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ひとり読書会:『新しい教育評価入門 人を育てる評価のために [増補版]』No.1 「はじめに」「序章 教育評価とは何か」

 西岡加名恵 先生・石井英真 先生・田中耕治 先生 編『新しい教育評価入門 人を育てる評価のために [増補版]』を読みました。ものすごく長い時間をかけてじっくり読んでいましたが、アンダーラインをたくさん引きながら何度か読み直して、とても勉強になりました。
 今回は、「はじめに」と「序章 教育評価とは何か」の読書メモを共有したいと思います。

はじめに

 僕は仕事で先生方と話すときに、先生方が「評価」をとても重視していると感じることが多いです。先生方のサポートを学校という場でするときに、「評価」は避けては通れないなと思っています。そう思ってこの本を読み始めたのですが、「はじめに」のところで、この本のメインテーマである「評価」について書かれていました。

教育学で定義される「評価」は、成績づけにとどまるものではない。
教育学でいう「評価」は、まさしく、子どもの姿を捉え、教育実践の改善に活かす営みそのものである。教育によってどのように子どもたちを育てたいのかを考え、さまざまな方法で成長の姿が発揮されるように促す。困難に直面していれば、教師と子どもが、さらにはさまざまな関係者が、ともに乗り越える手立てを考え、乗り越えられたときにはその喜びを共有する。本書では、そういった「教育評価」本来のあり方を提案することをめざしている。(p.ii)

 「執筆にあたって心がけた3点」(p.ii)を読んで、「これは頑張って読もう!」と思ったのでした。

執筆にあたって心がけた3点:

  1. 教育評価に関わって歴史的に蓄積されてきた実践の成果とともに、最新の研究動向をふまえた内容にすること。
  2. 実践を進める際に陥りがちな問題点を指摘するとともに、どのようにしてそれらの問題点を克服できるのかの展望を示すこと。
  3. 教育評価に関わるさまざまな局面を視野に入れること。

序章 教育評価とは何か

 「序章 教育評価とは何か」では、最初に「教育評価」の目的とは何か、というところから紹介されていました。

教育評価といえば、一般的には、教師がテストを行い、通知表や指導要録をつける行為として捉えられがちであろう(略)しかし、本来、教育評価という営みは、教育がうまくいっているかどうかの実態を把握し、教育の改善に役立てるものとして捉えられるべきものである。このような教育評価の概念は歴史的に、能力を固定的なものとして捉える「測定論」を批判するところから成立してきた。
教育評価を行うためには、教育目的と教育目標を吟味し、それに適した評価方法を採用することが必要となる。(p.2)

 「本来、教育評価という営みは、教育がうまくいっているかどうかの実態を把握し、教育の改善に役立てるものとして捉えられるべきもの」というところ、大事なポイントだと思います。評価が、児童生徒がどれくらいできるようになったか、を見るのではなく、「教育がうまくいっているかどうか=授業がうまくいっているかどうか」を見るためのものだ、という考え方に納得がいきます。
 それと最後にある「教育評価を行うためには、教育目的と教育目標を吟味し、それに適した評価方法を採用することが必要」というところも、そのとおりだなあ、と思いながら読んでいました。教育目的・教育目標を明確にしてこそ、「それに適した評価方法」が決まります。「評価方法」に、どんなバリエーションがあるのかを知るために読み進めていきます。

本来、教育評価は、教育がうまくいっているかどうかを把握し、そこで捉えられた実態をふまえて教育を改善する営みとして定義すべきものである。(p.3)

 再び、「教育評価は、教育がうまくいっているかどうか」を見るためのもので、「教育を改善する営みとして」活用するのがいいのだ、と書かれていました。

 教育評価の機能が3つに整理されていました。「診断的評価」「形成的評価」「総括的評価」の名前はもちろん知っていて仕事のミーティングで使うこともあるのですが、きちんと学んだことがないので整理されていてよかったです。

p.6
「教育を評価する営みとして教育評価を位置づけた場合、その機能は3つに分化して捉えられることになる。(p.6)

  • 診断的評価(diagnostic assessment)
    • 教育評価においては、教育による変化を捉えることが必要。そのために、働きかける前の子どもの状態を把握しておくことが必要。
    • 入学当初、学年当初、単元開始時などに、子どもの学力実態や生活経験が評価される→これから学習する内容の指導計画に役立てられる。
  • 形成的評価(formative assessment)
    • 指導の途中で行われる評価。
    • 意図した通りの教育効果がもたらされているかを確認する。もたらされていない場合には、即時修正が図られる。期待以上の効果が見られる場合は、目標を再設定し、さらに高いレベルを目指すこともありえる。
    • 教育実践の改善に直接つながるので、教育評価の核心部分に位置している。
  • 総括的評価(summative assessment)
    • 単元末や学期末、年度末といった学習の締めくくりに、学習の到達点を把握する。
    • 「成績」(評定)は、総括的評価の情報に基づいてつけられる。
    • 目標に準拠して行われる教育評価においては、総括的評価についても教育実践の反省に活かす視点をもっておくことが重要。

 さらに、形成的評価や総括的評価をより具体的に表す再定義もされていると書かれていました。

なお、近年では、形成的評価を「学習のための評価」(assessment for learning)、総括的評価を「学習の評価」(assessment of learning)として再定義する動向もみられる。そこでは、学習改善のために子ども自身が評価活動へ参加することが強調され、さらには評価活動自体を学習の機会として捉える理論(「学習としての評価」:assessment as learning)も登場している。これらの理論的展開をふまえつつ、教育者が行う指導と評価の充実を図っていくことが求められている。(p.7)

 学力評価のさまざまな方法として、「パフォーマンス評価」と「ポートフォリオ評価」についても、まとめられていました(p.12)。ルーブリック(rubric:評価指標)は、あちこちで登場しているけれど、「そういうことなの!?」と思うことも多いので、この機会に勉強したいです(後ろの章でたくさん登場していましたので、楽しみ!)。

  • パフォーマンス評価
    • 知識やスキルを使いこなす(活用・応用・統合する)ことを求める問題や課題などへの取り組みを通して評価する評価方法の総称。
    • さまざまな知識やスキルを総合して使いこなすことを求めるような複雑な課題を、パフォーマンス課題という。
    • パフォーマンス課題には、レポートなどの完成作品(product)を評価するものや、プレゼンテーションなど実現(狭義のperformance)を評価するものなどが含まれる。
    • パフォーマンス課題については、○か✕かで採点することができない。そこで、ルーブリック(rubric:評価指標)と呼ばれる評価基準法を用いることになる。
  • ポートフォリオ評価
    • ポートフォリオづくりを通して、子どもが自らの学習のあり方について自己評価することを促すとともに、教師も子どもの学習活動と自らの教育活動を評価するアプローチ。
    • ポートフォリオとは、子どもの作品(work)や自己評価の記録、教師の指導と評価の記録などの資料と、それらを系統的に蓄積していくファイルや箱などの両方を意味している。

 パフォーマンス評価は、授業づくりのなかに組み込みたいなと思っているので勉強になりました。

 まだ序章なのに盛りだくさん…。何回かに分けて読書メモを共有していきます。
 先生方には基本的なことばかりなのかも…と思っていますが、自分のために備忘録的に載せている感じもあります。僕の興味のあることをこうして載せておけば、「こういう本を読んだらいいよ」と教えてもらえたりもするかもしれないと期待しています。

 次の章へ進むのも楽しみです!No.2へ続きます。

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(為田)