教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

川越市立高階小学校 校内研修レポート(2025年6月9日)

 2025年6月9日に川越市立高階小学校の校内研修で講師を務めさせていただきました。川越市の小学校を訪問するのははじめてだったので、川越市の学校でどのようにICTが活用されているのかを調べると、川越市教育委員会が公開している「川越市小・中学生学力向上プラン」「ICTの力でe-授業を実現しよう」の2つのドキュメントが見つかったので読んでみました。

 「川越市小・中学生学力向上プラン」では、「川越授業スタンダード」が示されていて、「対話・協働(学び合い)」と「練習・反復・繰り返し」を適切に組み合わせることと書かれています。
 子どもたちにとっても先生方にとっても、「川越授業スタンダード」のなかにある「対話・協働」をする環境を作るために、ICTを活用するというのは有効だと思います。そうした授業事例を校内研修で紹介しようと考えました。

 「ICTの力でe-授業を実現しよう」では、「e-授業(いい授業)」を実現するために5つのレベルが示されています。レベル2までは、川越授業スタンダードに則った授業を行い、そのうえで教育がICTを使う授業をするレベル3、児童生徒がICTを使う授業をするレベル4とレベルアップしていきます。最後に目指すレベル5は、「児童生徒がICTを使用した 情報共有や情報分析を通して 主体的・対話的で深い学びを実現している授業」と書かれています。
 この図を見て、レベル3からレベル5にかけて先生方がイメージできそうな授業事例を校内研修で紹介しようと考えました。

校内研修前に授業を参観させていただきました

 「川越市小・中学生学力向上プラン」「ICTの力でe-授業を実現しよう」を読んで、紹介した授業事例をまとめましたが、高階小学校で現在どのようにICTを活用されているかを見て最後の調整をするために、伊藤和三 校長先生にお願いをして、プールの授業で教室にいなかった4年生以外の全クラスの教室を回って授業を参観させていただきました。

 授業を参観させていただいて思ったのは、先生と子どもたちとのやりとりがしっかりある授業が多いな、ということです。
 先生が指導者用デジタル教科書を大型モニターに映して、教科書の紙面やデジタルコンテンツを見せて子どもたちに興味関心をもってもらい、そこから授業へ入っていくという形式の授業が多くされていました。
 また、NHK for Schoolを使ってみんなで動画を見ている授業もありました。こうしてしっかり興味をもってもらうことで、その後の授業内での先生と子どもたちのやりとりが活発になると思います。

 川越市の小学校では子どもたちは一人1台のChromebookを使っています。GoogleクラスルームやGoogleスライドを使っているクラスもありました。
 「スイミー」を読んで、好きな場面をGoogleスライドでまとめているクラスでは、キーボード入力だけでなく、手書きで日本語入力をしたり、さまざまな方法でスライドに文章を入力していました。

校内研修「ICTを活用した授業づくり」

 授業を参観させていただいた後の校内研修では、「ICTを活用した授業づくり」をテーマに話をさせていただきました。
 「川越授業スタンダード」のなかにある「対話・協働」をする環境をICTを活用して作っている授業事例を紹介していきました。Chromebookでない学校も、授業支援ツールを使っている学校もありますが、そうした差異よりも、「どういう目的でICTを活用しているのか」に着目してもらいたいということも先生方にお話をしました。
 授業事例を紹介した後で、総括的に「教育ICT利活用の目的9類型」を紹介しました。

 高階小学校では、授業支援ツールを活用していないようだったので、いま先生方も子どもたちもよく使っているGoogleスライドで「対話・協働」の環境を作る一つの方法として、Googleスライドで共有スライドを作って、1ページに1人ずつ割り当てて共有して、グリッドビューでクラス全員分が見えるようにしてみたらどうでしょうか、という提案もしました。

 先生方からは、「Googleスライドを共同編集にすると、他の子が書いた文章を消してしまったりするんですけど…」と、授業で試したことがあるからこその質問も出ました。こういう実践してみての経験からくる質問が出ることが校内研修では大事だと思っています。
 僕は、子どもたちに「元に戻す」機能を教えましょう、と回答しました。どのアプリでも「元に戻す」ボタンはあるので、「あれ?おかしいな?」となったときに、すぐに「先生~!」と手を挙げて呼ぶのではなく、あわてずにまず「元に戻す」ボタンを押してみることを習慣化するといいと思っています。だいたい、「あれ?変になった…」と思ってから、いろいろと操作してみてよくわからなくなってから困ってしまう子どもたちが多いと思います。変になったときにすぐに「元に戻す」ボタンを押す習慣ができれば、共同編集をするときに教室のあちこちで挙がる助けを求める手の数は減らせるのではないかと思います。
 僕は自分で教えている淑徳小学校の小学校1年生の「カズトロジー」の授業でも、まず最初に「もとに戻す」を教えます。4月に戸田市立戸田第一小学校でタブレット開きの授業をお手伝いしたときにも、「失敗しても大丈夫だから、心配しないでいろいろやってね」と説明をしました。

 研修後に、会場の片づけがされている間に僕のところへ来て、「こういうのってできないんですか?」と質問をしてくださる先生もいました。
 こういう「じゃあ、こういうのってできるんですか?」とアクションが先生方から出てくるのが、研修のひとつのゴールだと思っています。これは別に講師としている僕の前でなくてもよくて、職員室に戻って、「為田さんはああ言ってたけどさ…」という感じで話に出るのでも全然いいと思うのです。
 校内研修で紹介したたくさんの学校の授業実践と、川越市が目指している「川越授業スタンダード」のなかにある「対話・協働」が混ざりあって、先生方も子どもたちもICTを活用する場面が増えていけばいいなと思いました。

(為田)