教育ICTリサーチ ブログ

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戸田市立戸田第一小学校 授業レポート(2021年10月27日)

 2021年10月27日に戸田市立戸田第一小学校を訪問し、池邊寛 先生が担当する4年5組のプログラミングの授業を参観させていただきました。この授業では、教材としてアイロボットのプログラミングロボットRootを使っていました。
 4年5組では、これまでに2回Rootを使った授業をしていて、1時間目でアイロボットが提供しているミッションシートを使って基本的なブロックを使ってRootを動かす練習をし、2時間目でどんなことをRootでやりたいかをGoogleクラスルームとJamboardでアイデア出しをしていました。
 「こういうプログラムを作ってください」と池邊先生からテーマを指定せず、子どもたちが自分でアイデアを出しあったら、音楽、レース、物語、迷路などのさまざまなアイデアが出てきたそうです。そうして出たアイデアのなかで、Rootを使ってやりたいことが近い人たちでグループを作り、3時間目の今回の授業で制作に入っていきました。

 授業の最初に池邊先生は黒板に、今日の授業のミッション「Rootをつかってやってみたいことをプログラミングしよう」と、それを実現する4つのステップを紹介しました。池邊先生が書いた4つのステップは、以下のものでした。

  1. 話し合い Yes! and 「いいね!それなら~」
  2. 制作 ~Rootも人も材料も~
  3. さつえい、発表
  4. ふりかえり

 最初の話し合いのところで、誰かのアイデアに対して、「いいね!それなら~」(Yes! and...)という言い方をしよう、とマインドセットについても触れているのがとてもいいと思いました。プログラミングの授業は、「自分のやりたいことを見つけること」と「やりたいことを実現しようと制作(プログラミング)して、試して、直して、また試す活動」と、両方がある方がいいと僕は思います。池邊先生が、そうしたマインドセットについても、授業の最初に子どもたちに伝えているのが印象的でした。
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 この授業での4つのステップについて話したあと、みんなが制作にかかります。Rootには4マス×4マスのマットがついていて、最初のレベルのプログラミングでは、「1マス進む」というふうに動きを指定することができます。また、マットにペンで線を引いて、ペンの色をセンサーで読み込むこともできます。
 マットを広げてRootの動く場所にしているグループがほとんどだったので、机をどけて、教室いっぱいにマットを広げていました。各グループ1台のRootと接続して、各グループがChromebookでブラウザでサイトを開いてプログラムを組み、Rootを動かしていきます。
code.irobot.com

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 机をどけて広く使っている教室全体が自由な雰囲気になっているのも、プログラミングをものづくりとして楽しむためには非常に大切な要素だと思いました。
 子どもたちはさまざまなアイデアを出していきます。例えば、Rootに車の絵をくっつけて動かしているグループがありましたが、こうした動きをうまく組んでいけば、Rootによる演技ができそうです。
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 他にも、RootにSIMカードを抜いたiPhoneをくっつけて、移動するカメラとして使おうとしているグループもありました。Rootだけで完結しなくても、他のものと組み合わせたりすることで、よりいろいろなことができるようになります。アイデアに制限をつけず、どんどん広げていける授業だったと思います。
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 池邊先生は、必ずグループでやらなければいけないとしていなくて、自分で実現したいアイデアがはっきりしている2人が個人制作をしていました。Rootの台数が多くあることと、一人1台のChromebookがあれば、グループと個人での制作を選ぶことも可能になります。
 個人制作をしていた一人は、「Rootにカノンを演奏させたい」というアイデアだったのですが、楽譜を暗誦しているわけではないので、YouTubeでカノンを検索して演奏を聴きながら、Rootの音の出るブロックを並べていました。自分のアイデアを実現するために、子どもたちはさまざまな情報を自分で集め、考えていくことができていました。

 グループでやっている子は、作業を分担して行うことができています。プログラミングをする子、動きを考える子、みんなのアイデアをホワイトボードに書き出してまとめる子、撮影する子、それぞれに役割を分担することができていました。
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 授業の最後に、Rootをプログラミングするのに大事なことを池邊先生が質問すると、子どもたちからは、「あきらめない」「考える」「Root目線で考える」という答えが出ていました。
 あきらめずに考えて、思い通りにできてうれしい、というのは、プログラミング教育で子どもたちに体験してもらえる大きな財産だと思います。授業後に池邊先生は、「あえてこの授業のゴールはオープンエンドにしています」とおっしゃっていました。オープンエンドだからこそ、いろいろなアイデアが出せて、その実現のために子どもたちが「あきらめない」「考える」授業になっていると思います。そして、こうした授業は、プログラミングの「楽しさ」に繋がり、学びの「楽しさ」に繋がっていくと思います。
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 授業の最後に、Googleフォームで3段階のルーブリックで自己評価をしてもらって、ふりかえりを入力してもらいます。3段階のルーブリックは、以下のようになっていました。回答の割合も、池邊先生に教えてもらったところ、Aが6割、Bが4割ということでした。

  • A:やってみたいことに向けて、友達の意見も考えながらプログラムや設定を変え、何度も考えつくりなおすことができた。(60%)
  • B:やってみたいことに向けて、自分でプログラムや設定を変えながら、何度も考えつくりなおすことができた。(40%)
  • C:やってみたいことに向けて、プログラムや設定を考えたけど、うまくいかなかったので、あきらめてしまった。また友達とも相談できなかった。(0%)

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 こうした「こういうのを自分たちでやってみたい!」とアイデアを出し合って、それを時間をたっぷり使ってプログラムを組み、動かしてみて、思い通りに動かなければ直して…という活動ができることは、プログラミングの授業ではとても大事だと思いました。

(為田)