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学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」レポート No.3(2021年10月7日)

 2021年10月7日にオンラインで開催された、WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」に参加しました。
 第3部は、NTTコミュニケーションズによる講演「まなびポケットCBTとは?」でした。講演の要点をまとめていきたいと思います。

まなびポケットCBTとは

 まなびポケットCBTは、まなびポケットが提供する、日本初の小学校・中学校向けの商用学力調査のComputer Based Testing(CBT)です。小学校2年生~中学校3年生の国語と算数/数学が対象となっています。これまで紙でやっていた学力調査のオンライン版ですが、CBTとなり、2022年度からは項目反応理論(IRT)を採用して、これまでは難しかった通年・経年での学力変化の計測が可能になります。
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 2021年5月~6月に第1回まなびポケットCBTが実施されています。まなびポケットCBTは、教室に集まって、GIGAスクール構想で配備された1人1台の情報端末で受検してもらったそうです。こうしたCBTを大規模に行うという事例がなく、さまざまなトラブルもあったそうですが、システムを改修し、2021年10月現在、全国の小中学生7500名ほどが受検をしたそうです。
 第2回まなびポケットCBTは、2022年1月~2月に実施することも予定しているそうです。2021年度の結果も、2022年度のフィードバックで経年での学力比較が可能になっていきます。
manabipocket.ed-cl.com

今後まなびポケット(学習eポータル)が目指す世界

 まなびポケットCBTは、まなびポケットのコンテンツでのドリルの使用頻度や学習履歴などと学力の変化を分析もできるようになります。また、WEBQUとまなびポケットCBTの連携分析が可能になります。
 まなびポケットが、学びの入口であり、データの集約点(出口)となっていくことで、データに基づいた教育活動が可能になっていくと思います。
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 まなびポケットCBTでの学力調査データ、WEBQUでの学級集団の状態データ、まなびポケットのさまざまな学習コンテンツの利用状況データが結びついていくことで、学校現場に近いところで、「データをいかに分析するか」「データをどのように見てもらうか」ということが子どもたちに還元しやすい形で実現できる可能性が大きいと思います。これらのデータが、先生方と子どもたちのために役立つように、まだまだまなびポケットは進化していってほしいと思いました。

(為田)

やってみた:文章の要約文を生成するAI「ELYZA DIGEST」

 東京大学の松尾豊研究室発のAIベンチャーELYZA(イライザ)が8月に公開した、文章の要約文を生成するAI「ELYZA DIGEST」を試せるデモサイトのことを知って、ずっと何かの文章で要約をやってみようと思っていたのですが、あるプロジェクトで「なぜ勉強するのか?」という文章を書いたので、要約してみました。
www.itmedia.co.jp

 ELYZA DIGESTにアクセスして、下にスクロールしていくと要約したい文章を入力するテキストボックスが出てきます。
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 700文字の文章をそのままコピー&ペーストして貼り付けてみました。利用規約に同意して、「要約スタート」のボタンを押すだけです。
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 要約が完了しました。自分が書いた文章が、誰か(AIも含めて)に要約される体験というのがあまりないので、ちょっと変な感じです。授業でやってみて、自分の思った通りのところが要約で使われているかなどを見てみるといいかと思いました。
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 URLでも要約が作れますので、昨日のエントリー「授業で使えるかも:地理院地図(電子国土Web)」を要約してもらいました。要約の後半部分は、本文自体には書いていない、関連記事のところを拾ってきてしまっていますね…。
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 こういうテクノロジーは、自分で使ってみることで、長所や短所なども見えてくると思っています。自分が書いた文章であれば、思った通りの要約が出ないのは、AIの方の問題なのか、自分の書いた文章の内容や構造の問題なのか、というのも考えてみるきっかけになりそうだと思いました。

 機械翻訳のサービスを使うときにも同じことを思いますが、どのように使いこなすのか、適度な信頼の仕方を考えていくのが大事だと思います。もちろん、テクノロジーの進歩によってAI要約がどんどん信頼性を高めていく、ということもあると思います。どうテクノロジーとつきあっていくのかを考える題材として使えるかもしれないと思いました。

