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新渡戸文化中学校・高等学校 理想の教科書発表会 レポート No.1(2023年2月20日)

 2023年2月20日に新渡戸文化中学校・高等学校を訪問し、山本崇雄 先生と岸洋一 先生が担当する高校1年生の英語の授業を参観させていただきました。この授業は、英語の学び方を学んだりモチベーションを向上するための取り組みをする「英語エンゲージメント」という授業で、3クラス合同で行われていました。
 今回の授業は教科書会社 三省堂の協力で、英語の教科書『My Way 論理表現』を題材として、グループに分かれて自分たちの理想の教科書を考えて提案するプロジェクトの発表会でした。

 会場となったハピネスホールでは、生徒たちはグループごとにホワイトボードを使って、自分たちの考えた「理想の教科書」をプレゼンテーションする準備ができていました。
 外部からも今回の発表会に来ている人も多く、題材となる『My Way 論理表現』を編集し、学校現場に届けている三省堂の社員の方々や、他の学校の先生も参加していました。参加者は教室を回って、生徒たちが考えた理想の教科書についてのプレゼンテーションを聴いていきます。

 ホワイトボードに情報をまとめて書いてあるグループが多かったですが、Keynoteで発表するグループや、iPadでサンプル版を作ってデモをするグループもありました。

 僕が聴いたグループでは、以下のような理想のプレゼンテーションがありました。大人は「教える」立場から教科書を見てしまいますが、生徒たちは「学ぶ」立場から教科書を見ていて、視点の違いが勉強になりました。

  • 学校でいちばんつまらない授業は古文だと思う。それは、この先、古文を使うことがないから。英語も同じになってしまっているのではないか。だから、日常生活で使いそうな日常会話やスラングが教科書に入っていればいい。
  • 英語の教科書は、キャラクターがイケていない。だから、キャラデザ(キャラクターデザイン)を若い人の好みに変えたらいい。キャラデザは自分の好みに変えられてもおもしろいかも。
  • QRコードで学んだ単語や表現が出てくるアニメやドラマを見られるようにしたらいい。日本語の字幕を表示するかしないかを、選べるようにする。

 理想の教科書を自分たちで考えるためには、いまの教科書がどんなふうなのかを知らなくてはならないので、結果的に教科書全体のレビューをする学びにもなる、と山本先生はおっしゃっていました。
 また、このプロジェクトは、「英語が自分は苦手だ」という生徒にとっては、「どういうところが嫌なのか」を考える機会になっていると感じました。「自分は英語が苦手だけど、では、どういう教科書だったら勉強しやすいだろうか?」と考えることは、「いやだなー」と思いながら授業を黙って聞いているよりも、ずっと意味があるかもしれない、と思いました。

 教科書を作っている三省堂の方々や、教科書を使って教えている他校の先生方が、今回の発表会に参加して生徒たちのプレゼンテーションを聴いてくれることで、「本物・当事者を巻き込むことになり、生徒たちのクリエイティビティ、エンゲージメントを高めてくれる」と山本先生は授業後におっしゃっていました。そうした場を子どもたちのために授業の中で作ることは、学校の先生の大きな役割だと思いました。

 プレゼンテーションが終わったら、ホワイトボードに書いた内容を撮影して、Padletにアップしてもらって共有しました。Padletには英語エンゲージメントでこれまで取り組んだ課題がすべて一箇所にまとまっていて、それぞれの課題ごとに生徒たちが取り組んだアウトプットが見られるようになっています。クラス全体で作ったポートフォリオを、いつでも見返せるのはとてもいいと思いました。

 最後に、Googleクラスルームでふりかえりを書いてもらいました。この日が2022年度最後の英語エンゲージメントの授業だったので、山本先生は「英語エンゲージメントの授業は、今日が今年度最後だけど、来年につなげていきたいです。思っていることは、フィードバックしてください。自分の声で授業を良くしていきましょう」と生徒たちに伝えていました。
 「自分の声で授業をより良くしよう」と先生が生徒たちに語るのは、当事者感をもってもらうために大切な言葉かけで、英語の学び方を学んだりモチベーションを向上する「英語エンゲージメント」の授業のなかで、とても大切な要素だと思います。

 No.2に続きます。
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(為田)