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戸田市立芦原小学校 授業レポート(2025年3月7日)

 2025年3月7日に戸田市立芦原小学校を訪問し、松本明子 先生が担当する4年4組で「プレゼンテーションのコツ」を伝える授業をさせていただきました。4年4組の子どもたちは社会の授業で、埼玉県内の市を個人で調べて、その市の魅力をプレゼンテーションする活動をしているところで、スライドづくりの視点や友達同士でチェックするときの視点の持たせ方に役立つのではないかと、松本先生が声をかけてくださいました。

 授業の最初に、「プレゼンテーションは大人数に向けてするだけではなく、2人とか3人に対して何かを伝えることもプレゼンテーションです。だから、小学校でするプレゼンテーションだけでなく、中学生になっても、高校生になっても、大人になっても、プレゼンテーションはずっとすることになるし、コツを身につけたら上手にできるようになりますよ」ということを伝えました。
 その後で、電子黒板にロイロノート・スクールで「プレゼンテーションのコツ」を紹介していきました。ここで紹介した「プレゼンテーションのコツ」は、株式会社クリエイティブシフトが開発した「プレゼンテーション・パターン」を、「パターン・ランゲージ授業づくりパートナー」である弊社フューチャーインスティテュートが教材として使えるように設計したものです。
 「プレゼンテーション・パターン」は全部で34のパターンがありますが、そのなかから4年生にわかりやすく、実践しやすいパターンを選んで紹介していきます。「メインメッセージ」「ひとりひとりに」「適切な情報量」「ことば探し」「図のチカラ」などの8つのパターンが書かれたカードを1枚ずつロイロノート・スクールで大きく映して、パターンのタイトルを紹介し、そのパターンの意味と、どういうふうにプレゼンテーションに活用できそうか、ということを紹介していきました。1つのパターンだけを確実に覚えてほしいという方針ではなく、プレゼンテーションを聴くときやプレゼンテーションを自分でするときの評価の軸として多様なパターンを知ってほしかったので、あえて多様な8つのパターンを紹介しました。

 この後で、僕が子どもたちに対して簡単なプレゼンテーションをします。僕がしたプレゼンテーションを聞いて、さっき紹介した「プレゼンテーションのコツ」が使われていたかどうかを評価してもらいます。
 さっき紹介した8つの「プレゼンテーションのコツ」のカードを並べたワークシートを、ロイロノート・スクールで子どもたちに配布します。「できていたコツ」と「もっとよくするコツ」のそれぞれについて、パターン・カードを移動して、そこにコメントを書いてもらいました。

 プレゼンテーションをもっと良いものにしていくために、建設的なコメントをする練習をしてほしいと思ったので、ワークシートに取り組む前に、「僕はどちらかというと、“もっとよくするコツ”の方をたくさん教えてほしいです。それだけ僕のプレゼンが良くなるということだから。真剣に考えて書いてくれたことだったら、厳しいことを書いてくれてもうれしいです」と伝えました。
 カードを1枚1枚クリックして大きく表示して、そこに書かれた「プレゼンテーションのコツ」を読んで、僕がしたプレゼンテーションと重ね合わせて、コメントを具体的に書いていきます。この「プレゼンテーションのコツ」のカードが、子どもたちがどんなことをコメントすればいいのかを思いつくきっかけになっていると思います。

 少し時間をとって、みんなにロイロノート・スクールの提出箱にワークシートを提出してもらって、それを電子黒板に映して見ていきます。
 「もっとよくするためのコツ」のところでいちばん多かったのは、「ひとりひとりに」のパターン・カードを置いて「ぼくとは目が合いませんでした」「もっと教室全体を見た方がいいです」というコメントでした。やはり、教室で一人ひとりに向かって語りかけるプレゼンテーションにはなっていないんだな、ということがわかります。僕が「そうだね、目が合わないな、と思った人もいるよね。ごめんね。気をつけるね」と言うと、「でも、僕はけっこう目が合ったと思う」「こっちは見てくれてた気がした」とフォローをしてくれる子たちもいました。こうしたやりとりをしながら、「でも、目が合わなかった、という人がいるんだから、僕のプレゼンはそこに気をつければもっと良くなるね」と伝えます。みんなで協力してプレゼンテーションを良くしていくということを体験してほしいと思いました。

 他には、「早口だったから、ゆっくり話した方がいいかも」や「ちょっと笑いをとろうとしすぎです。もうちょっと真面目な方がいい」というコメントももらいました。全部がロイロノート・スクールのカードに書かれていなくても、他の人が書いたカードをみんなで見ることで、口頭で追加してくれる子もたくさんいます。