(為田)

WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」レポート No.2(2021年10月7日)

 2021年10月7日にオンラインで開催された、WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」に参加しました。
 第2部は、早稲田大学教育・総合科学学術院 教授の河村茂雄 先生とNTTコミュニケーションズ Smart Education推進室の稲田友 さんによるクロストーク「学級経営が学力向上に役立つ理由」でした。クロストークの要点をまとめていきたいと思います。

学級経営と学力の関係性

 クロストークは、まず「学級経営と学力の関係性」についての話から始まりました。

稲田さん 学級経営と学力向上の関係性について言うと、因果関係を調査したものとして、「埼玉県 学力・学習状況調査」が広く知られています。30万人の児童生徒の学力テストの結果をとり、項目反応理論(IRT)によって学力の比較ができるようになっています。WEBQUの学級状態と学力の関係を見ることができるようになっています。
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河村先生 まさにこれがさきほど説明したことです。学級経営での活動は、認知能力と非認知能力の両方が出る場面です。学級活動のなかでは、子どもがどんなに正論を言ってもだめで、相手が納得するような言い方で伝えなければいけません。それは非認知能力なんです。
アクティブラーニングの流れは、本来日本の教育でやってきたことなんですが、それが、記憶の方に偏ってきてしまっていたと思います。
学習意欲だけが上がる、という子は少ないんです。友達関係が良くて、みんなと一緒に学習意欲が伸びていく子が多いんです。相関は高い。認知能力と非認知能力の相互作用なんです。「クラスに良くなろうとしている子がいますか?」という質問に高いスコアを出す子は、良いところを学び取ろうとしている子で、そうした考え方は学習方略にもつながります。だから、それがまた認知能力の高まりに戻ってくるんです。学校での学びでは、友人関係が悪かったら、学習意欲は落ちます。
統計的に、学力テストで全体がぐっと上がるためのポイントは、正規分布の真ん中のところが上がることが有効です。真ん中の子どもたちは同調性が高い傾向があり、したがって、クラスの状況が良ければ上がり、悪ければ下がるんです。
WEBQUではこうしたことが全部分析できています。学習も生徒指導も同じで、コンピテンシーを獲得することが重要です。自分で認知を深めていくのも方略です。自分で調べる、友達に訊く、先生に訊く、それらは非認知能力です。そうした非認知能力も学級の中で学んでいくんです。
いま学力の高い県、テストの正答率の高い県は、QUのデータを見ると、満足感の上位県です。学級生活の満足が低くて、学習意欲と学力が高い県はない、と思います。


稲田さん 主体的・対話的で深い学びのところも、集団がささってくるということでしょうか?


河村先生 WEBQUで訊いている学習意欲は、自律的な学習意欲です。やらないと怒られるから、という外発的な部分の強い学習意欲はとっていません。だから、固定的でクラスをまとめていた先生のクラスは学習意欲が低いんです。そうしたこともわかるようになってきました。データでこの図の有効性は示せるように思います。
主体性がない協働性は馴れ合いになります。だから、お互いただ「いいね」と言い続けていたら予定調和的になります。いろいろと考え方が違う人が対話をすることによって、はじめて新たなことが生まれてくると思います。


稲田さん 会社でも同じだな、と思います。


河村先生 学習する組織には、最低限の安定と活性度があることが大事、ということです。若い先生が意見を言えない職員室も、同じです。子どもだけの問題ではないな、と思います。「固定」「遂行」で上下関係のなかでやってきたが、時代が変わってきていると思っています。だから、WEBQUを作りました。やってよかったと思っています。動きが速い。コロナ禍で、スピードが加速していると思います。コロナが終わった後に、大きな変化が出てくるな、と思っています。

