2024年9月18日に関西学院大学 大阪梅田キャンパスで開催された「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 大阪」に参加しました。参加した「新刊『シリアスゲーム』著者陣が語るシリアスゲームの現状と未来」を聴きながら記録したメモを共有したいと思います。
このセッションには、2024年3月に刊行された『シリアスゲーム』の6人の著者のうち藤本徹 先生(東京大学大学院 准教授)、池尻良平 先生(広島大学大学院 准教授)、福山佑樹 先生(関西学院大学 教授)、小野憲史 先生(東京国際工科専門職大学 講師)の4人が登壇して、各自が執筆した各章のみどころを紹介して、その後で今後の「シリアスゲーム」に関する展望を語ってくださいました。
『シリアスゲーム』各章の紹介
4人の先生方が順に、各章のみどころを紹介してくれました。要点だけメモしたものを公開します。興味があるところはぜひ、『シリアスゲーム』を手にとって該当の章を読んでみてください。
- 1章 シリアスゲームとは(藤本先生)
- シリアスゲーム=「教育をはじめとする社会の諸領域の問題解決のために利用されるデジタルゲーム」
- 20年の研究の進展を踏まえて、シリアスゲームの定義や範囲を整理
- これまでに提唱された関連用語との類似点と相違点を検討
- 「ゲーム」と「シリアスゲーム」
- 「エデュテインメント」と「シリアスゲーム」
- 「シリアスゲーム」と「ゲーミフィケーション」
- 3章 シリアスゲームのデザイン(池尻先生)
- 学習領域に合わせた独自なシリアスゲームのデザイン手順とは?
- ゲーミフィケーションで「チョコレートで包んだブロッコリー」を抜け出せる?
- シリアスゲーム事例
- 4章 シリアスゲームのメディア(福山先生)
- アナログ/デジタルゲーム学習の効果量をメタ分析した研究
- 同一内容でデジタル/アナログ版のゲームを用意して比較する研究
- 「アナログでも実現できる学習内容」においてはアナログが優位
- 学習内容とメディア特性を踏まえた上で、最適なメディアを選択することが重要
- 7章 地方創生とゲーム(小野先生)
- 8章 今後の課題と展望(藤本先生)
- シリアスゲームの普及がもたらした社会的な変化やその意義や可能性を検討
- これまでに議論してきた「シリアスゲームの将来像」の検証
- 代表的事例や研究拠点の「その後」
- Flashが使えなくなって、プレイできなくなったシリアスゲームも多くある
- 大きなプロジェクトも終了してしまったものが多い
シリアスゲームの展望
最後に、シリアスゲームの展望をそれぞれに紹介してくれました。『シリアスゲーム』の6人の著者のうち4人が自身の領域をもとにして展望を話してくれるのはとても贅沢だと思います。
- シリアスゲームの展望(藤本先生)
- ゲームの特徴に即した効果測定・評価方法の開発
- ゲームベースドアセスメント、プレイフルアセスメントの研究の進展
- シリアスゲームの保存・活用環境の整備
- 技術やプラットフォームの変化の影響を受けやすい
- 新規参入者への支援リソースの整備
- シリアスゲームの展望(池尻先生)
- 世界に潜む「面白い」「楽しい」が発掘されて、新しいジャンルのシリアスゲームがどんどん生まれる
- 過去を復元する活動
- 自分の脳と身体のズレを感じる
- 季節で異なる風景を集める
- AIを組み込んだ可変的なシリアスゲームが生まれる
- Non Player Characterをよりリアルにできる
- シナリオ自体もプレイヤーに適応したものが作れる
- シリアスゲームの展望(福山先生)
- アナログとデジタルの融合がより進む
- シリアスゲームの要素をそれ以外に活用する「シリアスゲーミフィケーション」が普及する!?
- シリアスゲームの展望(小野先生)
- 観光立国推進のツール
- 海外で日本の地方都市や名所旧跡がバーチャル観光できる
- 名所旧跡を新しい視点で紹介・解説できる
- 「謎解き」との融合
- 学校教育での活用
- 探究学習+アナログゲーム制作の広がり
- プログラミング教育の普及
- 地域文脈に即したデジタルゲームの制作(民話・伝承)
「シリアスゲーム」の今後が楽しみになるセッションでした。
No.3に続きます。
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(為田)