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ひとり読書会:『新しい教育評価入門 人を育てる評価のために [増補版]』 No.5 「第5章 教育実践の改善 評価を指導にどう活かせばよいのか」

 西岡加名恵 先生・石井英真 先生・田中耕治 先生 編『新しい教育評価入門 人を育てる評価のために [増補版]』を読みました。今回は、「第5章 教育実践の改善 評価を指導にどう活かせばよいのか」の読書メモを共有したいと思います。

第5章 教育実践の改善 評価を指導にどう活かせばよいのか

 第5章では、評価を活かしてどのように教育実践を改善していけるのかが書かれています。そのなかで、「パフォーマンス課題」「ルーブリック」「ポートフォリオ」など、いろんな学校の研究授業で見かけるキーワードがたくさん出てきて、とても勉強になりました。改めてこうしてちゃんと読めてよかったです。

パフォーマンス課題のつくり方

 まず、パフォーマンス課題についてです。パフォーマンス課題を取り入れることで、「現実世界でも人が取り組むようなリアルな課題を設計することによって、子どもたちを動機づけて主体的な取り組みを引き出し、生きてはたらく力を身につけさせることができる」(p.147)と書かれていました。パフォーマンス課題の作り方も書かれていました(p.152-153)。

パフォーマンス課題をつくる手順

  1. 単元の中核に位置する重点目標に見当をつける
  2. 単元ごとの「本質的な問い」を明確にする
  3. 単元ごとの「本質的な問い」に対応して身につけさせたい「永続的理解」を明文化する
  4. 単元ごとの「本質的な問い」を問わざるをえないような文脈を想定し、目的、役割、相手、状況、完成作品/実演、スタンダード(評価の観点)を明確にして、パフォーマンス課題のシナリオをつくる

 単元ごとの「本質的な問い」を問わざるをえないような文脈か…しれっと書いてあるけど、先生方には悩みどころですよね…と思いながら読みました。

パフォーマンス課題を評価するためのルーブリック

 続けて、パフォーマンス課題の評価について書かれていました。

パフォーマンス課題に取り組み始めると問題になるのが、完成作品や実演の採点基準であろう。パフォーマンス課題を行う場合は○か×かで採点することができない。そこで用いられるのが、ルーブリックである。ルーブリックとは、成功の度合いを数レベル程度の尺度と、それぞれのレベルに対応するパフォーマンスの特徴を記した記述語からなる評価基準表である。(p.153-154)

 ルーブリックについては、いろいろな形式を学校現場で見ているので、正統なものがどんなものかがわからなくなっている僕ですが、「それぞれのレベルに対応するパフォーマンスの特徴を記した記述語」というのは大事なポイントだなと思いました。

 特定課題のルーブリックをつくる手順も書かれていました。

特定課題のルーブリック作りの手順(p.154)

  1. パフォーマンス課題を実施し、子どものパフォーマンスの実例(完成作品や実演)を集める
  2. パッと見た印象で、「5 すばらしい」「4 良い」「3 合格」「2 もう一歩」「1 かなりの改善が必要」という5つのレベルで採点する
  3. それぞれのレベルに対応する作品群について、どのような特徴がみられるのかを読み取り、記述語を作成する
  4. 必要に応じて評価の観点を分けて、観点別ルーブリックにする

こうしてルーブリックを作成すると、各レベルに対応する典型的なパフォーマンスの事例(これを「アンカー作品」という)を整理することができる。ルーブリックにアンカー作品を添付しておくことによって、各レベルで求められているパフォーマンスの特徴をより明確に示すことができる。(p.154)

 ルーブリックで定めた各レベルに対応する典型的なパフォーマンスの事例(「アンカー作品」)を整理するというのは、大事だなと思っています。ルーブリックでそれぞれのレベルを規定した文章だけを読むよりも、「具体的にどんな作品?」「具体的にどんな活動が見られたら?」「具体的にどんな文章?」というふうに考えて「アンカー作品」として設定しておく方がいいと思いました。

パフォーマンス課題の取り組みを支えていく手立て

 パフォーマンス課題を取り入れていくときの手立てもまとめられていました。

形成的評価とフィードバック、検討会(p.162-163)