データ・エビデンスに基づく学級/学校経営・政策立案へ

 次に、クロストークは「データ・エビデンスに基づく学級/学校経営・政策立案」についての話題になりました。

稲田さん QUはデータ・エビデンスに基づいてやっています。文部科学省が行っている全国学力調査・学習状況調査も2024年度以降、順次デジタル化され、2025年にはすべての中学校がCBTでやる、と言われています。
文部科学省のオンライン学習システム(MEXCBT)も含めて、学習eポータルを入り口にしてそれぞれのサービスが使われ、データが集まるようになり、いろいろな人が使えるようになっていきます。WEBQUの活用は重要性が高まり、データの活用は学校の最重要項目のひとつになると思っています。
MXTCBTも、WEBQUのようにデータを集計してすぐに先生に返せる、とういのが重要になると思いますね。
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河村先生 今までの教育は、3K(経験、慣習、勘)でしたけど、これはもう終わって、エビデンス・ベースドになると思いますね。


稲田さん エビデンスとデータが3K(経験、慣習、勘)の代わりになると思います。


河村先生 先輩の先生の話を聴きながら、データを検索するような若い先生が出てくると思います。データをWEBQUで見て、「どうですか?」と先輩に訊くようになります。自分が疑問をもってから訊かなくてはだめ。どういうことか若手の先生は自分で調べて、そのうえで先輩に訊きにいけば、より高いレベルの学びになります。教員組織も学習する組織になるのではないかな、と思います。先生たちがそうした学習組織になっているのを見て、子どもたちの学級も学習する組織になるのではないかと思います。


稲田さん いまは学校現場は、世代的に中間層がいない、フタコブラクダですね。


河村先生 経験をもっているベテランと、ICTを使える若手が協働していくようになるでしょう。ベテランの先生方の動機づけと若手の動機づけは違うし、学習方略も違います。
情報化社会のポイントは、「どれだけ情報を集めるか」ではなくて、「どれだけ分析できるか」「分析を的確な行動に繋げられるか」だと思います。そのためにまなびポケットは使えると思います。


稲田さん 「データの活用」は、データを集めるだけでは意味がありません。集めたデータをどう分析するかのアテがないといけないので、そこでこれまでの先生方の3K(経験、慣習、勘)は役立つと思います。


河村先生 名人の勘はすごいです。きちんと聴くと、理にかなっているものもあります。ただ、理にかなっている先生もインフォームド・コンセントアカウンタビリティが必要になる時代です。そのためにも、データ分析、エビデンスベースとも必要になってくきます。これは来るべくして来た流れだと思います。


稲田さん WEBQUだけでなく、日々使うコンテンツ、デジタル教科書や授業支援システム、個別学習コンテンツなどとも結び付けられそうですね。


河村先生 毎日使うコンテンツのデータを見ると、WEBQUの非承認群の子たちがいつも同じものばかり見ているとかがわかるかもしれません。そこに声掛けをしてあげるということが大事です。
大学生を見ていると、勉強の仕方がうまい、自分にあった勉強のしかたを身につけている、という学生が強いと思います。そうした学生は、社会に出るのに不安だけど、不安への対処のやり方も持っている。言われたことだけやってきた学生はそれができないんです。
自分がいちばん集中してできる場で、できる方法で、やればいい。全員が一人ひとり個性があって、それに応じて取り組めればいいと思います。


稲田さん それも個別最適化、だと思う。WEBQUでも、ひとりひとりの個性や状態がわかりますね。


河村先生 そこから、ひとりひとりの相互作用とベクトルで、学級の状況がわかる。そこで、個と集団がぐるぐるまわって相乗的に活性化していきます。


稲田さん 回せば回すほど精度が上がっていくのがデータの世界だと思いますので、それが回せればいいですね。


河村先生 「集団の学びを、今まで通りしていけばいいんでしょう?」と思っている先生は、大間違いです。子どもたちも違うし、目標も違います。支援の仕方をもっと細やかにしていかないと、伸びていきません。指導の仕方を変えていかなければなりません。


稲田さん 子どもたちの変化だけでなく、社会情勢の変化によっても変わってくると思いました。


河村先生 「学校へは行けないんだけど、オンラインで参加すればいいんじゃないか」というのもあります。いろいろな参加の仕方が出てくるのかもしれません。ICTを使った協働学習だったら、不登校の子でも参加できるかもしれない。いままでのパラダイムを大きくブレイクスルーしていかないとダメなのではないかと思います。
コロナが終わったら、大きく変わると思います。大学がCBTでの入試を準備していますし、そうすると学校の学びも変わっていくと思います。

