2024年11月30日にデジタルハリウッド大学 駿河台キャンパスで開催された「近未来教育フォーラム2024 The Great Transition ~ポストAIは来ない~」に参加しました。1年に1回開催される近未来教育フォーラムは、「テクノロジーによって社会はどう変わっていくのか。学びはどう変わっていくのか」ということを自分に問いかける良い機会になっていて、可能な限り参加しています。
今回の近未来教育フォーラムのプログラムは、ブレイクアウトセッション、キーノート(プレゼンテーションとトークセッション)となっていました。ブレイクアウトセッションでは以下の4つのセッションが同時に開催されました。
- 「教育現場における生成AIコンテンツと著作権法」(上原伸一 先生・デジタルハリウッド大学特命教授)
- 「クリエイティブ教育に生成AIは必要か?現役クリエイターの生成AI活用事例」(小泉薫央 さん・映像クリエイター)
- 「DXハイスクール2年目、なにを企画しますか?」(鹿野利春 先生・一般社団法人デジタル人材共創連盟 代表理事+小笠原健二 先生・岡山学芸館高等学校 副校長)
- 「AI時代における人材確保と働き方改革」(村田弘美 さん・リクルートワークス研究所 グローバルセンター長)
僕が参加した「DXハイスクール2年目、なにを企画しますか?」のセッションで語られたポイントをまとめて共有したいと思います。
2025年度 DXハイスクール 解説
最初に、概算要求時点での2025年度のDXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)の要点を鹿野先生が解説してくださいました。
- 「デジタル人材を増やす」という国の方針ははっきりしている
- 最終的に自然科学(理系)分野の学生割合50%を目標。そのためには、高校からそれだけ進学する生徒を出さなければいけない。
- 基本的な変更はない
- 定額補助:ICT機器整備(ハイスペックPC、3Dプリンタ、動画・画像⽣成ソフト等)、遠隔授業⽤を含む通信機器整備、理数教育設備整備、専⾨⾼校の⾼度な実習設備整備、専⾨⼈材派遣等業務委託費 等を支援
- 現指定校(継続校)には750万円(補正予算で500万円に)
→1000校(補正予算で970校に)- 新指定校には1000万円
→250校(補正予算で200校に)- 重点類型には200万円追加
→110校(補正予算で50校に)- 教育委員会に1000万円
→47都道府県- 域内横断的取組
→情報交換、教員研修、成果発表など- 鹿野先生の解釈
- 採択校の継続に手厚い
- 教育委員会の関与
- 国の方向性がはっきりした
- 「入れただけではだめ」
- 新規校も募集している
- 複数年度に渡って継続?
- 現指定校が1000校。これから仮に4年続けて毎年250校ずつ新指定校を増やすと1000校。それにSSH(スーパーサイエンスハイスクール)が1000校あるので、4年続けると3000校になる。全国の高校5000校のうち、3000校になれば、カバー率は6割になる。
- DXハイスクール プラン集
- 一般社団法人 デジタル人材共創連盟(デジ連)が作成
- DXハイスクールの事業内容である「情報、数学等の教育を重視するカリキュラム」「ICTを活用した文理横断的な探究的な学びの強化」「生成AIを活用した講座プログラム」「数理・データサイエンスを可視化して学ぶ」「探究的な学びを深めるモバイルプロジェクター活用」「メタバースやブレインテックが作る情報空間とセキュリティ学習」「デジタルを活⽤した情報Ⅱ、探究や課外活動の推進」をテーマにプランを作成
複数年度に渡って継続させていく方向性なのがいいなと思っています。また、鹿野先生が「4年続けると3000校になる」とおっしゃっていましたが、こうして継続していくことは重要だなと思いました。
実践事例
岡山学芸館高等学校でのDXハイスクール事業の事例を、小笠原先生が紹介してくださいました。
- 探究と情報の2つの部分でDXハイスクールを。
- 情報科の先生は5名で、全日制1400人を教える。
- 副担当。専門の教員はいない。
- DXハイスクール1年目
- 情報Ⅰ
- ライフイズテックレッスンを活用(導入3年目)
- 課題研究(探究)
- 生徒たちは全員が23個のゼミのどれかに所属する
- 今回の予算で3Dプリンタなど機材を買っている。
- アイトラッキングを導入している。キッチンカーでPOPを作ると売上がどう変わるか、などの探究も。
- 学校全体
- 甲南大学の教授からの教員向け、生徒向けの研修を実施。
- デジタルハリウッドのデジタルクリエイティブ講座を導入
- DXハイスクール2年目
- 情報Ⅰの充実
- ライフイズテックレッスン、「最後の細かいところまでやってください」みたいな。データサイエンスのコンテンツも使ってみようか、と。
- 情報Ⅱの開講
- プログラミング、データサイエンスの講座もデジハリと共同でやっていこうか、と。
- 学校全体
- 教科書のインプットのところは映像で配信して、授業中は先生がいないと困ることをやりたいと思う。反転学習したい。
- 履修はしていないけど勉強したい、という生徒にとっても、映像を見ることができる学習環境づくりができる。
続いて、公立高校でのDXハイスクール事業の実践を鹿野先生が紹介してくださいました。公立高校については、まだモノが入っていない状況ですが、一般社団法人 デジタル人材共創連盟(デジ連)で対面でもオンラインでもサポートをしている、とのことでした。
「自走」するために必要なこと
続いて、各校がDXハイスクール事業に取り組む各校が自走するために必要な意識・行動について、小笠原先生と鹿野先生からコメントがありました。
- 小笠原先生
- 学校は「教員が教えなければいけない」という思いがある。その中で、デジタルハリウッドアカデミーは大きなきっかけだった。
- 専門的な知識を持つ先生が学校へ来て、もしくはオンラインで全10回くらいの講演をしてくれる。岡山学芸館高校の先生の仕事は生徒のサポートするという伴走。
- デジタルハリウッドアカデミーは、教員研修にもなると思った。自校の先生方がいずれできるようになる=自分たちで教えていくための土台になると思っている。
- 自走のための意識が必要。
- 鹿野先生
- 何年かかけてやるのは正しいと思う。情報Ⅰだけでやるのではなくて、連携させて、数年かけてやる。文部科学省的にはカリキュラムマネジメントをしてほしい。情報Ⅱも入ることで強力に進んでいく。
- ちゃんと教材を生徒たちに与えておくこと。勝手には学べない。
- 情報Ⅱの授業ビデオ40回分を東進と作っている。令和8年に向けて作成。
- 研修ビデオも先生向けに出そうよ、という話をしている。
- 情報Ⅱの入試は、大学の学部の先生が「入試で出す」と言えば出せる。情報系、理工系は選択で情報Ⅱを出すという世界にしたいと思っている。
鹿野先生がおっしゃっていた、情報Ⅰだけでやるのではなくて、探究も含めた他の教科と連携させるカリキュラムマネジメントが必要、というのはとても大事なポイントだと思いました。各教科との連携を進めていく学校をどのようにサポートしていくかが大事だなと感じました。
No.2に続きます。
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(為田)