教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

宮城教育大学附属小学校 授業レポート No.1(2021年10月20日)

 2021年10月20日に、宮城教育大学附属小学校を訪問し、新田佳忠 先生が担当する2年4組のコンピュータサイエンス科(以下、CS科)の授業を参観させていただきました。
 宮城教育大学附属小学校ではプログラミング教育にとどまらず、より適切にコンピュータを活用するために、その特性や原理についての科学的な理解を学ぶことを目指して、年間10時間のCS科を設けてカリキュラム開発及び授業研究が進められています。

 今回の2年4組のCS科の授業は、今年度4時間目でした。授業のはじめに新田先生は、「CSなんだけど、こないだの算数の授業の話をします。算数の時間に三角形・四角形を組み合わせて絵を描いたよね」と言って、三角形や四角形を組み合わせて子どもたちが描いたリボンやお城の絵を見せながら、黒板に貼っていきます。
f:id:ict_in_education:20211107053137j:plain


 算数の時間で紙に手描きで三角形や四角形を使って絵を描いたことを説明した後、新田先生は子どもたちに「これ、コンピュータでできるかな?」と言い、「今日は、コンピュータで形を作った絵をかこう」と、めあてを伝えます。
 以前にも授業で使って教室の壁に貼ってある「SketchesSchool」のアイコンを見ながら、新田先生は「使えそうな機能はありますか?」と子どもたちと考えていきます。子どもたちが「使える!」と言ったアイコンを順に黒板に貼っていくことで、どのボタンを使えばいいのか分かるようになっていました。
f:id:ict_in_education:20211107053212j:plain

 この後、20分くらい子どもたちは自分のiPadでSketchesSchoolを起動して、黒板に貼ってあるアイコンを使いながら、三角形や四角形を使った絵を描いていきました。大きい形を1つだけ描く子も、小さい形をたくさん書いて組み合わせる子もいました。一人ひとりがそれぞれ自分の作品を作る時間が十分にとれていました。
f:id:ict_in_education:20211107053301j:plain

 途中、新田先生は「左上にある“前にもどる”ボタンを使えば、失敗しても簡単に戻せるね」と紹介しました。Undo機能は、コンピュータ独特のもので、手で絵を描くときにはできないことなので、こうしてコンピュータを使って絵を描くときに取り上げて言ってあげるのはいいことだと思いました。これによって、試行錯誤ができるようにもなると思いました。
f:id:ict_in_education:20211107053318j:plain

 途中、完成した絵を教室前方にあるモニターにミラーリングして紹介してもらうこともありました。作品をみんなで見ることで、「こういう機能があるよ」「こういう絵も作れるよ」ということが説明できるので、より子どもたちの作品の幅が広がるように思いました。
f:id:ict_in_education:20211107053359j:plain

 完成した作品だけでなく、作品を描いている途中の様子も、画面をミラーリングしておくことで見せることができます。ずっとミラーリングしておけば、どのアイコンを選んで、どのように動かしているのかなどの制作過程も共有することができます。
f:id:ict_in_education:20211107053441j:plain

 新田先生は、時々子どものiPadの画面を撮影していました。先生のiPadから教室にあるプリンタで出力して、授業の最後に黒板に貼っていきました。教室にプリンタがあると、先生のiPadにデータを送ってもらったり、どこかに提出してもらったり、ということに時間をかけずに授業内でフィードバックに使うことができます。
f:id:ict_in_education:20211107053517j:plain

 制作時間が終わったら、新田先生は「一度、タブレット、ぱたん。机の中に入れましょう」と言いました。iPadが目の前にあると、いつまでも使ってしまう子もいますので、こうして使う時間と使わない時間をしっかり区切るのも重要だと思います。

 授業の後半では、新田先生が「算数の時間では手で絵を描きました。今回はコンピュータで絵を描きました。自分としては、どっちが描きやすかった?」と子どもたちに問い掛け、手描き派とコンピュータ派でそれぞれにいいところを挙げていきました。

  • 手描き派:
    • 「(コンピュータだと)機能が多すぎて、指で描いちゃったりもする。手描きだと鉛筆とかで線をひけるから、そっちが好き。」
    • 「手描きの方が楽しい」
    • 「慣れているから」
  • コンピュータ派:
    • 「(紙だと)消すときに、紙がぐちゃぐちゃになっちゃう」
    • 「すぐに塗りつぶせたりもする」
    • 「すぐに戻せる」
    • 「きれいに消せる」
    • 「コピーが簡単にできる」

 出てきた意見を黒板にまとめながら、新田先生はそれぞれの意見に関連する機能を大型モニターで実演していました。機能を見せると、子どもたちが「そうそう!」と同意の声をあげていました。こうして、紙とコンピュータ、アナログとデジタルの違いについて考えることができるようになっています。

 今回の授業は、CSの視点として「デジタルやアナログな情報の特性について考えること」が含まれていたそうです。デジタルもアナログも両方使えるようになったうえで、いずれは自分で選べるようになることが理想です。
f:id:ict_in_education:20211107053617j:plain


 授業後に、新田先生にお話を伺うと、「今日の授業では、コンピュータでの作画と人の手での作画で、授業の温度がぐっと上がる瞬間があるな、と思った。“人の手で描く良いところ”と“デジタルを使って描く良いところ”について議論があったのが良かったと思う」とおっしゃっていました。
 今回の授業のねらいのなかには、CS科の観点にある「コンピュータの仕組み」「デジタルとアナログの違い」について考えることがあったので、最後の議論のところでそれらが出てきていたことを評価していました。

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)