 具体的に学級経営と学力の関係性がWEBQUのデータでどのように見えるのか、またこれからそれがどのように活用されていくのか、「データをどう分析するか」がいかに重要か、考えるきっかけとなるクロストークだったと思います。

 No.3へ続きます。
blog.ict-in-education.jp

(為田)

授業で使えるかも:地理院地図(電子国土Web)

 ある教育委員会の先生に教えていただいて、国土地理院地理院地図(電子国土Web)を使ってみました。日本ローカルのさまざまなデータを見たり連動させることができるので、Googleマップとはまた違う使い方ができそうだと思いました。
maps.gsi.go.jp

 画面左上の「地図」と書かれているボタンを押すと、地図の種類を選択することができます。年代別の写真や、土地の成り立ち・土地利用、災害伝承などをクリックして選ぶと、下の「選択中の地図」のところにどんどん重なっていき、地図の上に重ねて表示することができます。
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 画面右上にある「ツール」のところから「重ねて比較」を選ぶと、画面中央のところで左右で違う年代の写真地図を見ることができます。1945年~1950年の写真と現在の写真を並べて、国立競技場のあたりを見てみました。スクロールしていくのがおもしろいです。開発の様子や海岸線の埋め立ての様子などは、変化が大きくておもしろいのではないかと思います。
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 同じく、画面右上にある「ツール」のところから「断面図」を選ぶと、地図上で地点をクリックして直線を作れば、その直線がどのような断面になっているかを見ることができます。河岸段丘や断層などの地形を見るときに使うとおもしろいと思いました。
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 できることがたくさんありすぎて操作が難しいということもあるかもしれませんが、授業の中で見せたい情報がはっきりしていれば、学校がある地域を題材にすることができるので、いろいろな可能性がある教材になるのではないかと思います。社会科の先生が地理院地図を使ってどんなことができそうだと考えるのか、お話を伺ってみたいと思いました。

(為田)

WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」レポート No.1(2021年10月7日)

 2021年10月7日にオンラインで開催された、WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」に参加しました。
 第1部は、早稲田大学教育・総合科学学術院 教授の河村茂雄 先生による講演「WEBQUとは?開発者の視点から教育論を語る!」でした。講演の要点をまとめていきたいと思います。
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なぜWEBQUが開発されたのか

 WEBQUが開発された背景には、河村先生がもった「社会が大きく変わり始める実感」があったそうです。

  • 2010年代初頭、人材育成のやり方が大きく変わると実感
    • 大学生の就職の様子が変わってきた。言うことをきいているだけの学生よりも、自分の意見を言える学生が評価されるようになってきた。
  • 資質・能力(コンピテンシー)。問題解決に繋がる能力。
    • 認知能力:
      問題場面で活用できる思考力・判断力・表現力など
    • 非認知能力:
      自己に関する能力と、社会性に関する人と関わる能力
  • 非認知能力は従来、気質や性格だと言われていたが、これがスキルと捉えられて、育成することが目指されるようになった。
  • 社会が変わってくる実感が出てきた
    • コンピテンシー・ベースの社会となり、結果が基準になる
    • やったことを評価されていたのが、「やった結果、どうだったのか?」と成果を問われるようになる。
    • 何時間勉強しても、成果がなければ評価されない。
    • プロスポーツ選手のように、努力の量でなく、結果を見られる社会になってくる。

 そこにさらに、以下のような学校教育の大きな急速な変化が出てきて、河村先生は「教師個人で対処できる限界を超えている」「これでは追いつけないな」と感じたそうです。

  • 育成目標の変化・急拡大
    • 主体的・対話的で深い学びへと学び方が変化。
    • アクティブラーニング、インクルーシブな学び。
    • 先生方の仕事の増大、多様化。
  • ICTの積極活用
    • 個別最適化。協働学習。
    • スピードが求められていく。
  • チーム連携
    • お題目ではなく、しなくてはやっていけない。
    • 人材不足。最少人数でずっとやっている。
  • 働き方改革
    • 仕事は減らない。徹底的に効率化するしかない。
    • チームで、ICTを使いながら、という流れが来る。