  1. 形成的評価
    • 学習を進める過程では、子どもの様子を観察したり、発問に対する応答を聞き取ったり、ノートやワークシートを点検したり、小テストをしたりする。
    • 学習が順調に進んでいれば、さらに高度なことを補足することなども可能。
    • 学習が不十分な状態がみられれば、補習をしたり軌道修正したりといった手立てが求められる。
    • 子ども自身の自己評価力を育てることも重要。「楽しかった」「がんばった」というのではなく、取り組んでいる課題に対応して、自分のできている部分とできていない部分を正確に把握することによって、自己調整を可能にしていくような力。
  2. フィードバック
    • 意図したことに照らしたときに、どのように子どもが行っているかについて子ども本人に情報を与えること。
    • めざしている結果と照らし合わせつつ事実を伝えることで、学習者が自分の実態を把握し、自己調整を可能にする行為がフィードバック。
  3. 検討会
    • 子どもの自己評価力を育てるうえで有効な指導方法とされている。子どもの学習の実態について子どもと教師や関係者の間で話し合い、相互の評価のすり合わせを行っていくような対話の機会。
    • 検討会では通常、教師から「これまでに達成できたことは何か」「どんなところに困難を感じているか」といったオープンエンドの問いかけを行い、子ども自身の自己評価を聞き出す。
    • 教師は、子どもの発言を待ち、子どもの言葉に耳を傾けることが求められる。達成点を確認し、いいところについては褒める。そのうえで、具体例の比較などを通して、評価規準・基準を具体的なイメージとともに理解させる。子どもが自分自身の課題を理解したところで、次の目標について合意する。最後に、達成点と課題、次の目標について記録に残す。

 形成的評価、フィードバック、検討会の3つの手立てが書かれています。こうした手立てと共にパフォーマンス課題を実施していくのだな、と思いながらメモをしました。僕、このあたり、すごく苦手そうです…。

ポートフォリオの設計と活用

 最後にポートフォリオです。作品を全部印刷してファイリングをして…というのは、僕がお世話になっている学校ではあまり見ないのですが、ロイロノート・スクールやGoogleドキュメントなどで自分なりにどんどん作品やカードなどアウトプットを蓄積している児童生徒は多いかもしれないな、と思います。アウトプットに至っていない過程は評価はしないかもしれないけれど、そこまで含めてポートフォリオを考えてもおもしろいかもしれないなと思いました。

ポートフォリオとは、子どもの作品や自己評価の記録、教師の指導と評価の記録などを系統的に蓄積していくものを意味している。また、ポートフォリオ評価法とは、ポートフォリオづくりを通して、子どもが自らの学習のあり方について自己評価することを促すとともに、教師も子どもの学習活動と自らの教育活動を評価するアプローチである。(p.165-166)

 ポートフォリオを使うときに抑えておくべき指導のポイントがまとめられていました。

いずれのタイプのポートフォリオを用いるにせよ、押さえておくべき指導のポイントとしては、次の3点を指摘できる。(p.172)

  1. 子どもと教師の間で、見通しを共有する
    • ポートフォリオをなぜつくるのか、意義は何か、何を残すのか、いつ、どのくらいの期間をかけてつくるのか、どう活用するのかといった点について、共通理解をしたうえで取り組み始める。
  2. 蓄積した作品を編集する機会を設けることが必要
    • 資料を整理して目次をつくり、「はじめに」と「おわりに」を書く
    • 日常的に資料をためておくワーキング・ポートフォリオから永久保存版のパーマネント・ポートフォリオに必要な作品だけを取捨選択して移すという方法もある。
    • ポートフォリオを見せる機会をつくり、そのための準備をすることで、整理する必然性を増したほうがよい。
  3. 定期的に、ポートフォリオ検討会を行うことが重要
    • ポートフォリオ検討会とは、ポートフォリオを使って関係者が話し合う場。子どもにとって学習の成果を披露する場となるだけでなく、到達点と課題、次の目標を確認し、見通しをもつ機会となる。

 2つ目の「蓄積した作品を編集する機会を設けることが必要」というのは、おもしろいなと思いました。学校でも「やりっぱなし」にするのではなく、定期的に編集する、というのはふりかえりという点でも、自分自身の変容に気づくかもしれないという点でも面白いと思います。

 No.6に続きます。

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(為田)