じような教材を扱う学校が多ければ多いほど競争率が上がってしまう問題があったりします。

 その解決策のひとつとしてGIGA端末は有効利用できるのではないかと思います。インターネット上には著作権切れの文学作品等を無償で利用できるように公開しているサイトがあります。その代表格が青空文庫です。
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www.aozora.gr.jp

 例えば、国語の時間に新美南吉の「ごんぎつね」を学習したとしましょう。私の経験ではそれ以前の学年で「手袋を買いに」を扱うことが多かったのですが、子どもたちは同じ作者の作品だということはすぐに気付きます。そこで「手袋を買いに」はどんなお話だったのか振り返りをするのですが、その時点で当時の教科書は子どもたちの手元にはありません。そこで便利なのが青空文庫です。作者ごと、作品ごとにインデックスが用意されているので、数回クリックして進むだけで目的の作品にたどり着くことができます。先生がたどり着いたら、そのURLを子どもたちの端末に転送、もしくは二次元バーコード化してカメラをかざすなどさせれば、ブラウザ上でアクセスすることができます。
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www.aozora.gr.jp

 あとは「いますぐXHTML版で読む」をクリックするだけです。
 他の作品にはインデックスから同じようにアクセスできるので、子どもたちでも難しい操作は必要ありません。今回の例で言えば、作者別から「新美南吉」に進めば118の作品にたどり着くことができます。作者によってはウィキペディアへのリンクもあります。小学生がウィキペディアを読みこなすのは難しい部分もあるかも知れませんが、インターネットを上手に使えばそうしたリソースにたどり着けると言うことを経験するだけでも、その後の学習への良い影響は大きいのではないかと思います。

 GIGA端末によっては青空文庫に掲載されている作品をダウンロードして読みやすい環境にしておけるアプリもあります。ブラウザでは横書きですが縦書き表示できるアプリが多いように思います。アプリを導入して子どもたちひとり一人にダウンロードを許可すれば、その端末に自分の読書履歴を残すことできます。

 教科書に掲載されている作者全ての作品があるわけではない(逆に言えば教科書に載っていない作者の作品にも出合うことができる)とか、ルビが小学校低学年向けではない、ものによっては旧仮名遣いだ、など、小中学生用にカスタマイズされているわけではありませんが、先生方の経験と工夫によって子どもたちの読書環境を大きく広げることに繋がるのではないかと思います。教材研究として一度アクセスしてみて、授業での活用を検討してみてはいかがでしょうか?

(佐藤)