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宮城県宮城野高等学校 授業レポート No.1(2025年5月29日)

 2025年5月29日に宮城県宮城野高等学校を訪問し、ビジュアルデザインを専攻している美術科の2年生と3年生を対象とした「キャラクター概論」の授業を参観させていただきました。
 宮城野高校は2025年3月にデジタルハリウッドと「デジタルクリエイティブ教育に係る連携協定」を締結しています。この日の授業はデジタルハリウッドと連携した「現役のデジタルクリエイター・エンジニアによる特別授業」として、イラストレーター・キャラクターデザイナーとして活躍している北沢直樹 先生が講師を務めました。

 3時間目と4時間目の2コマ90分間の授業はCG実習室で行われました。授業の最初に北沢先生は、これまでに手掛けてきたイラストやキャラクターを紹介します。参加した生徒たちのほとんどは、自分でもデジタルで絵を描いているそうで、現役のイラストレーター・キャラクターデザイナーによる授業を楽しみにしていたそうです。

 その後で、「イラストはほぼ未経験なのですが、寿司グッズを作りたいと思っています。ありきたりにならなく、手に取ってもらえるようなキャラクターにするためにはどのような工夫をしたらいいですか?」という相談に対して、北沢先生がキャラクター作りの工夫を順序立てて説明していきます。

 握り寿司のキャラクターを画面に映して、北沢先生は、「このキャラクターに意外性を加えていきましょう」と言って、キャラクターにアイデアを加えて描いたイラストをたくさん見せていきます。段階的にキャラクターが変わっていく様子を見せながら、どんなふうに考えて描いたのか解説もしてくれました。

 こうしてアイデアが広がって、北沢先生が見せるお寿司のキャラクターのバリエーションはどんどん増えていきます。北沢先生の授業を聴いていて感じたのは、とにかくたくさん絵を描いている、ということです。少しのアイデアから新しくキャラクターのイラストを描いていくので、どんどんバリエーションが増えていきます。
 この「量が質を生む」感じの良さを伝えることが、学校の授業ではなかなか難しいと僕は感じています。とにかくたくさん描くところから質が良い作品ができる、ということを、現役のイラストレーター・キャラクターデザイナーとして活躍している北沢先生が見せてくれたのはとても良かったと思いました。

 アイデアを加えてお寿司のキャラクターが広がっていき、最終的には「軍艦巻きが車になって走り回ったらおもしろいなぁ」というアイデアから軍カーというキャラクターが生まれたそうです。この軍カーは、カプセルトイ『軍艦巻きプルバックカー 軍カー』として、2025年8月に全5種類で発売されるそうです。

 北沢先生は、キャラクターをより魅力的にする方法として「意外性を加える」以外にも「ターゲットを考えたグッズを考える」「見た目を検討する」という方法を紹介してくれました。

 北沢先生が描いて世に出ているキャラクターの本物の制作データも、自分のMacの画面で開いて映して見せてくれました。本物の制作データを見ながら解説を聴くことは、生徒たちにとって現場のノウハウや工夫を知ることができる貴重な機会になったと思います。

 アイデアの広げ方だけでなく、Adobe Illustratorでキャラクターのイラストを描く過程を動画で見せてくれたり、実際にその場でデモンストレーションして、操作方法をはじめ制作の工夫についても紹介されました。
 「何もないところからは描きにくい。自分で描いた下絵をトレースすると描きやすい」「イラストは半分描いて、それをコピペすればOK」「ショートカットを覚えると、使いやすくなります」「ハンドルを操作するときに、スペースキーを使うと便利です」「下のテンプレート レイヤーから色を拾う」「テンプレートは色を変えるとわかりやすい」などのように、作品を作るときのちょっとしたコツは、生徒たちにとってすぐに試してみることができるノウハウがたくさんあったと思います。

 No.2に続きます。
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(為田)