2024年5月29日に東京学芸大学附属小金井小学校を訪問し、鈴木秀樹 先生が担当する5年1組の社会の授業を参観させていただきました。この日は「未来を支える食料生産」がテーマでした。「前の授業のあと、食べ物の産地とか、家で見てみた?」と鈴木先生は子どもたちに質問しながら、モニターでデジタル教科書を表示して、日本各地でどんな食料が生産されているのかを子どもたちと一緒に見ていきます。
これまでの授業で子どもたちは食べ物の産地がわかる地図を見て、「北海道はいろいろな食料の産地」「水産物の産地は、海に面したところ」「北の方で生産が多いもの→米、りんご」などのように気づいたことをふせんに書いて地図の横に貼ってありました。
そのふせんをみんなと読みながら、鈴木先生は「見て気づいたことを書くだけでなくて、どうしてそうなのか、予想をしてほしいんです」と新たに課題を子どもたちに伝えます。
デジタル教科書のツールを使って「食料の産地の広がりについて、気づいたこと、どうしてそうなのか予想したことをふせんに書き出しましょう」と鈴木先生は言います。
ふせんには文字制限があり、最大でも52文字しか入力できません。この日の授業では、みっちり書くのではなくて、産地を見て気づいたことと、どうしてそうなっているのかと自分でした予想をみんなで共有することが目的でした。そのため字数は少なく、子どもたちは決められた字数のなかで自分の考えたことを表現しようと工夫していました。
鈴木先生は「青森県は、りんごの生産が多い」とふせんに書き出して見せて、「これがどうしてなのかの理由を考えてほしいんですよ」と子どもたちに伝えます。
「理由を考えるのに使えるものは、何がありますか?」と鈴木先生が質問すると、子どもたちからは、地図帳、教科書、Sagasokka、AIと声があがりました。
「AIも使えますね」と鈴木先生は言い、どのように行うかをモニターに映し出して紹介しました。この日は、tomoLinksを使っていました。「答えは教えないようにAIには指示を出してありますので、自分が考えたことについて、どう思うかをAIに訊くようにしましょう」と鈴木先生は言います。
「青森県でりんごの生産が多い理由を予想しました。私の予想は「青森県の人がりんごをとっても愛しているから」です。私の予想は正しいでしょうか。」と入力して、AIからの返答を待ちます。子どもたちもどんな答えが返ってくるのかと興味を持ってモニターを見ていました。
AIからの返答は、「あなたの予想は、一部正しいとも言えます。青森県の人々がリンゴを愛しているからこそ、大切に育てているという部分は間違いありません。しかし、それだけが理由ではないとも言えます。リンゴの生産には地理的な要素や気候なども大きく影響します。青森県がなぜリンゴの生産が多いのか、さらに深く理解するために、青森県の気候や地理、そしてその他の要素について調べてみてはどうでしょうか。また、青森県の農業に関する情報を提供している公式サイトなども参考になるでしょう。」というものでした。
先生が自分の考えの壁打ち相手としてAIを使っている様子を見せることで、子どもたちも同じように使えるということがわかるようになると思います。
子どもたちはいろいろな教材を参照しながら、一人ひとりが食料の産地のひろがりについて考えていきます。デジタル教科書を開いて説明を読んだり図版を見たりしながら考え、「食料の産地の広がりについて、気づいたこと、関係していると思ったこと」をふせんに書いていきます。
Teams 社会のチャネルの下に、「食料の産地のひろがり」というスレッドを作って、そこに子どもたちは、デジタル教科書のツールで日本地図にふせんを貼ってスクリーンショットした画像をどんどん貼っていきます。スレッドに並ぶので、他の人のを読むこともできます。
授業時間が残り15分くらいになったところで、鈴木先生は一度個人作業をストップしてもらって、ふりかえりをしました。
「さっきAIに青森県でりんごの生産が多い理由を適当な予想を書いて訊いてみたけど、大事なところもありました。最後にあった“さらに深く理解するために、青森県の気候や地理、そしてその他の要素について調べてみてはどうでしょうか”というところ。いま、これをみんなは自分たちでやってたんじゃない?」
気候や地理、その他の要素、例えば「北海道だったら面積が広いから」とか、そういう資料は地図帳に載っていますし、教科書にも載っています。最後に数分、個人作業に戻しますので、気候や土地の様子を考えて理由を書いてみてくださいね」といいます。
AIを教科書や地図帳、インターネット検索と同列で扱って、それぞれを補完的に使いながら学んでいこうとしている子どもたちの姿を見られた授業でした。どの教材も完璧ではないからこそ、それぞれの長所と短所を知って使っていくためには、こうして学校で先生がガイドとしてサポートしながら学んでいく授業が必要だなと感じました。
No.5に続きます。
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(為田)