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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.1(2025年10月29日)

 2025年10月29日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問し、和田博文 先生の担当する3年1組の国語「ちいちゃんのかげおくり」の授業を参観させていただきました。

 授業の最初に、子どもたちが前回の授業で書いたふりかえりを読み合う時間がありました。和田先生の授業では、毎時間ロイロノート・スクールでふりかえりのカードを書いていて、クラスで共有しています。ふりかえりのカードには「学習のふりかえり」と「パフォーマンス課題に向けて」の欄があって、子どもたちは、その日の学習のふりかえりだけでなく、単元を貫くパフォーマンス課題(図書委員として「ちいちゃんのかげおくり」と「おはじきの木」を読み比べて発見した考えを整理して紹介する文章を書くこと)まで続く視点も書くようになっています。

 子どもたちの書いた「学習のふりかえり」を見ると、文章量がとても多いことに気づきます。京都教育大学附属桃山小学校の子たちは、たくさんアウトプットします。これは一人1台のタブレット端末が入ったからアウトプットするようになったのではなく、その前からたくさんアウトプットする学校でした。何年もかけて積み上げてきた「自分の考えをアウトプットする」学校文化によるものだと思います。
 「自分の考えたことや思ったことを伝えたい(書きたい)」と思わせる問いを先生が出しているので、子どもたちは自分の伝えたいことを誰かが受け取ってくれる楽しさや、他の人の伝えたいことを自分の考えと繋いだり比べたりする楽しさを、学びの中で体験しているのだと思います。そうした文化が教室にあるからこそ、これだけの量のアウトプットができるようになっていくのだと思います。

 そうした背景があるからこそ、子どもたちはクラスメイトの書いた「学習のふりかえり」を読んで、ふりかえりを読んでどう思ったかをコメントしたり、伝え方について質問したりしていきます。

 和田先生は子どもたちと、「ちいちゃんのかげおくり」のなかで出てくる2回の「かげおくり」の場面に注目します。みんなで一緒に2回ある「かげおくり」の場面を音読してから、一人ひとりロイロノート・スクールでベン図を開いて、「最初のかげおくり」と「最期のかげおくり」についてまとめていきます。

 子どもたちが「最初のかげおくり」と「最期のかげおくり」についてベン図にまとめることができたら、和田先生は「2回のかげおくり、それぞれの違いからどんなことがわかるのかを交流していきましょう」と言います。子どもたちはグループになって、お互いのベン図を見せながら、自分はどう考えたのかを伝え合っていきます。
 一人ひとり自分で一生懸命考えて書いたベン図だからこそ、「伝えたい」という気持ちになるし、グループのメンバーは「しっかり聴いて、わかりたい」という気持ちになっていると思います。この前提がグループでの交流では必須だと感じます。

 交流しているときには、ただベン図を見せるだけでなく、自分がベン図のなかに書いたことについて「ここのページの、ここに書いてある」と教科書の本文の該当箇所も伝える子が多くいました。そうするとグループ全員が、教科書を開いて該当箇所をみんなで読み合っていきます。
 デジタルでたくさんのアウトプットをしながら、紙の教科書も何度も何度も読み返している、こうした活動が見られるのは、子どもたちが「自分が考えたことを伝えたい、わかってほしい」という気持ちをもっているからだと思います。この気持ちがないままに交流学習をしても、お互いに言うだけになってしまいます。

 グループでの交流の時間を終えてから、和田先生は「2つのかげおくり、最初と最期のかげおくりはどう違いますか?」と子どもたちに問いかけます。和田先生が「ゆずり合いでお願いします」と言うと、先生が指名をしなくても発言したい子どもたちが順番に立って意見を言っていきます。途中で子どもたちから質問も出て、質問に答えてもらったら「ありがとうございます」と答えて終わります。
 グループでの交流のときと同じように、質問に答えている子が「教科書の○ページに…」と言うと、みんなで開いて読んで該当箇所の文章を読んで確認していました。グループでの交流の時間が、今度はクラス全体での交流に発展している様子を見ることができました。

 最初のかげおくりと最期のかげおくりのそれぞれについて、子どもたちから出てきた「どんなことが書かれていたのか」「どんなことを感じたのか」についての意見を、和田先生がホワイトボードにまとめていきます。そして、最初と最期のかげおくりの間にどんな出来事があったのだろう、ということもくらすみんなで考えていきます。
 ホワイトボードにみんなの意見をある程度まとめたところで、和田先生は「みんなの話を聞いて、ひらめいたことはあったか、話し合ってごらん」と言います。こういう授業展開は、ホワイトボードを使ってみんなの意見をまとめながら行うからこそできることだと感じます。この過程でも、子どもたちは教科書のページを何度も開いて、「ちいちゃんのかげおくり」を何度も読んでいました。

 最後に、2つのかげおくりを比べて感じたこと、思ったことなどを振り返りのカードに書いて授業を終わります。子どもたちの机の上には、これまでに書いたふりかえりのカードを印刷して綴じたファイルが置いてありました。これまでに書いたふりかえりをファイルを開いて読み返しながら、ロイロノート・スクールで今日の授業のふりかえり、パフォーマンス課題に向けてのコメントも書くことができています。単元を貫く問いに向き合わせるために、デジタルとアナログとを行き来しやすい環境を作るのも効果的だなと感じました。

 No.2に続きます。

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(為田)