教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

EDIX東京 イベントレポート No.2(2024年5月8日)

 2024年5月8日~5月10日まで東京ビッグサイトでEDIX東京が開催されました。EDIXはたくさんのセミナーやプレゼンテーションを聴き、最新情報や授業事例などを知ることができる場であり、「教育の情報化」を目指す仲間たちと会える場だと思っています。

 5月8日にスズキ教育ソフトのブースで行われた、さとえ学園小学校の山中昭岳 先生の講演「自律し、自立する学びへ ~メタ認知力を鍛える 新しいカタチのポートフォリオ~」に参加してきました。山中先生は講演のなかで、いま求められている学びについて説明し、その学びを実現するシステムとして活用を始めたトラビを紹介してくれました。

いま求められる学び、さとえ学園小学校が目指す学び

 「さとえ学園小学校ではGIGAスクール構想に先駆けて2018年度より“文房具”として一人1台のiPadの活用をスタートしましたが、いまではiPadは“空気のような存在”となっている」と山中先生は言い、さとえ学園小学校での日常の授業の様子を写真で紹介してくれました。

 写真に写っていたのは教室でみんなが前を向いて先生の話を聴いている授業ではなく、たくさんの子どもたちが頭を寄せ合って輪になって一人1台のiPadを見せ合いながら話し合っている授業でした。山中先生は「一人ひとりのiPadには違う画面が表示されていて、授業を参観している人は子どもたちが何をしているかわからない。しかし、子どもたちは自らすべきことがわかっていて、主体的に学んでいる」と言います。
 別の写真では、ディスカッションを教室で対面だけでなく、家にいる子もオンラインで繋いで参加しているハイブリッドなグループ活動の様子が写っていました。オンラインコミュニケーションも子どもたちには普通のことになってきています。また、子どもたちと先生だけでなく、外部の専門家も授業に参加して子どもたちとディスカッションしている様子も紹介されました。こうした様子から、場所の制約を超え、学校と外部という立場の違いも越えた対話的な学びを子どもたちがしていることを感じます。

 さとえ学園小学校は、「自律し、自立する学び」をできる子どもたちを育てることを目指すと山中先生は言います。子どもたちが自律・自立していく過程で通知表もなくしたいし、言われてやる宿題もなくしたいそうです。
 通知表がなくなっても、学習の過程を保護者と共有し、具体的な根拠を示したまとめがあればそれで日々の学びの評価ができるようになります。また、宿題は先生から出されてやらされるものではなく、子どもたちが自分のことを知って自分で設定して学ぶようになってほしいと山中先生は言います。

 自律し自立する学びをできる子どもたちを育てるために、「メタ認知力を鍛える新しいカタチのポートフォリオが必要だ」と山中先生は言います。そのためにさとえ学園小学校で導入したのが、トラビです。

求める学びを実現する、ふりかえりのツールとしてのトラビ

 子どもたちが自律し自立するためには、学びの連続性を可視化することが必要だと考え、さとえ学園小学校はトラビの活用を始めました。トラビは、学校での利用に特化したデジタルワークシートで、継続的な記録をまとめることができるので、子どもたちの変容を経時的に見ていくことができます。
www.suzukisoft.co.jp

 トラビを活用して子どもたちの変容を継続的に見ていくために、「めあて」と「ルーブリック」を設定したそうです。
 「めあて」では本時でやることを書き、「ルーブリック」には、本時が終わったときにどんな姿になっているかを具体的に、できたかできていないか判断できる言葉で書くようにします。
 子どもたちは「めあて」と「ルーブリック」をもとにして、トラビにふりかえりを書き込んでいきます。さまざまな教科でトラビを使って書いたふりかえりを一覧で見られるので、子どもたちが自らの学びをふりかえる習慣を身につけられます。
 こうしたデータの蓄積は、デジタルの得意分野です。たくさんのデータを蓄積し、データを俯瞰して見て傾向を読み取れるようになると、自らの学びを客観的なデータで分析することにつながるのではないか、と山中先生は言います。

 山中先生は、さとえ学園小学校でトラビを活用している事例を多く紹介してくれました。
 定期テストを行うたびに、「設問ごとの得点」「自己分析」「自己評価」と書いてもらうようにしています。そして、答案用紙とやり直しは撮影したデータをトラビに貼り付けています。これが一覧で見られるのはおもしろいと思いました。こうした活用の成果として、山中先生は「やるべきことを自ら見つけられるようになった」と言っていました。定期テスト後のふりかえりを全教員で取り組んでいるそうです。

 その他にも、トラビを使って図工の授業で作品が完成するまでの過程を記録として残しているそうです。制作過程の写真と共に、作品に対する省察なども書き込み、それをまとめて見ることができます。デジタルポートフォリオを作ることができます。

 テストごと、学期ごと、単元ごと、毎時間、長期休みとさまざまな場面で、さとえ学園小学校の子どもたちはトラビにふりかえりを書いていきます。
 先生方もトラビを子どもたちの学びのポートフォリオとして活用しながら、子どもたちのメタ認知力を鍛えて自律・自律した学びができる子どもたちを育てることを目指している様子がわかりました。

 最後に課題として、トラビへのふりかえりの量や質は、先生からのコメントの有無で変わることがわかったそうです。デジタルでポートフォリオを記録するからと言って、先生方の伴走の価値が下がるのではなく、むしろ価値が上がるのではないかと思いました。

 今後、どのようにさとえ学園小学校の子どもたちと先生方がポートフォリオを作っていくのか、そして自律・自立した学びができていくのか、楽しみだと感じました。

 No.3に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)