教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』

 末冨芳 先生と桜井啓太 先生の『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』を読みました。公教育システムに(学校の外側からではありますが)関わるからには、こうしたシステムに関しても知ったうえで行動したいと思っています。

 タイトルの「子育て罰」というのは衝撃的な言葉かもしれませんが、第1章で末冨先生がまとめています。

「子育て罰」の正体:親、とくに母親に育児やケアの責任を押し付け、父親の育児参加を許さず、教育費の責任も親だけに負わせてきた、日本社会のありようそのもの。(p.23)

 もともとは「child penalty」という学術用語だと、第2章で桜井先生が書いています。そのうえで、3つの定義が書かれていましたので、p.62-63をまとめてみました。

「子育て罰」はもともと「child penalty:チャイルド・ペナルティ」という学術用語」

  1. 子育てしながら働く母親(ワーキングマザー)と子どもを持たない非母親との間に生じる賃金格差を示す経済学・社会学の概念(そのため「motherhood penalty:母親ペナルティ」とも呼ばれる)。
  2. 日本の再分配政策(税・社会保障制度など)は、子育て世帯に対して機能していない、あるいは状況をむしろ悪化させており、「就業や育児を罰している」。(社会政策学者の大沢真理 先生)
  3. 社会のあらゆる場面で、まるで子育てすること自体に罰を与えるかのような政治、制度、社会慣行、人びとの意識。(末冨先生による本書での指摘)

 自分は何も知らないな、とショックを受けながら読みました。学校現場で保護者と接している先生方は、僕とは違う読み方をされるのだろうな、と思います。
 現場での肌感覚、統計で見えるデータ、その背景にある制度や仕組みなど、もっと総合的に見られるようになりたいと思わされる本でした。そのうえで、自分のフィールドで何をしていくべきなのかを考えていきたいと思います。

(為田)