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香南市立赤岡小学校 授業レポート No.1(2022年11月2日)

 2022年11月2日に香南市立赤岡小学校を訪問し、松岡貴裕 先生が担当する3年生のプログラミングの授業を参観させていただきました。3時間目と4時間目の2コマ連続で、アイロボットのプログラミングロボットRootを活用した授業でした。

 前日にRootを使った授業を実施していて、プログラムを作る「iRobot Coding」の基本的な使い方もすでにできていました。今回の授業では、Rootをお掃除ロボットに見立てて、部屋を掃除するプログラムを子どもたちに作ってもらいます。

 授業の最初に松岡先生は「広い部屋を先生が作りました」と言って、Rootに付属している4マス×4マスのマットを4つ貼り合わせて8マス×8マスの大きなマットを2つ、教室の床に敷きました。
 マットの上の4つのマスに箱が貼りつけてあって、その箱にはテーブルや椅子などのイラストが描かれています。これらのテーブルや椅子などを避けて、「すみずみまで」「できるだけはやく」部屋を掃除するようにRootをプログラミングしてもらいます。

 子どもたちは、一人1台のChromebookとRootとワークシートを持って、2つのマットに分かれて座ります。
 「ロボット掃除機は、動き始めたところにもどってくるから、スタートとゴールは同じマスになります」と松岡先生が言うと、子どもたちは配られたワークシートに鉛筆で道順を書いてみて、どんな道順で部屋の掃除をするのかを考えていきます。
 「先生、来た道を通ってかまわん?」「もちろん、いいよ」という質問も出ていました。いきなりプログラムを組み始めるのではなく、どのように動かしたいのかを明確にしてからプログラムへ進んでいきました。

 プログラムを組み始める前に、松岡先生は電子黒板を使って、iRobot Codingの画面を表示して、「前に進む」だけでなく「後ろにバックする」もできることなど、前日の授業でできるようになった動きを復習しました。

 子どもたちは、自分のChromebookでプログラムを組んだら、マットの上で実際にRootを動かしていきます。
 松岡先生は「1回、実験してみよう」と子どもたちに声掛けをして、一度に長いプログラムを書くのではなく、少しずつできたところまでを正しいか確認していくように導いていました。

 実際にRootを動かしてみると、思い通りに行かないところも多くあります。子どもたちからは、「なんでそっち行くが?!」という声もあがっていました。松岡先生は「それは、自分でそうプログラミングしたからです」と答えていたのですが、僕はこのやりとりにプログラミングの授業の大事な部分が隠れていると思います。
 自分で組んだプログラムが思い通りにいかない体験をして、それを一つずつ修正していって、自分の思い通りに動くようにする、そのプロセスこそがプログラミングの授業では大事だと思いますし、そうして「少しずつ直していけばいい」という気持ちを持てるようになることも、学校でプログラミングの授業をする意義だと思っています。

 例えば、多くの子どもたちがつまずいていたのは、Rootを回転させるときの向きの設定でした。右に90度回転させるか、左に90度回転させるかが、左右が相対的に変わるので、プログラムが長くなってくると混乱してきてしまいます。
 何度も実験して直すなかで、「どこが違うかわからん。先生、一緒に確認しよう」と松岡先生に助けを求めている子もいました。こうして助けを求められることも大切です。こうした体験ひとつひとつが、先生ともクラスメイトとも協働して学んでいく素地になっていくと思います。

 大きな部屋の、障害物で隔てられた隅にRootを入れるのはみんなすごく工夫をしていました。前から入れてバックで戻す子も、最初からバックで入れる子も、音が鳴るようにプログラムする子もいました。
 みんなそれぞれに工夫していたからこそ、うまく隅のマスにRootが行ったときの盛り上がりは大きかったです。こうしたことをクラス全体で感じられるような授業設計になっていました。

 授業の最後で教室にある2つのマットを使って、一人ずつマットの上でRootを動かしてもらって、それをみんなで見る時間をとりました。
 いろいろな道順をたどるRootを見て、「どういう順番で進むかは人それぞれ。人のがいいなと思ったら、今度は真似したらいいと思います」と松岡先生は言っていました。
 まだ途中までしかできていない子もいましたし、途中から変な動きになってしまう子もいましたが、できたところまでをみんなで見ていきます。
 「失敗したー!」という子もいましたが、クラス全体がそれをマイナスと捉えるのではなく、できたところまでを見て、そこにどんな工夫や苦労があったかを考えて、「すごい!」とポジティブに反応していたのが印象的でした。プログラミングの技法を教えるよりも、こうした雰囲気をクラスに作ることこそが、先生の大事な仕事だと改めて思いました。

 最後に黒板にみんなで感想を書いていきました。最後にお互いの作ったプログラムで動くRootを見て、「今度はああいうのをやってみたい」という感想が多く書かれていました。

 No.2に続きます。
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(為田)