2022年5月27日に聖徳学園中学・高等学校を訪問し、ドゥラゴ英理花 先生が担当している高校1年8組のデータサイエンスの基礎講習の授業を参観させていただきました。高校から聖徳学園に入学した生徒たちのクラスで、一人1台のiPadを使っています。
身近なデータとして「自分の1日の生活」をJamboardに書き出して分析をしていて、分析結果から課題を導き出し、それをプレゼンテーションするという授業です。
ドゥラゴ先生は授業の最初に「データを分析するのに大事なのは、一人よがりにならないこと、偏見、先入観を持たずに分析すること」と言い、サバンナと大都会が写った2枚の写真を見せて、生徒たちに「この写真は、どこの国でしょう?」と問いかけました。
正解は、サバンナの写真も大都会の写真もどちらもケニアの写真でした。驚く生徒たちに「偏見、先入観を私たちは植え付けられています。こういう写真も、データのひとつです。写真を見るときにも、先入観を持ってしまうのです」とドゥラゴ先生は伝えていました。
データを分析する作業をするときに、「先入観や偏見を持たずに事実だけを見なければいけない」というのは、とても大切なことです。ケニアの2枚の写真を使って、知らずに持ってしまっている先入観を実感してもらえるのはとてもいいと思いました。
次に、「自分の1日の生活」を分析してプレゼンテーションするための準備として、NHK「プロのプロセス プレゼンテーションのしかた」という10分ほどの動画をみんなで見ました。
www2.nhk.or.jp
動画を見始める前にQRコードを使ってGoogleフォームにアクセスして、動画のなかで紹介されているプレゼンテーションのまとめ方(「PREP」と「TAPS」)を一人ずつ入力してもらいます。
iPad上のキーボードを利用している生徒も、外付けのキーボードを利用している生徒も、Apple Pencilを使ってScribbleで文字入力をしている生徒もいました。Googleフォームに情報をまとめるために、iPadのカメラでモニターを撮影する生徒もいました。こうして、さまざまな方法で情報を得て、まとめていくための道具としてiPadを活用していました。
Googleフォームへ入力するのは、ポイントだけではありません。ドゥラゴ先生は「わからないこと、疑問に思ったことも、そのままGoogleフォームに書いてください。このフォームは、ふりかえり用であり、それで評価が下がることはありません。ふりかえりに自分で使うことが大切です」と言っていました。
わからないことや疑問に思ったことも合わせてGoogleフォームに書いてもらうことで、先生も生徒たちの理解度がわかりますし、書いてもらった疑問点については後日フォローすることもできます。こうして授業をインタラクティブにできるのも、ICTを活用する良さです。
プレゼンテーションのポイントをまとめた後は、プレゼンテーションの準備へと進みます。「プレゼン、やったことある?」とドゥラゴ先生が訊くと、半分弱の生徒が手を挙げていました。この授業ではiPadにインストールされているKeynoteを使って、みんなで同じ方法でプレゼンテーションを作っていきました。
非常に印象的だったのは、データの分析について、ドゥラゴ先生が、「データを分析するときには、自分の意見は入れないでね。分析は、事実をそのままに出す。私情、感情を入れない」と言っていたことです。分析をするときに、つい自分の意見を入れてしまう人も多いので、こうしたトレーニングをすることは重要だと思います。
また、「データは1つだけを見ないで、見比べるように」「データを使ったら、必ず出典を書くようにしてください」というドゥラゴ先生の言葉も、何度も授業のなかで伝えられるうちに、生徒たちができるようになっていくと思います。
プレゼンテーションを作る授業のなかで、「データをどのように分析するか」ということまで触れることは必要です。何をどう分析したいかによって、見るべきデータは違ってきますし、ただデータを分析して終わりではなく、そこから「どうすればいいのか」というところまで含めて考えなくてはいけません。そのための最初のステップとして、「自分の1日の時間の使い方」をデータとしてまとめて、それを分析し、課題を抽出してプレゼンテーションするという課題は、データサイエンスの基礎演習としておもしろいと思いました。
No.2に続きます。
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(為田)