教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『遊べる、学べる、役立てる 地理院地図の深掘り』

 地図研究家・今尾恵介さんの『遊べる、学べる、役立てる 地理院地図の深掘り』を読みました。GoogleマップやGoogle Earthを使っている授業を見ることも多いですが、地理院地図はまた違う使い方ができそうだと思って、授業アイデアの引き出しを増やすために読みました。
 『遊べる、学べる、役立てる 地理院地図の深掘り』は、実際の地理院地図の操作画面や、地理院地図を使って見られるさまざまな図をたくさん見られるのがとてもいいです。読書メモをいくつか簡単に共有します。

 最初に、地理院地図の利点が書かれています。このあたり、学校の先生方には授業のために作ってみたい、というアイデアに繋がるかもしれません。

地理院地図の利点の一つに、複数の地図を用途に合わせてセレクトし、重ね合わせて表現できることが挙げられる。その「見せ方」は、100人いたら100通りとも言えるもの。試行錯誤を重ねて、自分にあったやり方を編み出してほしい。(p.12)

 地理院地図は、「標準地図」「単色地図」「白地図」「English」「写真」という5種類のベースの地図があって、その上に、年代別の写真、標高・土地の凹凸、土地の成り立ち・土地利用などを重ねることができます。

 たくさんの地図を見ることができるのが本当に楽しいです。「ブラタモリ」でよく登場する赤色立体地図も登場します。

河岸段丘の表現も赤色立体地図の得意とするところだ。新潟県・津南町付近の信濃川右岸(南側)を見ると、3~5段に及ぶ大きな段丘がある。それを「傾斜量図」で表現すると、急激な黒い段丘崖と平坦な白い段丘面の対比が明瞭だが、高低差が読み取りにくい。「陰影起伏図」は北西から光が当たった想定のため、ちょうど川の流れる方向が南西から北東なので北西側の崖線が明るく、いまひとつ地形がはっきりしない。そこで「赤色立体地図」で表現したところ、地形の凹凸がわかりやすくなった。(p.118)

 いろいろとやってみたくなります。僕の大好きな、国分寺駅から武蔵小金井駅の南側へとつながっている国分寺崖線の端っこも見てみました。

 いろいろできるのが本当に楽しいです、地理院地図。こんな使い方も紹介されていました。

地理院地図では地名や駅名、公共施設などの検索ができる。画面の左上にある検索バーに「鎌倉」と入力すると、検索結果が「169件中169件表示」と表示されると同時に、青い旗が全国に散らばった状態で示される。(p.169)

 ちょっと変わった地名とかが、全国にどれくらい分布しているのかを地図上でわかりやすく探せそうです。「鎌倉」の事例もそうですが、「赤坂」とかもなんかたくさんあるよな…と思って検索したら410件。「大手町」で検索したら180件。おもしろい。

 他に紹介されていた事例も、少しずつ試してみたいと思ったのですが、 検索してみたらすでにいくつかはこのブログで紹介していました。読み直しつつ、地理院地図を触ってみたいと思います。

blog.ict-in-education.jp

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 最後におまけで、「単なる「地形図のデジタル化」ではない」というコラムで書かれていた内容を紹介します。

測量精度向上のために90年代から電子基準点の設置が進められ、三角点に取って代わる存在となっている。また、近年の国際的なデジタル化の進展に伴う準拠回転楕円体の変更――世界測地系への変更も行われた。平成21(2009)年度から、デジタルデータを中心とした基本図体系に移行。法的には「デジタル社会形成基本法」(令和3年法律第35号)の第31条が定める「公的基礎情報データベース」に指定されている。これをもって、紙の地形図の位置づけはデータの出力形態のひとつに変わった。大きな変化である。「地理院地図」は誰もがインターネット経由により無償でアクセスできる地図情報となり、本書でその一端を紹介したように、単なる「地形図のデジタル化」をはるかに超えて、多種多様な地図情報を利用するためのプラットフォームとなった。そして今日も着々と進化し続けている。(p.87-88)

 「これをもって、紙の地形図の位置づけはデータの出力形態のひとつに変わった」というさらっと書かれたこの文章、DXとか考えるときに読み返したい文章だな、と思いました。

maps.gsi.go.jp

(為田)