 「教師個人で今までどおりやっていてもだめ。次の10年は、いままでやってきたことをICTを使ってやっていこう」と考えた河村先生は、これまで学級生活の満足感を測ってきたQUをベースに、WEBQUを開発されたそうです。

学校にはなぜWEBQUが必要か

 WEBQUは、子どもたちがWeb上で質問に答えることで「各児童生徒の特性と支援領域」「学級集団の状態の強みと弱み」が結果として提示される学級経営サポートシステムです。

 WEBQUが、大きく変化を迎えた学校において効果をなぜ発揮できるのかを、河村先生は3つのポイントにまとめて説明しました。

  1. アクティブ・ラーニングを推進する学級づくりの指針が提供される
    • いままでのQUでは、クラスの様子をマップで提供していた。そのマップを見て「どうすればいいか」を先生が自分で考えて次の一手を打っていた。
    • WEBQUでは、先生が結果を自分で読み取らなくても、学級一人ひとりの児童生徒の状態もすぐにわかるようになっている。ハイリスク群の子どもたちを特定して抽出できる。コロナ禍で、孤独孤立も増えている。そうしたことが具体的に明示される。
    • WEBQUでは、蓄積されたデータをもとに、「同じような状況で、うまくやっていた先生はこうやっていましたよ」と教えてくれるナビ機能を提供している。
    • ナビ機能を利用するかどうかは先生が選べる(カーナビと同様。最後に道を決めるのは自分)。対応の指針があることで助かる先生がいる。
  2. 入力し終えたら、“瞬時に”分析されて、結果が出力される
    • WEBQUの質問に子どもが答えると、すぐに結果が出る。
    • 困っている子どもは、すぐに対応してほしい。すぐに校内研修ができる。先生のモチベーションが高まっているときに一気に活用できる。
  3. 学級集団づくりを、校内のチームで対応できるように、データを可視化し、共有・活用できるシステムを有している
    • データを可視化、共有・活用できるようにしている。
    • 紙で印刷すれば、担任の先生がしまってしまえば他の先生は見られない。
    • 一人でやる時代は終わった。学年担任制なども出てきている。一人だとどうしてもミスが出る。複数の目でやっていく時代になってきている。
    • 管理職も主幹教諭も結果を見られるように、管理職画面も主幹教諭画面もある。
    • 学力テスト結果との関連検討機能もついているので、「わかっていないだけでなくて、学習意欲が落ちているのでは?」とか「やる気はあるけれどクラスでいやなことがあったのではないか」ということが分析できる。

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WEBQUでどんなことがわかるようになるのか

 WEBQUの結果画面では、子どもたち一人ひとりの診断結果を個人票として見ることができます。そのなかで、満足度得点や意欲得点、学級満足度を見ることができます。
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 また、いじめや不登校の問題、学習意欲の問題を確認することもできます。例えば、学級満足度尺度の結果をまとめて見ながら、「からかい」や「孤立」などの条件を設定して絞り込んで結果を見ることができるようになっています。
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 WEBQUでは、学級集団の状態を、安定度と活性度のバランスの視点でカテゴライズします。安定度と活性度について、それぞれスコアが高いとどうなるか、スコアが低いとどうなるかを、河村先生は以下のように説明されました。

  • 安定度
    • +:学級内の人間関係の落ち着き、型にはまった動き、団結力が高まる。
    • ー:学級内の人間関係の固定化、同質的な行動ができない者を排斥する。新たな発想が生起しない。
  • 活性度
    • +:学級内の個人の個性が尊重される、自由に考えを発信しやすい。
    • ー:メンバー間のつながりが希薄化しやすい、集団の統率がしにくい。

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 WEBQUでは、安定度5段階のスコアと活性度5段階のスコアのバランスを見ていますが、ここで目指すべきところも変化してきていると河村先生は言います。

