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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.3(2025年10月29日)

 2025年10月29日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問し、栗山敬悟 先生の担当する4年2組の国語「ごんぎつね」の授業を参観させていただきました。
 4年2組の教室には、2枚のホワイトボードと2台のモニターが置かれています。2枚のホワイトボードは、子どもたちの問いをまとめた「ごんぎつね クラスの問いボード」とごんぎつねのストーリーをたどる「学びの足跡」として機能しています。2台のモニターには、栗山先生が提示するスライドとクラスのロイロノート・スクールが映されています。

 栗山先生は新見南吉記念館を訪れたときの写真を子どもたちに見せて、「『ごんぎつね』が人の心を動かす理由を研究レポートにまとめよ」というパフォーマンス課題に取り組んでいることを伝えます。子どもたちは新美南吉記念館の臨時研究員になって、「南吉が使っている心を動かす魔法」について研究レポートをまとめていくために、南吉が使っている心を動かす魔法を意識して『ごんぎつね』を読み、『ごんぎつね』が人の心を動かす理由を考えていきます。

 栗山先生が子どもたちに「今日のゴールはどうする?」と問いかけると、子どもたちは自分たちの言葉でゴールを考えていきます。最終的に、「南吉の心を動かす魔法を考え、具体的に説明できる」ことをゴールとすることが決まりました。
 南吉が使っている心を動かす魔法を『ごんぎつね』とは違う他の作品と比べて考えるために、『あめだま』を読んで心が動く理由を考えていきます。
 『あめだま』の話のなかで、最初怖いと思っていた侍が、実は優しい人だったというふうに読み方が変わるところがあるので、栗山先生は「変化が分かる最も重要な一文はどれだと思う?」と子どもたちに問いかけます。子どもたちは、『あめだま』の文章を読んで、「変化が分かる最も重要な一文」を一人ひとり探します。
 一人で考えた後は、班になって考える時間になります。4年生の教室の両側面の壁が大きなホワイトボードになっています。また教室後方にも移動できるホワイトボードがあるので、班ごとに自分の考えを伝えながらホワイトボードに書き込んでいきます。この過程でも「あめだま」の文章を何度も読んで、心が動く理由を考えていきます。

 栗山先生はそれぞれの班を見て回って、声をかけたり質問を投げかけたりしていきます。栗山先生は子どもたちが考えたことをより明確に言語化するサポートをしているように思いました。

 班ごとに考えた後で、クラス全体で改めて「変化が分かる最も重要な一文」について考えたことを共有していきます。
 ある班が「パチンと二つにわりました、というところ」と言うと、栗山先生は「それだけでは何のためかわからないんじゃない?」と問い返します。「“そオれ”のところかなと思った」と言う班には、「“そオれ”一文でいいのでかな?」「“それ”じゃダメなのかな? “そオれ”じゃないとダメなのかな?」と返し、児童の考えを揺さぶります。
 栗山先生の言葉が、クラス全体が『あめだま』の本文を何度も読み直してまた考えるきっかけになっていました。授業後に栗山先生にお話を伺うと、子どもたちとのやりとりで、「一文、一語にこだわる、そこに気づかせたかった」とおっしゃっていました。そんな栗山先生の意図が見えるやりとりだったなと思いました。

 クラス全体で「変化が分かる最も重要な一文」について考えた後で、新美南吉が使った言葉の魔法をGoogleクラスルームのチャットに書き込んでいきます。子どもたちは「目立たせ魔法」「言葉変換魔法」「言葉を優しくする魔法」「柔らかい言葉」「カタカナ魔法」「伸ばし魔法」「1文字で変わる魔法」「小さい意味の魔法」「目をつける言葉魔法」などユニークなネーミングを書き込んでいました。

 最後にGoogleスライドのテンプレートを使って、ふりかえりを書きます。「学習の振り返り」と「P課題の見通し」の2つの欄があります。以下のように具体的にどんなことを書いてほしいのかも示してありました。

  • 学習の振り返り
    • 視点1:「南吉の心動かす魔法は○○」あなたにとっての○○とその理由は?
    • 視点2:その○○を意識して、これからどのように『ごんぎつね』を読みますか?
  • P課題の見通し
    • 「『ごんぎつね』が人の心を動かす理由」は?(今の時点のあなたの考えを書きます)

 この日の学習のふりかえりだけでなく、P課題(パフォーマンス課題)に向けてのコメントも書けるテンプレートになっています。

 「言語化を実感させたい」と言う栗山先生の教室には、「言語化」に繋がる掲示物がたくさん貼られていたのが印象的でした。

 また、「学んだことを具体的に書く」にはどうしたらいいのかを、子どもたちが学べるようにふりかえりの例も掲示してありました。

 この日の授業でも、子どもたちはみんなすごくたくさん発言をするけれど、発言をしている子の言葉をみんなで待って、きちんと考えを受け止めようとしている様子が見られました。「たくさん話す」「たくさん書く」というだけでなく、「たくさん聴く」ということも大事にされていました。
 こういう教室の文化になっているのは、「言語化」ということを常に意識できるように環境が作られていることも大きな要因だろうと感じました。

 No.4に続きます。

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(為田)