 こうして僕のプレゼンテーションに対してコメントをする場をもつことで、プレゼンテーションを見るときの「コツ」を知り、さらにそれをプレゼンテーションをした人に伝えることに慣れることができます。こうした機会を重ねていくことで、いずれはグループ内で「プレゼンテーションのコツ」のカードを使ってプレゼンテーションの内容をよりよくすることができるようになると思います。

 授業が終わった後で、子どもたちのふりかえりを先生から送ってもらいました。いくつかコメントを紹介したいと思います。

  • 授業をしてもらう前は、だいたい伝わってればいいかなぐらいしか思っていませんでしたが、為田先生の話を聞いて、こんなに「メインメッセージ」や、「図の力」などは大切なんだなと思いました。
  • 授業してもらう前は、発表する内容がなんとなく伝わっていたり、楽しく聞いてみればOKだと思いましたがちゃんとメインメッセージが伝わらないとだめなことがわかりました。
  • 文の量を気をつけたり、メリハリをつけることを意識して気をつけています。文を書くときに、文字の大きさにも気をつけています。
  • これからプレゼンを発表するときは真面目なときと笑ってほしいときなどのメリハリを付けていこうと思った。特に低学年の人たちはずっと真面目な話だと退屈するので必要だと思った。
  • 本当にこれで見る人の心を動かすことはできるのかな?と考えるようになりました。
  • 為田先生が教えてくれた8つのうちの「メインメッセージ」、「図の力」、「適切な情報量」、「メリハリ」を大事にしようと思った。上の4つのことを中学生や大人になっても忘れないようにする。
  • 勉強になったことは、プレゼンテーションでは聞きやすい声の大きさでやることだけが気をつけることだ、と最初は思っていましたが、プレゼンテーションの授業を受けて大切なことがたくさんあることがわかりました。

 また、この授業はたくさんの先生方に参観していただきました。先生方からのフィードバックも送っていただいたので、いくつか紹介したいと思います。

  • この授業は、子どもたちにとって非常に意味のあることだと思いました。メインメッセージを伝えるために内容を精選することなどは、前に出て発表する以外の場面でも、学校生活の中で多くあり、前にでて発表するプレゼンのためだけにということではなく、普段の場面でも同じように考えていくことが、子どもたちの表現力の向上につながると思いました。コツをよい点と改善点で分けていくところは、授業だけにとどまらず、朝の会で日直の人の1分間スピーチ(プレゼン)みたいな形で、日常的に継続して学級内で扱っていくこともいいなと思いました。
  • パターンランゲージを使うと、プレゼンの観点が明確になるため、プレゼンに対して、「何が、どうだったか」が自己評価、他者評価しやすいのがよいと思いました。実際に子どもたちの様子を見ていると、「図をもっと使った方がいい」や「メリハリをつける」「みんなを見る」「もっと左右を見てほしい。目が合った気がしない」などプレゼンに対して建設的で「もっとよくする」コツがどんどん出ていました。
  • 授業を参観させていただき、表現が苦手な児童もカードを選んで、なんでそのカードを選んだのかを考えられていたので、これが慣れてくるとプレゼンのコツが少しずつ分かるようになってくるのかなと思いました。この授業を受けたからできるようになるわけではないと思いますが、プレゼンをする前や作成途中に1年に1回でも繰り返していくことで、児童同士でもアドバイスができるようになるのではないかと思いました。
  • 後半の活動で、子どもたちが為田先生のプレゼンをもっとよりよくするためにはどうすればよいかと一生懸命考えていたのが印象的でした。聞き手を意識して、プレゼントするつもりで作ることの大切さがよくわかったと思うので、今後のプレゼンが楽しみです。
  • 為田さんのプレゼンに対して子どもが評価するといった内容を行うことで、プレゼンを客観視し、プレゼンをするのに何をポイントとして行えばよいのかといったことを子ども自身が感じることができ、実践の時にイメージしやすく、活かすことができるので面白いなと感じました。

 この授業の次の時間に子どもたちが社会のプレゼンテーションの資料作りを実際にしたときに、自分の作った資料を見せて「伝えたかったメインメッセージが伝わっていた」と言う子がいたり、「今日、特に気をつけた点は、ことば探しです」とふりかえりカードに書いている子がいたりした、ということを松本先生から後日伺いました。
 自分がプレゼンテーションをするときに「プレゼンテーションのコツ」を使うことはもちろん、友達がプレゼンテーションをするときにも「プレゼンテーションのコツ」を使って建設的なコメントをしてあげるようになったらいいなと思います。
 「プレゼンテーションのコツ」について知ることで、人に何かを伝えることの楽しさを知ってもらえたらいいなと思います。

(為田)