  • 安定度
    • 「協働活動が最低限できればいいな」「リーダーが固定化しているかもしれないが、集団活動はできている」として、安定度のスコアが「4:固定化」で安心してしまっていた。
    • これからは、「5:安定化」を目指さなければならない。アクティブラーニングは、フラットな人間関係のなかで、フラットに相互作用をしていなければいけない。
  • 活性度
    • これまでは「3:遂行的」のところを目指していた=遂行だけできていればよしとされた。
    • アクティブラーニングをするようになると、言われたことを素直にやるだけではだめ。知識を「活用」し、新たに「創造」できなければいけない。

 安定度と活性度のバランスで学級集団の状態を見るようになって、今までは「ゆるみ型」で終わっていたのが、「ゆるみ型-流動-停滞」であるとコメントが出せるようになったそうです。そして、どうすればいいかの「アドバイス」も出せるようになっています。
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WEBQUを学校経営へどう活かすか

 WEBQUには、管理職・主幹教諭が見られる画面があります。管理職・主幹教諭の先生方と校内のWEBQU担当者が連携することで、大きな学校経営の方針と校内のWEBQUの結果を常に突き合わせていくことができます。
 WEBQUでは、ワンクリックで以下のようなデータを分析することができるそうです。

  • 全国データとの比較
  • 学校内での各学年・各学級のバラツキを把握する

支援すべき学級の優先順位、視点を把握する

  • 校内の特別なニーズを持つ児童生徒を把握する
  • 校内のいじめ・不登校の可能性の高い児童生徒を把握する

 子どもたちは1年間でどんどん状態が変化していきます。WEBQUですぐに結果を見て、どうすればいいかを担任の先生だけでなく、管理職・主幹教諭も一緒に考えていくようにしなければなりません。
 河村先生は、以下のポイントをWEBQUを使うことで実現できると言います。

  • 学級経営は担任の先生に丸投げではダメ。学級経営の責任は、チーム学校で担う。最低限学年でチームを組みたい。
  • 学級担任1人では、気がつかないこともあるし、気がつきたくないこともある。チームであたることでそこにも対応できる。
  • はじめはQUの紙さえあればと思ったが、それを横から言葉で言ってくれる仲間がいることは大事。先生たちが協働するしくみがある。

 こうしてWEBQUをチーム学校で使うことで、「学校経営の大きな方針のもとに、学級集団づくり、学級経営が行われていく」ことが実現されます。
 「すべての教育活動が、組織対応で展開されていくようになる」ために、学校全体でWEBQUを活用することは有効だと感じました。

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)

横浜市立勝田小学校 PTA活動(授業)レポート No.2(2021年10月13日)

 2021年10月13日に、横浜市立勝田小学校を訪問させていただきました。6年2組の授業を参観させていただいた後、サポートに入っていた保護者の方にお話を伺いました。

 一人1台のiPadを活用する授業のサポートに入ろうと思ったきっかけを伺うと、「子どもが一人1台を学校で使うようになって、子どもが先に進んでいく。それに取り残されないように、自分も知識を少しずつでも取り入れたいと思った」「授業で子どもたちが一人1台のiPadを使って何をしているかがわからなくならないように」というふうにおっしゃっていました。
 iPadを活用した授業も、勉強の仕方も、いままさに現在進行型で学校で行われ始めているところなので、PTAの方が関わりながら、「どんな授業がされているのか」に興味を持ってもらうことは、先生方にとってもいいことだと思います。

 実際に授業に入ってみると、どんなところでつまづいているかもわかります。内容的なところで手が止まっている子どもたちには、先生が声をかけてあげる必要があると思いますが、操作的なところで手が止まっている子どもには、PTAの方のサポートがありがたいこともあると思います。
 この日の授業中にも、「iPadとキーボードの接触が悪くて認識されないことが多い」という伝達があり、キーボードが認識されない子たちのサポートもしていました。そうしたハード面でのトラブルにも、「こうして対応してください」というふうに情報共有がされれば、それぞれのクラスで対応ができるようになっていくと思います。
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 勝田小学校のPTA会長 宮﨑亮 さんに、どのようにPTAの授業サポートを運用しているのかを伺いました。「詳しくなくてもいいですよ」と伝えて有志を募り、現在は18人が参加してくれているそうです。
 ICTの使い方については、授業のなかでやっているうちに覚えていく、というだけでなく、ICT支援員さんにロイロノート・スクールの研修もしていただいたそうです。
 また、授業サポートに参加している保護者の方々とは、誰でも参加できるLINEオープンチャットを使って情報共有をしているそうです。翌週の授業予定が木曜日に決まり、それを金曜日にPTAで共有して、サポートに入れる方を募る、という方法をとっています。
 また、スケジュールだけでなく、それぞれの学年で「どんなふうにiPadを使っているのか」「どんな課題があってそれにどう対応したのか」ということについてもLINEオープンチャットで共有しているそうです。

