教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『算数教科書のわかる教え方 1・2年』

 香里ヌヴェール学院小学校の樋口万太郎 先生から、著書『算数教科書のわかる教え方 1・2年』をお送りいただきました。学習者端末と算数の教科書を具体的にどう使うのかを知ることができる本です。興味深かったところをメモして共有します。

 最初に興味深かったのは、算数教科書でどのようなつまずきがあるのかを書かれている部分です。ICTをどう使うかということの基盤には、当然ですが「算数をどう教えるか」ということがあり、つまずきの類型がわかることで、それをICTを活用してどうサポートしていくかということも考えられると思います。

算数教科書でどのようなつまずきがあるのか(p.23)
1. 正解主義という思考によってつまずく
2. 既習ができていないためにつまずく
3. 日常生活との違いによってつまずく
4. 発達段階で仕方のないつまずき
5. 既有体験の乏しさによってつまずく
6. 統一されていないことによるつまずき
7. 子供の素朴な思いによるつまずき

 樋口先生が考える、ICTの良さが5つ挙げられているところも、参考になります。授業を見る評価の軸として使えると感じました。

私はタブレット端末上で取り組む教材・教具のことを「デジタル教具」と定義づけています。
私はデジタル教具の良さとして、
①煩雑さがなくなる
②保存しておくことができる
③全員に発表ができる
④複製することができる
⑤子供が自由に使用できる
の5つをあげています。(p.61)

 また、一人1台の情報端末がある授業で、ノートの役割について言及しているところもありました。

1人1台タブレット端末があるという学習状況において、ノートの役割を再考しないといけません。ノートをなぜ書かせるのでしょうか。「ノートを書くのは当たり前」「自分が小学生の時に書いていたから、同じように書かせる」という発想だけでは、もう令和時代では通用しません。
教科は違いますが、社会科の実践家有田和正氏は、「ノートは思考の作戦基地」と言われていました。私も同様に、子供がノートを使っていくときには、思考の作戦基地として使っていくことが大切だと考えています。
思考の作戦基地という考えは、タブレット端末の使い方でも同様に言えることです。
きっと有田和正氏が現役であれば、タブレット端末をどんどん使い、授業を行っていたことでしょう。そして、「ノートやタブレット端末は思考の作戦基地」と言っていたのではないかと予想しています。
思考の作戦基地ということは、子供の思考をノートに表現していくことになります。(p.75)

 ICTを「思考の作戦基地」と捉えるのは、僕が「デジタルを思考と表現のツールにしたい」というのと近くもあり、さらに具体的にイメージがつきやすい言葉で素敵だな、と感じました。

 1年生・2年生だけでなく、仲間として中学年と高学年の本もありますので、こちらも読んでみたいと思いました。


(為田)