2022年8月22日に、葉山町教育総合センターで行われた葉山町夏期教職専門講座 「情報教育研修講座」に、「ICTを効果的に活用した授業づくり」というテーマで講師としてお招きいただきました。
今年度から葉山町の教職員向けICT研修や町のICT推進指針に携わらせていただいていて、今回の講座もオファーをいただいてすぐ、7月には葉山町立葉山中学校と葉山小学校を訪問し、一人1台のChromebookをどのように授業で使っているかを参観させていただいてから、紹介する事例などを選び、研修内容を設計しました。
葉山町の先生方の授業づくりの参考になるように、できるだけ多くの授業事例を紹介するとともに、Mentimeterを使ったワークも入れてみました。QRコードを使ってMentimeterにアクセスしてもらうようにして、QRコードを使って教材を提示することや、Mentimeterなどの外部ツールを使う体験をしてもらうことも目的としていました。
会場には先生方一人1台のChromebookがあったので、ChromebookのカメラアプリでQRコードをスキャンしてMentimeterにアクセスして入力する先生も、自分のスマートフォンやタブレットでアクセスする先生もいらっしゃいました。
最初に、先生方に「あなたにとってデジタルとはどんなものですか?」という質問をしました。参加者が多い集合研修だと、全員に発言してもらうということはできませんが、Mentimeterを使えば、集められる意見は格段に増えます。先生方にとっては、この体験が授業支援ツールを使うことで児童生徒の無答率が下がることの実感にもつながると思い、ワークとして入れました。
先生方に書いていただいた回答は、非常におもしろかったです。「生活を修正してより快適にしてくれる大切なツール」「鉛筆やノートと同じ道具です」「生活を便利にしてくれる」「身体能力を拡張する一つの道具である」など、さまざまな表現でデジタルを表してもらいました。なかには、「ビールのグラス」というユニークな答えもありました。こうした答えが出れば、「これって、どういうことですか?」とさらに質問が投げかけられる、というのも教室での授業とまったく同じです。
全員にこうして「デジタルとはどういうものか」を言葉としてきちんと書いてもらうことは、学校内でもやってみるといい活動だと思います。そして、出てきたたくさんの表現のなかから、学校や学年で共有するものを選ぶことが大切だと思います。
ここで書いた「デジタルとはどういうものか」という価値観は、学校での学びにどれだけデジタルを使うべきか、ということに関連してきます。児童生徒への指導にも、授業内での使い方にも、保護者への説明にも、すべてに関連してきます。関わる先生方がそれぞれ違う価値観でデジタルを使うのではなく、ある程度共有された価値観でデジタルを使うことが大切だと思います。
「デジタルとはどういうものか」を考えてもらった後で、小学校から高校まで、さまざまな授業でのICT活用事例を紹介していきました。
「こういうふうに使いましょう」という意図で紹介をするのではなく、葉山町の小学校・中学校で活用できそうなアイデアを探してもらうような気持ちで、先生方には聴いてほしいと思いながら事例を紹介していきました。
さまざまな事例を紹介していくと、参加している先生それぞれの反応が違うのがよくわかります。所属している校種も違うし、担当している学年や教科も違うので、それで当然です。そのなかで、「どういう使い方がいいのか」を考える評価軸として、講演の後半には「教育ICT利活用の目的9類型」を紹介しました。
9つの類型を紹介した後で、もう一度Mentimeterを使って、9つの類型からどの目的を自分の学校、自分の担当している学級・学年で達成したいかを書いてもらいました。
「どの目的を達成したいと思うか」を明確にしておくことは本当に大切です。答えを書いてもらった後に先生方とも話したのですが、「デジタルドリルを導入する」というだけでは、目的があまり明確になっていないと思うのです。
例えば、「授業を効率化するためにデジタルドリルを導入する」のと、「進捗確認・理解度確認のためにデジタルドリルを導入する」のと、「モチベーション喚起のためにデジタルドリルを導入する」のでは、求められる機能は全然違うものになると思います。
どの目的でデジタルドリルを導入するのかを明確にして、その目的を共有した上で学校で使ってはじめて、効果を評価できるようになると思います。
デジタルで葉山町の子どもたちの学びがどんどん変わっていく様子を、近くでサポートしていければと思っています。
(為田)