2021年7月15日に、静岡県立掛川西高等学校を訪問し、吉川牧人 先生が担当する2年2組の世界史の授業を参観させていただきました。
吉川先生の授業では、最初に全員で立って、グループで前回の授業のふりかえりを行います。
その後で、ふりかえりの小テストをGoogleフォームで行います。生徒たちは自分のスマートフォンを使って、静岡県から配布されているGoogleアカウントでログインし、生徒たちが作問した、ふりかえりのための小テストに取り組みます。
生徒たちが授業のなかから重要だと思う部分を、「他の人が解く」という前提で作問するのは、良い活動だと感じました。Googleフォームさえ使えれば、みんな簡単に作ることもできます。問題形式については、「ラジオボタンで4択問題」が原則ですが、「チェックボックスで複数回答」など、新しい形式を生徒の方から提案して作っているケースもあるそうです。
吉川先生の授業は、さまざまな素材を組み合わせながら進んでいきます。今回のテーマは「国際都市長安」でしたが、「まず長安のイメージをもってもらうために、この動画を見てみましょう」と、映画「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」のなかの、長安の街を歩くシーンをみんなで見て、長安の国際的な雰囲気を感じていきます。
その後は、さまざまな知識へとアクセスできる質問をどんどん出していきます。最初の問いは「ポロシャツとは何だろう?」でした。ホワイトボードを各グループに渡して、話し合った答えを書いて発表してもらいます。「ポロをするときに着るシャツ」と出てきたら、では、「ポロってどんな競技?」と吉川先生は質問を重ねていきます。
このやりとりのなかで、「スマホで調べてもOK」と吉川先生は言います。ポロの実際の動画を見せ、今回の授業のテーマである唐代にもポロがあったこと、そこには遊牧民のバックグラウンドがあったことを説明していくことで、「国際都市長安」の背景を肉付けしていきます。
個人的にすごくおもしろかったのは、「唐の時代に長安でポロがあったのなら、日本には伝わってこなかったんだろうか?」という吉川先生の質問でした。なんと、日本でも古式馬術として残っていて、「打毬(だきゅう)」と呼ばれているそうです。調べてみたら、宮内庁のページでも紹介されていました。
打毬は,馬術競技の「ポロ」とその起源を同じくし,中央アジアの一角に発したものであろうといわれています。
西に流れたものがヨーロッパに伝えられて「ポロ」となり,一方,東に流れたものが中国で打毬となり,やがて朝鮮半島を経て,8~9世紀頃我が国に伝わったようです。
その後,奈良・平安時代には,端午の節会の際に行われる宮中の年中行事となりました。鎌倉時代以降は衰微していましたが,江戸時代に至り,八代将軍吉宗が騎戦を練習する武技としてこれを推奨したため,新しい競技方法も編み出され,諸藩においても盛んに行われるようになりました。
明治以降,日本古来の馬術は西洋馬術に圧倒され,打毬もまた洋鞍を用いる現代式打毬に転化されましたが,宮内庁主馬班には,現在,江戸時代(中期頃)最盛期における様式の打毬が保存されています。
そうして知識がどんどん繋がっていき、その過程で動画や写真、資料などさまざまなものを行き来しながら、黒板に貼ったスクリーンに投映したプリントにペンツールで語句を書いていきながら、解説していきます。
授業の最後に、ペアになって今日の授業をまとめ合います。授業中に付箋を使って大事なところを生徒たちにまとめてもらっているそうで、それをもとに40秒間で口頭でまとめをしてもらっていました。
吉川先生は、「Explain Everything」というアプリを使って、さまざまな教材を組み合わせて授業準備をされていました。生徒たちに配布しているプリントだけを用意しているのではなく、その周囲に「使うかもしれない」資料や素材(写真や動画など)が貼り付けられています。
スライドで作るのとの違いは、順番通りにしか表示できないのではなく、授業中の生徒たちとのやりとりのなかで、どの資料・素材を説明するかを吉川先生がその場で判断して、すぐに提示できることだと思います。
こうしたさまざまな教材を幅広く準備しておき、それをいつでも見せられるようにしておくことができるのは、先生がICTを活用する大きな利点だと思います。
Explain Everythingでは、画面上にペンで書き込むなどの操作を録画することができます。また、そのときに、話した音声も一緒に録音されます。こうして授業を録画しておけば、生徒が「もう一度授業を見たい」と言えば、これを提示して見せることもできます。欠席している生徒向けに提供することも可能です。将来的には、あらかじめこの動画を見てもらう反転授業の形式など、さまざまな展開が考えられると思いました。
(為田)