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就実小学校 授業レポート No.1(2025年9月19日)

 2025年9月19日に就実小学校を訪問し、Erwin Chia先生が担当する1年A組のArtの授業を参観させていただきました。この日は2時間続きで、ゴッホの絵をモチーフにして、クレヨンでいろんな線を使って絵を描く授業でした。
 就実小学校のArtの授業は、「就実型イマージョン教育」で行われていて、Chia先生はオールイングリッシュで授業を行います。Artのほかにも、English・Math・P.E.の授業がオールイングリッシュで行われています。
 
 授業の最初に、Chia先生は子どもたちと一緒にいろいろな線を表現するボキャブラリーを紹介していきます。絵を描くときに使う曲線やジグザグ、波線、太線、直線、渦巻き、点線などを描いたカードと、「Curved」「ZigZag」「Thick」「Straight」などの英単語のカードを並べて貼って子どもたちと一緒に発音していきます。
 ここで出てきたこれらのボキャブラリーは、この日の授業でゴッホの作品を見たり、自分の絵を描いたりするなかで、実践的な英語コミュニケーションとして何度も繰り返して使われていきます。

 その後で、ゴッホの作品を子どもたちと一緒に鑑賞します。これまでに学んだ「Lines」「Color」「Shapes」「Crayon」などに加えて、新しく「Artist」と「Movement」などの英単語をChia先生が紹介して、ゴッホというArtistとその作品に親しんでいきます。

 Chia先生のiPadでGoogle Arts & Cultureを起動して、ゴッホの作品をスクリーンに映して、子どもたちと一緒に見てみます。絵を映しながら、「これ、どれくらいの大きさだと思う?」とChia先生が訊くと、子どもたちは「これくらい!」と手を大きく広げてみせます。

 「これくらいの大きさだよ」とChia先生は言って、教室にARでゴッホの作品を出現させました。実物ではなく作品として絵を見るときにはどうしても大きさを実感することは難しいですが、ARを使うことで作品の大きさを子どもたちが実感できます。

 Chia先生が歩いてARの絵に近づいて見てみると、ゴッホの絵のあちこちにさっき復習した「Curved(曲線)」や「Dash(点線)」がたくさん描かれていることがわかります。Chia先生が「What can you see?」と質問すると、子どもたちからは「Dash line and Curved line.」と言葉が返ってきます。
 オールイングリッシュの授業ではありますが、子どもたち全員が英語に堪能なわけではありません。Chia先生から「What colors can you see?」と質問したときには、「I can see…?」と途中まで言ってあげて、子どもたちから「I can see blue, white and black.」「yellow, blue…」のような答えが返ってくるように待ってあげていました。
 英語でのコミュニケーションが、ARで絵を楽しむことによってドライブされている感じがあります。Chia先生が、「ここにgreenもあるよ」というふうにズームアップして見せてあげると「ほんとだー!」と子どもたちから声があがります。

 ゴッホの絵をARで楽しんだ後は、子どもたちに自分のiPadでQRコードを読み取ってもらって、YouTubeでゴッホの「星月夜(The starry night)」のVR体験ができる動画へアクセスします。
 この動画を使って、子どもたちに自分たちで絵の世界の中に入ってもらう体験をします。iPadを持って右を向けば、見えている絵の世界も右側を向きます。Chia先生が「Look up the sky.」と言うとみんなが空にiPadをかざします。「家の中に入れた!」という子もいます。子どもたちはiPadを持ちながら教室の中を歩いて、ゴッホの絵の世界の中に入り込んでいきます。

 VR体験をし終わった後、自分の席に戻ってもらって、Chia先生は「beautifulだと思った?
Can you tell me what is beautiful?」と子どもたちに問いかけます。子どもたちからは、「Star!」「Moon!」という返事が返ってきていました。

 ここでChia先生は「Let's finish part 1.」と言い、1時間目が終わって休み時間に入ります。休み時間に、Chia先生はYouTubeで「Art with Mati and Dada」のゴッホの回を、プロジェクタで映して再生していました。
 休み時間なのでみんなが教室にいるわけではありませんが、興味をもって見ている子どもたちもいました。ゴッホの絵の世界に没入していた子どもたちの時間を止めないための工夫だと感じました。

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 2時間目は、子どもたちがクレヨンで絵を描きます。ゴッホの「星月夜」をモチーフにした絵を、「ステップ1:山の線を描く 波線を描く」「ステップ2:月と星を描く」「ステップ3:夜の空を描く」…というふうにステップごとに、みんなで一緒に描いていきます。

 Chia先生は、ステップを進めるたびに、子どもたちに「何を描くのか」と「どんな線を使って、どんなふうに描くのか」を画用紙に自分で絵を描く手元の様子を実物投影機で映しながら説明していきます。子どもたちは、どんなふうにクレヨンを使って、どんな線を描いていくのかを実際に見ることができます。実物投影機を使うことで、子どもたちが絵を描くときと同じ、画用紙を上から見る視線で絵をどうやって描くのかをわかりやすく見せることができると、子どもたちがイメージを持ちやすいと思います。

 絵を描いている途中でも、Chia先生と子どもたちの間では、英語でのやりとりがたくさんされます。ステップ3で空を描くときには、Chia先生が「Dark Blueのfriend colorは?」と質問すると、子どもたちからは「light blue」というふうに返事がありました。

 ステップが進んでいくにつれて、子どもたちは絵を描くことに集中していきます。Chia先生が子どもたちの絵を見てかけていた、「Beautiful.」「Follow your feeling.」という言葉がとてもいいと思いました。こうしたポジティブな言葉かけが、クリエイティブであることにチャレンジできるマインドをもつことにも繋がると僕は思っています。

 授業の終盤にはChia先生が「他の人のbeautiful sky, beautiful color, nice ideaを見てみよう」と言って、みんなで席を立って、お互いの絵を見合う時間もありました。

 ゴッホの作品をスタート地点にして、ARなどを使いながら「こういうのを描いてみたい」とモチベーションを上げていき、最後に自分の絵を自由に楽しく描くことに繋がっていく授業だと感じました。

 No.2に続きます。

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(為田)