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さいたま市立上小小学校 校内研修レポート(2025年5月21日)

 2025年5月21日に さいたま市立上小小学校を訪問し、指導者用デジタル教科書の活用研修を行いました。この研修は、2024年12月に行った学習者用デジタル教科書『新しい算数』体験&授業づくりワークショップに参加してくださった新井弓翔 先生から「勤務校でも東京書籍のデジタル教科書が使えるので、先生方に研修をしてもらえないですか」とご連絡をいただいて実現したものです。

 東京書籍株式会社 DX企画部の清遠和弘さんに講師を務めていただきました。30分間という短い時間でしたが、研修を受けながら実際にデジタル教科書に触ってもらえるように、先生方にタブレットPCを会場へ持ってきていただきました。

 清遠さんは、指導者用デジタル教科書の基本構成として「教科書紙面」「デジタルコンテンツ」「ツール」の3要素を紹介します。
 デジタル教科書にはいろいろな機能があるがゆえに複雑に感じる先生も多いと思いますが、まずは「教科書紙面」と「デジタルコンテンツ」を使って、授業をよりわかりやすくなるようにするところから始めたらいい、ということを伝えます。

 清遠さんは、指導者用デジタル教科書の活用のポイントとして、以下の5項目を紹介してくれました。

  1. 教科書の本文や図を拡大して、課題を焦点化
  2. アニメーションや動画でわかりやすく説明
  3. ふりかえりや繰り返しで確実に知識・技能を定着
  4. 試行錯誤により、思考力・表現力を高める
  5. 学級や子どもたちの実態に応じてカスタマイズする

 上小小学校の先生方は、東京書籍の算数の指導者用デジタル教科書のIDをもっています。清遠さんは、上小小学校の先生方が授業ですぐに使えるコンテンツを紹介しながら、活用のポイントを解説していきます。

 「2. アニメーションや動画でわかりやすく説明」の項目については、「円の面積の求め方」を紹介するアニメーションを見せてくれました。
 円をどんどん細かく等分して並べて平行四辺形になることをアニメーションで示して、円の面積の求め方を考える教材です。円を細かく等分するというのが、アニメーションでわかりやすく示されます。また、何等分するかを設定することもできるので、「どんどん細かく等分」することを子どもたちと一緒に見ることができます。これは紙に印刷されている図ではわかりにくく、デジタルでアニメーションになっている意義があるところです。

 「3. ふりかえりや繰り返しで確実に知識・技能を定着」については、ドリルや補充問題があることを紹介しました。「算数は、学級内での子どもたちの進度差が大きい教科だといわれています。だからこそ、それぞれの子どもたちが自分にあった問題に取り組めるように、指導者用デジタル教科書から、ドリルや補充問題を使ってほしい」と清遠さんは先生方に伝えます。

 「4. 試行錯誤により、思考力・表現力を高める」については、三角形の内角の和が180°になることを、いろいろな三角形を作って試してみることができることをシミュレーション教材を紹介しました。
 清遠さんは「いろんな三角形を作ってみて、と子どもたちに言うと、すごく極端な例をやってみちゃう子がいますよね」と言って、極端に平たい三角形を作って、それでも内角の和は180°になるかを3つの内角を動かして見せてくれました。こうしたことは、デジタル教材だからこそできることです。
 極端に変な三角形でも内角の和が180°になることをみんなで確認して、ここで終わらずに「どうしてだろう?」と子どもたちに考えてもらうのが先生の仕事です、と清遠さんは言います。

 研修の中で清遠さんの話を聴いていて、たくさんの先生方が手元のタブレットPCですぐに試していたのは、「マイ教科書エディタ」の機能でした。これは、「5. 学級や子どもたちの実態に応じてカスタマイズする」のところで紹介されたのですが、教科書の問題文や図を自由に使って、文章を自分で書き換えることで、教科書に載っている算数の問題を子どもたちの身近な話題にできます。

 参加してくれた先生方からの感想をいくつか紹介します。

  • デジタル教科書へのアクセス方法が分かった
  • 効果的な活用の仕方を知ることができてよかった。毎回使うことができなくても、使うことで子どもたちの理解が深まるのであれば、積極的に使っていきたい。
  • 知らなかったコンテンツや授業で活用できそうなものを知ることができたので良かったです。
  • デジタル教科書の知らなかった活用方法を知ることができました。
  • 実際に取り組むことができたので、イメージすることができました。ありがとうございました。
  • 便利な使い方を教えていただきよかったです。
  • 知らなかったエディター機能を知れてよかった。
  • デジタル教科書の使い方があまりわからなかったが、これからの授業で様々なツールを使おうと思った。

 研修の最後に清遠さんは、「デジタル教科書はツールでしかない」と言っていました。デジタル教科書を子どもたちの算数の学習にどう役立てていくか、どんな使い方ができるかを考えるところは先生方にしかできない仕事です。デジタル教科書が、先生方の授業作りに役立つように先生方に感じてもらえたらいいなと思います。

(為田)