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ひとり読書会:『新しい教育評価入門 人を育てる評価のために [増補版]』 No.4 「第3章 教育目標と評価 何を目標とすればよいのか」

 西岡加名恵 先生・石井英真 先生・田中耕治 先生 編『新しい教育評価入門 人を育てる評価のために [増補版]』を読みました。今回は、「第3章 教育目標と評価 何を目標とすればよいのか」の読書メモを共有したいと思います。

第3章 教育目標と評価 何を目標とすればよいのか

 第3章の最初で、「教育目標も明確化の必要性」が書かれていました。「教育目標(educational objectives)」「目的(aims)」「ゴール(goals)」「ねがい」「ねらい」「めあて」など、よく考えてみるとどう違うのだろう?という言葉が並べて紹介されます。「ねらい」は個別の指導内容に即しての教える側の目標、「めあて」は同じく個別の指導内容に即しての学ぶ側の目標で、違うものです。僕は仕事のなかで使っているときにきちんと明確に使い分けて伝えられているだろうか、と反省しました。

「目標の明確化」の第一義的な意味は、授業後の具体的かつ全体的な出口の子どものイメージ(子どもの活動の姿、発言、作品などに表れる認識や能力の変容)で目標を語る「目標の具体化」であることを忘れてはならない。(p.86)

 ここで書かれている、「授業後の具体的かつ全体的な出口の子どものイメージ」で目標を具体化していく、という方法は賛成です。こういうところに気をつけて、先生方をサポートしていきたいなと思いました。

 続けて、学力とその評価について、たくさんのモデルが紹介されていました。いくつかだけ紹介します。まずは、梶田叡一 先生の「氷山モデル」です。これ、よく見るイラストつきで紹介されることが多いですね。

梶田は水面の上に出ている氷山の一角を「見える学力」(「知識・理解」「技能」)とし、水面下の隠れた部分を「見えにくい学力」(「思考力・判断力・表現力」「関心・意欲・態度」)とする。そして、この喩えによって「見える学力」を「見えにくい学力」が支えている構造を表現している。(p.92)

 それから、「OECD Learning Compass 2023」も紹介されていました。

2018年に発表された「学びの羅針盤」(OECD Learning Compass 2030)では、知識(knowledge)、スキル(skills)、態度・価値観(attitudes and values)の3つが一体のものとなって絡み合い、よりよい未来の創造に向け変革を起こすコンピテンシー(competencies:「新たな価値を創造する力(creating new value)」「対立やジレンマに対処する力(reconciling tensions & dilemmas)」「責任ある行動をとる力(taking responsibility)」)が育成されるとしている。(p.101)

 ただ「知っている」「わかる」という段階を超えた学びをつくりたい場合には、当然評価の方法も変わります。「知っている」「わかる」レベルの学力を身につけさせたいのと、「使える」レベルの学力を身につけさせたいのでは、学習も変わると書かれています。当たり前のようですが、ここはなかなか難しいところだし、僕もいろいろな授業で先生方がこれにチャレンジしているを見せていただいていますが、そのたびに「難しいなあ…」と思っています。まだまだ勉強しなくては…と思います。

「知っている」レベルや「わかる」レベルの学力がめざされている場合は、教科の認識内容が目標と評価の単位となるため、内容(事実・技能・概念)ベースのカリキュラムでも不都合は少ない。これに対し、「使える」レベルの学習では、課題追究の期間が長くなり、問いと答えの間が長くなるため、手持ちの知識・技能を総合する思考プロセス自体を指導事項として意識する必要性も生じてくる。逆に、「わかる」レベルの学習にとどまっているのに、思考スキルの直接的な指導を行うことは、授業の煩雑化や形式化を招く危険性がある。(p.102)

 そうなんですよ、「形式化」しちゃうんですよね…ただやっている感じになってしまう。

 そして、「自己調整学習(self-regulated learning)」についても紹介されていました。自己調整学習は僕はまだまだ勉強中です。

ジマーマン(Zimmerman, B.J.)らは、学習者自身が何らかの形で自己調整のサイクル(学習目標の設定、目標を達成するプランニング、学習の遂行過程の制御、結果の自己内省)を回していく過程として学習を捉える。
勉強の得意な子とそうでない子との違いは自己調整の巧みさによるのであって、すぐれた自己調整学習者であるためには、学習方略面での特徴に加えて、課題価値(学習対象への興味・有用性・価値を見出しているか)、感情的要因(学習対象に対してポジティブな感情を抱いているか)、自己効力感(課題を遂行できる自信や見通しがあるか)、原因帰属と目標志向性(学習の失敗を素質不足ゆえと解釈し学習において他者からの評価を気にするのでなく、学習の失敗を努力不足ゆえと解釈し学習を通して能力を高めようとするのか)、学習観(答えだけでなく考え方も重視するなど、深い学習をめざしているのか)といった動機づけ要因(課題や自己や学習に関する信念:belief)も深く関わっている。(p.108-109)

 桃山学院大学の木村明憲 先生の著書も読んで勉強しなくては、とずっと思っています。木村先生はYouTubeもされているので、そちらで少しずつ勉強もできるかもしれません。

www.youtube.com

 探究的な学びの評価についてのコメントも書かれていました。特に、作文の評価について書かれていたところ、参考にしたいと思います。

美術・技術系や探究的な学びの評価でしばしばなされるように、その時点でうまくできたり結果を残せたりした部分の評価とともに、そこに至る試行錯誤の過程で見せた粘り、あるいは筋(センス)のよさにその子の伸び代を見出し、評価するという具合である。国語でも作文の評価で、結果として言語化された文章のうまさだけでなく、振り返りの記述、あるいは、書いては消しした痕跡などから、その題材を綴ることに対するこだわりを捉えたり、さらに、当該の言語活動を超えた言葉にこだわる態度の育ちなどを捉えたりするわけである。スマートで結果につながりやすい学び方をする子だけでなく、結果にすぐにはつながらなくても、泥臭く誠実に熟考する子も含めて、教科として意味ある学びへの向かい方として、主に加点的に評価していく必要がある。(p.114)

 「加点的に評価していく」というのは賛成です。でも、先生が担任しているクラス全体に対して「加点的に評価」を行うのはなかなか大変そうだな、と思います。やはり、学習者が自分で「加点的に(学習のための)評価」→「加点的に(学習としての)評価」ができるようになることが大事だな、と思いました。

 No.5に続きます。

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(為田)