2026年1月22日に東福岡高等学校を訪問し、東和樹 先生が担当する国際教養コース 1年21組の数学Ⅰの授業を参観させていただきました。この日の授業は、病気と検査の話を題材に、確率について考えることができるものでした。
東先生は生徒たちに、命にかかわる罹患率0.8%の「病気A」と、病気Aを判定できる「検査B」について話をします。続けて、「検査Bは90%の確率で陽性が出る。つまり、10%の確率でミスって陰性が出る。これを偽陰性と言います。病気Aにかかっていない健康な人に検査Bをすると、5%で陽性が誤って出ます。あなたの友人Cさんがこの検査を受けて陽性と判定されたとき、あなたなら何と言いますか?、というのが今日の問題です」と言います。

教室のあちこちで生徒たちがざわざわと話し合います。一人の生徒が、「いや、ワンチャン大丈夫なんじゃ…」と若者言葉で返すと、東先生は「そのワンチャンって、どれくらいなの?というのを考えてみてください。数字を使わずに“ワンチャン”と言うことには、何の意味もないですよ。数字の割合とか、確率を考えていないとダメなんだ、という話を今日はしたいんです」と先生は言います。
ここで、生徒たちが話し合うための時間として、10分とります。一人でじっくり考えている生徒たちもいますし、周りのクラスメイトと話し合っている生徒たちもいます。「本当に病気なん?」という声があちこちであがります。
東先生が黒板に書いた検査の条件などの情報を撮影して手元で見ながら考える生徒たちもいました。生徒たちは自分のiPadをいつでも自分の使いたいように使えるようになっていることがわかります。

しばらく自分たちで考える時間をとった後で、東先生は「こうやって分類できるよね?」と黒板に「実際(陽性/陰性)」と「検査(陽性/陰性)」の2軸マトリックスを書きます。
東先生は、「10000人を検査したとして、実際に病気Aにかかっているのは80人、かかっていないのは9920人ですね」と言って、実際の数字をマトリックスに確率を書き入れていきます。「判定率90%というので大きいと思ってはいけない。実際は何人ということですか?それはこの分類だとどこになりますか?」と生徒たちに問いかけます。実際に病気Aにかかっている80人を検査したとして、検査Bをすると90%で陽性になるので、72人が陽性判定になります、というふうにマトリックスに確率から計算できる実際の数字を書き込んでいきます。
それだけでなく、病気Aにかかっていない9920人を検査すると、5%にあたる496人が誤って陽性と判定されるので、合計で10000人のうち568人が陽性判定を受けることになります、とマトリックスを順に埋めていきます。こうして数字を計算してみると、陽性判定を受けるのは568人ですが、そのなかで実際に病気Aにかかっているのは72人になるということが生徒たちにもわかります。
生徒たちからは「568人のうち、72人しかかかっていないということ?やば!」「90%って数字で言われるとわからんかも」という声が上がっていました。東先生は、「ワンチャンある、って言ってた人たち、ワンチャンどころじゃないですね」と生徒たちに言います。
「数字にだまされた」と言う生徒たちに、「数字にだまされたわけじゃない。計算しないと、この度合いってわからなかったのではないですか?確率はちゃんと扱いをマスターしてほしい」と言います。こうした数学で学習することに実感が伴う課題はすごくおもしろいなと思いました。

病気Aの陽性判定について確率の数字と実際の人数の数字の違いについて生徒たちが理解した後で、「これは、個人なら勘違いですむ話ですが、政策立案者がこの勘違いをするとどうなるか、という話です」と言って、2020年5月のコロナ禍の状況で報道されていた「全員にPCR検査を」という意見を題材にして、同じように確率と実際の数字を計算して見せながら説明していきます。「大きな判断をしなくてはいけない立場にみんなは行くでしょう?だからこそ、数字の判断を間違えてはいけない」と生徒たちに伝えていました。

その後で教科書を使って期待値の話をするときも、「桃太郎電鉄」や「マリオパーティー」などのゲームでサイコロの目はいくつが出やすいかを考えるときにも期待値が使えます、と生徒たちの日常のなかにある数学的な思考に気付けるような題材を使って説明をしているのが印象的な授業でした。
No.2に続きます。
(為田)