教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『わが子に今日からできる! 世界標準の英語の学び方』

 Edvation x Summit 2019で一緒に登壇させていただいて以来、いろいろとお世話になっている鈴木款さんから、白川寧々さんとの共著『わが子に今日からできる! 世界標準の英語の学び方』をお送りいただきました。

 読んでみて、「どうして英語を学ぶことが必要なのか」「どうやって英語を学ぶことができるのか」ということについて考える機会になりました。
 鈴木さんが執筆されているパートで、2001年に北京オリンピック開催が決定されたときに、中国が小学校の英語教育の義務化を決定した話が紹介されていました。そのなかで、教育部(日本の文部科学省にあたる)が、「英語は単なるコミュニケーション手段ではなく、これからの国民的資質として必要。英語を学ぶことは国民に対する基本要求だ」(p.47)と義務化を決めたことが書かれています。

当時の教育部の担当は、導入の経緯をこう振り返っています。「当時我々は、これからの社会はITの発展が地域格差をなくし、ITで世界とコミュニケーションするためには英語が不可欠だという認識でした。だから英語はこれから『国民的資質』として必要で、そのためには誰もが平等に学べるように、小学校段階から英語を学ぶべきだと判断しました」
中国はいまから20年以上前に来るべきIT社会を見据え、英語がすべての国民に必要だと決めました。
この段階で小学生に英語を学ばせない理由であった「一生英語を使わない国民がいて資源の無駄」という批判は、完全に封じ込められたのです。
一方当時の日本はどうかというと、2000年に初めてIT戦略会議が総理官邸で開かれましたが、ITの可能性は議論されたものの英語教育がより重要になるという“国民的相違”にはつながりませんでした。(p.47-48)

 英語を「国民的資質」とまで言うかどうかは別として、英語が子どもたちの可能性を広げてくれるものになるのは間違いないと思います(僕のなかでは、ICTを使いこなすことも同様の位置づけです)。

 個人的に、このコロナ禍の期間、世界各国のメンバーと一緒に英語でのプロジェクトに参加していたのですが、「もっと英語ができたら…」と思う機会が多かったのです。DeepLなどさまざまなツールを使いながらやりましたが、それでも自分が英語をリアルタイムでやりとりできたら…と思ったタイミングは多かったのです。

 一方で、「小学校で英語を教える」というのが先生方の負担になっている、というのもわかります。ちなみに、中国は小学校の英語の先生を増やすための方策などもとっているそうです。これを日本で実現するのも大変だろうと思います。

 子どもたちが楽しみながら英語に触れられるようにするには、一人1台の情報端末を使って英語のデジタルコンテンツに触れることも大きな力になると思います。
 この本には、たくさんのコンテンツがQRコードと共に紹介もされています。まずは先生方が自分で見てみて、「これらを子どもたちが楽しく見て、英語に親しむために、どういう授業ができるだろう?」と考えるところからスタートするのがいいと思います。
 本に紹介されていたコンテンツを、僕もいくつか見てみました。どれも一緒に歌い(何なら踊り)ながら英語に親しめそうです。

 歌だけでなく、ストーリー仕立てになっているコンテンツもありますので、だんだんレベルを上げていくといいと思います。なんというか、キャラクターの感じが日本のコンテンツと違って、けっこう好きです。

 「このコンテンツを見てみたら?」と薦めたり、「あ、これどんなお話だったかみんなに教えてあげて(日本語でも、英語でも)」とモチベーションを与えたり、そういうのこそ公教育である学校でできるといいし、先生方にしかできない仕事だと思っています。

(為田)