教育ICTリサーチ ブログ

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戸田市立戸田第一小学校 校内研修レポート(2022年4月6日)

 2022年4月6日に、戸田市立戸田第一小学校の校内研修の講師をさせていただきました。戸田第一小学校は、昨年度にプログラミングの授業を参観させていただいていて、一人1台の端末を使いこなしつつある様子を感じていました。

 このまま子どもたちのICT活用が日常でどんどん進んでいくと、先生が指示をしてICTを使うというのではなく、子どもたちが自分で判断をしてICTを使うようになっていきます。そのために「デジタル・シティズンシップ」の理解を進めていきたい、ということを事前に伺っていました。
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 最初に、「デジタル・シティズンシップ」と「ネットモラル教育」の違いを紹介しました。そのうえで、「子どもたちが問題を起こすからといって、活用を禁止するルールを作るのではなく、子どもたちにとってのデジタルがどんなものであるべきなのか、どう使っていくべきなのかについて考えましょう」ということをお伝えしました。

 とは言え、実際に教室で一人1台の端末を使って学ぶ子どもたちは、いろいろなことをします。操作方法がわからなかったり、困った事態になってしまったり、意図するかしないかに関わらず悪い使い方をしてしまうこともあります。
 それを最前線で見て指導をするのは先生方なので、子どもたちがデジタルを学びのための道具として使いこなせるように、どんなことが起こるのかを知り、そのための対応をする最初の一歩に、今回の研修がなればいいと僕は考えました。

 そのために、僕がここ数年で、自分が教えた授業や参観した授業などで実際に出会った「問題」を提示しました。子どもたちは、面白がっていろいろなことをします。大人の想像を超えたものもあります(今回紹介した例だと、同じニックネームに揃えてくる、というのがそうでした)。こうしたことが起きたときの対応に、先生方のデジタルへの価値観が出てくると思います。その価値観を、学校全体でなるべく共有していくことが重要だと思います。
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 戸田第一小学校の子どもたちが、どんなふうにデジタルを使うのか。それは学校の文化に関わることでもあり、戸田第一小学校の学区の家庭環境や地域文化にも関係することです。だからこそ、起こりそうな問題とそれに対する対処は、戸田第一小学校が自分たちで決める必要があります。
 そのために、まず戸田第一小学校でこれから起こりそうな問題について、Mentimeterを使って書き出してもらいました。この日の研修は、新型コロナウイルス感染症対策で、学年団ごとに教室が分かれていて、先生方は一人1台のChromebookでZoomを通じて研修を聴いてくださっていました。ZoomのチャットにURLを貼り、画面にQRコードを提示して、Mentimeterに参加してもらって書いてもらいました。
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 10分ほどで、たくさんの想定される「問題」が先生方から書き込まれました。以下、先生方から書いてもらった問題を抜粋しました。こうして見てみると、実際に教室で子どもたちが使っているのを見てきたからこその問題も多いのがわかります。リアルで具体的な問題が多く挙がったのも印象的でした。

  • タイピング中毒
  • 係活動の名のもと、アニメサイト閲覧問題
  • 漢字が書けない
  • 鉛筆で書くことへの負担感が増す
  • 休み時間でもタブレットに触りっぱなしになる
  • 連絡帳を見ない問題
  • 他者との関わりが薄くなる
  • 関係のないタブを開いて課題に集中しない(スクラッチ遊び)
  • 誹謗中傷
  • チャットでのいじめ
  • すぐ調べて分かった気になる問題
  • オンライン上でだけ強い人
  • 遊び道具化
  • meetの中にあるチャットのやりとりで喧嘩が始まったり、悪口を書きこんだりする
  • 友達の意見を消す(ジャムボード)
  • アカウントやパスワードを使った、なりすまし
  • 視力の低下
  • 自分で考えるのではなく、すぐに検索して調べようとする(覚えようとしなくなる)

 こうして書いてもらった問題を、今度は各教室の先生ごとにひとつの問題を取り上げて、その問題についてどう対処したらいいと思うかを話し合ってもらいました。また、どういう理由で、そうした対処をしたいのか、ということも話し合ってもらいました。
 この場での短時間の話し合いで、すべての問題への対応ができるようになるわけではないですが、「こうした問題が起こるかもしれない」ということを広く共有しておき、さらにその問題への対処の知見も共有しておくことで、学校としてのデジタルの使い方を考えるきっかけになると思います。
 最後に、それぞれの教室で話し合った内容を紹介してもらいました。学年によっても、先生方が取り上げる問題は違いましたが、「何のために使っているのかを考える」「失敗から学んでもらう」ということを話し合っていた先生方が多かったように思います。

 また、こうして出てきた問題の多くは、大人でも同じように抱えている問題だとも思いました。先生方も、自分たちで学校での仕事の中で、デジタルを活用してみて、自分が使う側になったときに感じたことを、子どもたちと一緒に話し合うことも大事なのではないかと思いました。

 戸田第一小学校が子どもたちにとっても先生方にとっても、デジタルを道具として使いこなせる場になるように、この日の研修がお役にたてばいいなと思います。

(為田)