教育ICTリサーチ ブログ

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淑徳小学校 淑徳アルファ カズトロジー 授業レポート No.1(2025年1月〜3月)

 弊社フューチャーインスティテュートは淑徳小学校放課後クラブ「淑徳アルファ」内で、コンピュータを使ってさまざまな活動を行う授業「カズトロジー」を実施しています。3学期に、3年生のクラスではドローンTello EDUを使って動画を撮影し、その動画をCanvaで編集しました。
 子どもたちが新しいテクノロジーを実際に使う場面をできるだけ作りたいと思って、ドローンを短い時間でもいいので、自分の手で操縦する機会を作っています。ドローン1台とバッテリー2つ(26分飛行が可能)を使えば、3年生の3学期のクラスは7人なので一人3分ずつ順番にドローンをiPadで操縦できます。

1回目:ドローンを屋内で練習する

 1回目の授業では、教室や廊下など屋内でドローンを自分たちで飛ばしてもらいます。順番を自分たちで決めて、離陸・着陸と前進・後退・上昇・下降などの簡単な操作だけを教えてドローンを飛ばしてもらいます。最初は「どうやったらいいかわからない…」と不安そうな子どもたちでしたが、すぐに慣れて飛ばせるようになりました。
 子どもたちは、自分がドローンを飛ばしている時間以外にも、ドローンがどんなふうに飛ぶのかを見たり、操縦している子のiPad画面を見たりしながら、自分がドローンを飛ばすときのイメージトレーニングをしていたようでした。こうした活動は、少人数のクラスだからこそできることです。

 壁や天井にぶつけてしまってドローンが墜落することも、地面に落ちた衝撃でドローンのプロペラが外れてしまうこともあります。一度壁や天井にぶつけてしまうと、「僕、ドローン苦手だから…」と不安に思ってしまう子もいます。でも、そうした失敗をすることも良い経験だと思っています。この日1回だけでなく、次の週以降も継続的にドローンを飛ばすので、「また来週は上手にできるよ!」と言うようにしています。
 実際、一度失敗してしまった子も続けてドローンを飛ばすことで、翌週はより慎重に飛ばせるようになっていました。このような体験が「チャレンジしてみよう」「最初は失敗しても、次はちゃんとできるようになる」という姿勢を育てると思っているので、チャレンジの場をクラスで共有するように授業を設計しています。

2回目~4回目:ドローンで動画を撮影する

 2回目から4回目の授業でも、一人3分ずつドローンを操縦してもらいます。1回目の授業で操縦の仕方の基礎がわかっているので、2回目以降は「こんな飛ばし方をしてみたい」というふうにイメージをもって教室に来る子もいました。
 1回目の授業と違うのは、ドローンのカメラで見えている風景を撮影することです。iPadでドローンを動画録画モードにしてから子どもにiPadを渡して、離陸の前に録画をスタートしてもらい、3分の持ち時間の最後に着陸させたら録画をストップしてもらいます。これで、一人あたり3分ずつの動画を撮影することができます。

 ドローンの撮影は、最初はいつも授業で使っているコンピュータ室で行いました。みんなで並べた椅子の下を、ドローンにくぐり抜けさせたりしていました。こうしてみんなでワイワイと撮影を楽しむことがいいと思っています。失敗もだんだんと減っていきますが、子どもたちは失敗したときの動画の方もおもしろがっていることが多いです。

 コンピュータ室から隣の図書室へドローンを飛ばしてみたり、教室や階段を飛ばしてみたり、子どもたちはいろいろな場所でいろいろなドローンの飛ばし方を試していきます。
 階段を降りるときには「下に下りるボタンと前に進むボタンを同時に押したら、斜めに階段を降りる感じで飛ぶんじゃない?」と仮説を立ててきた子は、実際にその通りに操作したらドローンが斜め下に向かって飛ぶことがわかって、「ほらね!やっぱりね!」と言っていました。週に1回しかない授業なので、前回の操作のときに思いついたアイデアを、家でイメージトレーニングして考えてきた操作だったようです。実際にやってみて確認する、こういう場面が見られるのも、「ドローンを飛ばす」という活動自体がすごく魅力的だからだと思っています。

 風がなく晴れている日には、校庭へ出てドローンを飛ばすこともしてみました。テレビ番組などでドローンで撮影された映像を見ている子どもたちは、自分でもドローンで同じような景色を撮影することができるのを楽しんでいました。

5回目~8回目:撮影した動画をCanvaで編集する

 5回目の授業からは、ドローンで撮影した動画を素材にして、子どもたちはCanvaで動画を編集します。子どもたちがドローンで撮影した素材をCanvaのフォルダにアップロードしておいて、一人ひとり自分のコンピュータでドローンで撮影した動画を見てもらいます。その後で、どの動画を編集するかを決めて、使いたい動画をドラッグしてタイムラインに入れていきます。
 一人がドローンを飛ばしている3分間をずっと録画していたので、だいたい3分弱の動画が最初の素材になります。要らないところの前後でページを分割して不要なところはページを削除する方法を説明すると、みんなそれぞれに自分が選んだ動画から不要な部分を削除していきます。操作を覚えてくると、新しく動画をタイムラインに入れて他の人が撮影した動画とつなげる子も出てきました。

 6回目の授業では、テキストボックスを動画の上に入力して、字幕やセリフをつける方法を説明しました。子どもたちはテレビ番組やYouTube動画などで、字幕をたくさん見ているので、タイミングよく字幕をつけることが上手だと思います。
 最初はページ全体にテキストが表示されるようにして、タイムラインで表示するタイミングを調整したり、字幕の色を見やすいように変更したりしていきます。
 これらの操作方法がわかってくると、ほぼ私からの指示を出さなくても、不要な部分を削除して、字幕を入れては何度も見返して再調整をする、ということが自分たちでできるようになってきます。「動画編集、おもしろいけど、めんどい…」という声もあがりはじめますが、黙々とやっていきます。

 字幕やセリフがある程度入力できたら、タイムラインにオーディオを入れて、BGMや効果音をつけられることも説明しました。おもしろい効果音を見つけてタイミングを合わせて設定したりする子もいます。動画を見せ合う時間もだんだん増えてきます。

 自分たちで撮影した動画を、自分たちで編集して、みんなで見合うという体験は、作ることの楽しさを感じられるものだと思います。動画を作るスキルというだけでなく、ものづくりの一つの選択肢として、この体験をもって4年生に進級してもらえたらいいなと思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)