教育ICTリサーチ ブログ

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考えてみた:「教育DX」の定義を調べてみて、広い意味で使いたいと思った

 最近、依頼される学校研修のテーマで「教育DX」を挙げられることがよくあります。「教育DX」という言葉はよく聞くようになったと思いますが、では、「教育DXとは何か?」と自問してみると、きちんと言葉で語れません。
 言語化できないことを研修で話すことはできないので、「教育DX」についての明確な定義がほしいと思って調べてみました。

文部科学省は「教育DX」をどんなふうに定義している?

 まずは文部科学省による定義が確実だろうと思ったので、「教育DX 文部科学省」とキーワードを入れて検索をしてみました。そうすると、「教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について」というページがトップに表示されます。

 「教育DXとは何か」を解説するページではなくて、「教育DXをどう推進するか」を解説するページが出てくるのか…と思いつつ、「教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について」のページへアクセスしてみます。

 ページの内容としては、「教育DXとは…である」という定義などは書かれていなくて、「教育DXの推進については、ルール・ツール・利活用の三本柱で取組を進めています」と書かれていました。

教育DXの推進においては、

  1. 教育データの意味や定義を揃える「標準化」(ルール)
  2. 基盤的ツール(MEXCBT、EduSurvey)の整備(ツール)
  3. 教育データの分析・利活用の推進や、教育データ利活用にあたり自治体等が留意すべき点の整理(利活用)

の三本柱で取組を進めています。

教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について:文部科学省

 教育DXって、「データをどう使うか」というところに力点が置かれているのだなと驚きました。どれも大事なことではあると思いますけど、この「教育DX」を各自治体の教育委員会を通じて各学校にやってもらうのは、ちょっと大変かもしれないな、と思いました。

教育委員会は「教育DX」をどんなふうに定義している?

 自治体の教育委員会では、どんなふうに教育DXは定義され、紹介されているのだろうかと思って、いくつかの教育委員会の名前をキーワードにして検索してみました。

 横浜市教育委員会では、「横浜の教育が目指す人づくり 横浜市」というページで「未来の教育の実現に向けた横浜教育DX(デジタルトランスフォーメーション)」が紹介されていました。

 内容を見てみると、文部科学省のページと同様に、「データ」の活用にフォーカスした説明が書かれていました。

横浜教育DXは、①児童生徒、②教職員・学校、③教育委員会の三者をつなぐデータのさらなる分析・活用を進め、横浜の公教育全体の質の向上を目指します。また、24万人の児童生徒を対象とした政令指定都市初・最大規模の「IRT型の学力調査」※を開始し、そこで得たデータから児童生徒一人ひとりへの指導支援に役立てます。

※「IRT型の学力調査」は、問題への解答状況から問題の精度や難易度、受験生の能力などを推定する学力調査です。

横浜の教育が目指す人づくり 横浜市

そもそも「DX」はどんなふうに定義されている?

 「教育DX」の上位にあると思う「DX(デジタルトランスフォーメーション)」についても検索してみました。野村総合研究所(NRI)のサイトでは、DXは以下のように定義されていました。

企業が、ビッグデータなどのデータとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、競争上の優位性を確立すること。

DX(デジタルトランスフォーメーション)| 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)

 この定義を使うならば、教育DXは文部科学省が言う「教育データの分析・利活用の推進」となるのが正しいように思います。

もう少しDXを広く捉えたいなと思う

 こうして調べてみて、僕はDX(デジタルトランスフォーメーション)をもう少し広い意味で使いたいと思っているんだなと気づきました。僕はDXを「デジタル技術で社会や生活の形を変える」ことだと考えていました。だから、教育DXは「デジタル技術で、学校での学びの形を変える」ことであればいいなと思っています。
 そうすると、「教育データの分析・利活用の推進」だけで語られるとは少し焦点も違うと思うし、方向性も少し違うように思うのです。「教育データの分析・利活用の推進」を進めても、必ずしも「デジタル技術で、学校での学びの形を変える」ことに必ずしも繋がらないからです。

 教育委員会のページを検索しているときに見つけた、佐賀県教育委員会のサイトには、「教育DX」で「誰もがいつでもどこでも誰とでも自分らしく学ぶことができる子ども主体の学び」を目指すと書かれていました。こちらの方が、僕が考えるイメージに近い感じがしました。

 「教育DX」という言葉をどう使っているのかが、こんなに多様だとは思っていませんでした。
 たぶん、教育DXを「データの活用・分析を進めていく」ことだと思っている学校は、僕に研修を依頼してこないと思うので(笑)、僕は教育DXを「デジタル技術で、学校での学びの形を変える」ことだと広く解釈して、そのためのお手伝いをしていきたいな、と思いました。

 教育DXについて、「このサイトはわかりやすいよ」「この本を読んでみるといいかも」という情報を教えていただきたいです。パッと調べただけでは見つからない情報もたくさんあると思います。自分のなかで、しっかり教育DXについての軸をもっていたいと思うので、教えていただける方、ぜひお願いいたします。

(為田)