2026年6月10日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問し、栗山敬悟 先生が担当する6年2組の国語「情報機器と私たち」の授業を参観させていただきました。これまでの授業でPCの使い方についてメリットとデメリットを話し合ってきた子どもたちは、ピラミッドチャートを使って「より良いPCの使い方」の提案を考えていました。

ピラミッドチャートは3層の構造になっていて、いちばん上の層に「主張」、その下の層に「論拠」、いちばん下の層に「データ・事実」と書かれています。栗山先生は、「主張」「論拠」「データ・事実」を以下のように子どもたちに説明していました。
- 主張:
言いたいこと・伝えたいこと- 論拠:
言っている人の考えであり、主張を「なぜ正しいと言えるのか」を伝えるもの- データ・事実:
実際に起こっていること・正しいこと
子どもたちは自分で考えた「より良いPCの使い方」の提案をカードに書いて、ピラミッドチャートの上に置いていきます。何人かの子どもたちの書いたピラミッドチャートをモニターに映して、クラス全体で提案内容を読んでいきます。
「主張」の層に「タブレット・PCから得られる情報は注意深く活用するべき」というカードを置いていた子は、いちばん下の「データ・事実」の層に「情報は必ずしも正しいとは言えない」と「タブレットでは、多くの情報を得ることができる」という2枚のカードを置いていました。「論拠」の層はまだ考えている途中でカードが置かれていなかったので、これから「論拠」を考えなくてはいけないことがわかります。
ピラミッドチャートの上にカードを置いていく活動をすることで、「主張」を支えるために「論拠」と「データ・事実」を考えることが求められるようになるだけでなく、カードが置かれていない「論拠」や「データ・事実」はまだ考えられていない、ということを可視化することができます。

この授業では、栗山先生から以下のP課題(パフォーマンス課題)が出されています。モニターにP課題を映して子どもたちと再確認します。
P課題
附属桃山小学校では、タブレットPCのルールをICT活用部の先生たちが中心となって毎年見直しています。今年度の「タブレットPCのルール」を読むと、「学習のために使います」「時間と場所を決めて使います」など大切なことは書かれているものの、具体的にどう使えば学びが深まるのかは書かれていないことに気付きました。そこで、実際にタブレットPCを使っている6年生として、ICT活用部の先生に向けて、よりよい使い方を提案することになりました。先生も児童もやってみたいと思えるような、「よりよいタブレットPCの使い方」を班で一つの提案書にまとめ、提案してください。
「P課題が “より良い使い方の提案を班で1つの提案書にまとめて提案してください” となっているので、今日はどんなことをすればいいかを班で話し合ってみてください」と栗山先生が言うと、子どもたちは「(班の3人)それぞれがピラミッドチャートを完成させて、どのテーマ(提案)にするのかをグループで決めていったらいい」と答えます。
栗山先生が「班の3人の意見が違うときは、どうやって決める?」と続けて質問をすると、子どもたちからは以下のような言葉が返ってきました。
- 1年生なら、自分の意見しか信じないけれど、今(の僕たち)なら、お互いの意見を聞き合える。
- 一人ひとりのテーマを班で話し合って、班のテーマを決めたらいいと思う。
- 班のみんなで大まかなテーマを決めて、そのなかでそれぞれがやりたいことをやったらいい。
このやりとりの流れで、班の3人で提案したいこと(=主張)が違っていたらどうすればいいのか、ということに話が展開していきました。
- 「この情報を入れるべきだ」と主張を言い合っててもだめ。「論拠」と「データ・事実」を比べて決めたらいい。
- 「主張」だけ言い合ってたら、声が大きい方が勝つ。「事実」と「論拠」がある方が説得力がある。
- 「事実・データ」と「論拠」は、「主張」を証明するもの。
- 「事実」を「主張」に結びつけるのが「論拠」。
授業後に長野健吉 教頭先生にお話を伺ったら、栗山先生の授業では松下佳代 先生(京都芸術大学学習支援・教育開発センター長、京都大学名誉教授)が整理し、提唱している「対話型論証」を取り入れているのだとおっしゃっていました。ここで子どもたちが言っていた、「主張」だけを戦わせるのではなくて、「事実」と「論拠」を大事にしていくという方法は、対話型論証の型になっていて、それを子どもたちは活動のなかで実践しているのだなと感じました。今後は、ピラミッドチャートではなく、対話型論証の型を取り入れて校内研究を進めていく予定で、2026年11月27日、28日の研究発表会では松下佳代 先生に講演をいただく予定もしているとのことでした。
子どもたちがP課題に取り組む準備として、クラス全体で1つの提案書をピラミッドチャートを使って分析する活動を栗山先生は準備していました。
栗山先生は、すでに書かれている提案文を段落ごとにカードに分けた「提案文要素カード」をロイロノート・スクールで子どもたちに送ります。「ピラミッドチャートを使って、この提案文がどんな論証モデルになっているのか、分析してみて」と栗山先生は言います。

子どもたちは、まず「提案文要素カード」の各段落のカードを読んでいきます。班のみんなで読むときに、「主張だと思うところには、赤で線を引いて」というふうに決めている班もありました。

「提案文要素カード」を読めたら、それぞれの段落を共有ノートのピラミッドチャートの「主張」「論拠」「データ・事実」の層に置いていきます。ピラミッドチャートのなかに長い文章のカードをそのまま全部入れると論理構造がわかりにくくなってしまうので、「提案文要素カード」に書かれている段落の内容を要約してカードに書いていきます。

栗山先生は子どもたちが作っているピラミッドチャートを見て回って確認しながら、問いを投げかけたり、アドバイスをしたり、一緒に考えたりしていきます。
ロイロノート・スクールでピラミッドチャートを作っているので、書き直しやカードの配置変更を簡単にできます。子どもたちは「これはやっぱり論拠かもしれない」とか「いや、これは主張じゃないかも…」などと言いながら、何度もカードを再配置して論証モデルを組み立てていました。

最後に、いくつかの班の作ったピラミッドチャートをモニターに映して、みんなで確認をしていきます。

ホワイトボードにも「提案文要素カード」の段落がプリントアウトして貼ってあるので、それをみんなで見ながら考えていきました。全部をデジタルで完結させるのではなく、ホワイトボードと組み合わせて、子どもたちと一緒に考えることができます。

最後に、この日の授業で取り組んだ、自分のピラミッドチャートと「提案文要素カード」を分析したピラミッドチャートをつなげて、ロイロノート・スクールで提出してもらって授業が終了しました。
「提案文要素カード」を使って、論証モデルがどんなふうになっているのかということを自分たちで分析したことは、P課題で自分たちの提案を作るときに役立つと思います。ピラミッドチャートを使って、「主張」「論拠」「データ・事実」の論理構造を作っている子どもたちの提案書のできあがりがとても楽しみに思えました。
No.2に続きます。
(為田)