教育ICTリサーチ ブログ

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九州大学 QREC 授業訪問レポート No.3 (2016年5月25日)

 2016年5月25日に、九州大学伊都キャンパスにて行われる、松永正樹先生(九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター (QREC) 特任准教授)の授業を取材に行ってきました。

グループで学ぶことの意義

 松永先生の授業を見学していて、「おもしろい言葉を使うな」と思ったところがいくつかありました。例えば、「わからないことがあるなら、グループのメンバーに訊きなさい。ここではカンニングはありだよ」という言葉がありました。これを先生が言ってくれるのは、教室の空気を大きく変えるな、と感じます。
 実際に仕事をしていても、自分一人ですべての問題について考えて、自分一人で完結するということもほとんどありません。そうした仕事に取り組む空気のような、みんなで課題に団結して挑みかかるような、そんな雰囲気を先生は作りたいのかな、と思いました。
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松永先生の授業がアクティブな理由

 松永先生の授業を見学して、「誰より先生が楽しそうだな」と感じました。これはとても大切なことだと思います。松永先生は、“知的に挑みがいのある”クイズを要所要所にいれています。それに対して学生たちは、グループで話し合うのも、解説動画を見直すのも、検索して方法を探すのも、あらゆる手段を松永先生に認められています。
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 松永先生の授業は、知識伝達が少ないかと言われるとそんなことはありません。むしろ、会計ファイナンスの基礎として、使わなければならない計算式の説明や、資料として用いる企業データの分量はかなりのもので、それを実際に計算してみる演習も多く、PowerPointで文字が多いスライドも多く使われています。松永先生の授業で特徴的なのは、「授業で教わることに、コンテクストを与えていること」だと思います。
 計算式は、最初に解説動画で見ているときには、ただの知識かもしれません。ですが、授業中にクイズが出て、クイズに答えるために、解説動画で聴いた計算式を使わなければならない。それが「知識を使う場面(=コンテクスト)」を作るということです。
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 授業後に、松永先生にインタビューをさせてもらいました。「アクティブ・ラーニングは好きです。でも、静かに座っているけど、脳内でアクティブに学んでいる、ということもあると思うんです」と松永先生は言います。「アクティブ・ラーニングは、模造紙に付箋を貼っていたりプレゼンをしたりといったアクティブ・ビヘイビアによって測るものではない。教師が動きまわって忙しく声掛けやファシリテーションをするアクティブ・ティーチングによって測るものでもないと思うんです」、そう言う松永先生が、大事なことだと言うのは、“コンテクスト作り”です。
 学びたいと思うコンテクストを作る、学ばざるを得ないというコンテクストを作る。結果的に、学生がいちばん楽に、合理的に目の前のチャレンジに取り組んでいるだけなのに、学ぶべきことを学べる。そうした学習のコンテクストを作りたいと松永先生は言います。
 松永先生も、最初から今回見学した授業のような形をとれたわけではないと言います。最初に大学で教えていた英語の授業では、「工夫はしていたけど、つまらなかったと思う」と言っていました。その頃と比べると、今は「何を教えるかが決まっていても、学生がそれを欲しがる(学びたがる)ようになる場づくりの技、道筋をつくるやり方の引き出しが増えた」と言います。


 見学させていただいた授業は、学生が学びたがるように設計されている授業だったと思います。また、学びたがる環境を作るために、日常で使っている道具をそのまま持ち込めるということも非常に大切な要素ではないかなと思いました。ノートPC、iPhoneタブレット、ノート、ペン、学生たちがそれぞれにあった学びのスタイルで学べる環境を作っているのも、松永先生のコンテクスト作りの一環だと感じました。
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 もっともっと、外部も巻き込んだ授業をしていきたい、と語ってくれた松永先生。後期にはまた違う授業を担当されるということなので、またぜひ取材に行かせていただきたいと思っています。

(為田)