 PTAでサポートに入っている方々だけでなく、勝田小学校の職員室内での情報共有も進められています。
 毎週火曜日には、1年1組の先生、2年1組の先生、3年1組の先生…というように縦割りで集まって、9月に使い始めた一人1台iPad活用の情報交換をしているそうです。学年ではなく縦割りで情報共有をする場も設けることで、学年によって違うiPadの使い方の幅が広がると共に、「次の学年ではこうしたことができるようになっていればいい」という視点を得ることもできると思います。

 この日サポートに入ってらっしゃった保護者の方は、「コロナで来られない時期が長かったので、学校に関われてうれしい」ともおっしゃっていました。PTAを通じて学校が変わっていく過程をサポートするひとつの形ではないかと思います。
 また、学校側から見ても、学校が行いたい授業の形を、保護者の方にも理解してもらうことができるので、ただ授業をサポートしてもらう以上のメリットがあるのではないかと思いました。
 こうしてPTAができる範囲で授業をサポートしていく形は、他の学校でも一人1台の端末活用を日常化するための手法として有効なのではないかと思います。

(為田)

書籍ご紹介:『ネットは社会を分断しない』

 田中辰雄・浜屋敏『ネットは社会を分断しない』を読みました。僕はネットを含めてICTが大好きで、もっと社会全体が使えるようになればいいと思っています。でも、ネットが誹謗中傷やコミュニケーションのすれ違いなど良くない使われ方もされていて、ときに「ネットが社会を分断しているのかもしれない」と思うこともあります。
 「ネットって、どう使うべきなのか…?」と悩むことも多いので、この本のタイトルに非常に興味を惹かれました。

 「まえがき」でも、そうした問題意識について、10万人規模のアンケート調査の結果を見ていきます、ということが書かれていました。

ネット上では極端な意見ばかりが目立ち、彼らは際限なく罵倒と中傷を繰り返す。多様な人々の相互理解を目指すような落ち着いた議論はほとんど見られず、「ネトウヨ」あるいは「パヨク」と呼ばれる極端な人々が、両端の陣営に分かれて敵を攻撃し合う。「ネットが作り出したのは、争いばかりの分断された世界ではないか」「ネットによって社会は分断されていくのではあるまいか」――最近のネットを論じる論調にはこのような悲観論が見てとれる。
本書はこの悲観論が事実かどうか、すなわちネットによって社会が分断されるかどうかを調べたものである。そのために10万人規模のアンケート調査を行った。そこで得られた結果は予想に反し、悲観論を否定するものであった。すなわち、ネットは社会を分断しない。むしろ相互理解を進めている可能性すらある。罵倒と中傷が飛び交うだけのネットが社会を分断しないとはどういうことか、疑問に思う方もおられよう。この結論に納得するかどうかは本書を読んで確かめてもらうほかない。(p.3-4)

 第2章では、「ネットが社会を分断した」という説について、さまざまな説が紹介されます。エコーチェンバー、フィルターバブルなどの概念や、デジタルマーケティングの特性などが紹介されていきます。
 その後で、「いや、でもそうではないとも言える」というのが調査から説明されていきます。

第2章ではネットが社会を分断するという説について説明した。そかし、実はこの説と大きく矛盾する事実がある。
それは分断が進んでいるのは、年齢別に見ると中高年だという事実である。ネットのせいで分断が進むならネットをよく使う若年層ほど分極化し、分断されているはずである。それなのに、事実は全くの逆であり、分極化しているのはネットを使う若年層ではなく、ネットを使わない中高年である。これはネット原因説に疑問を投げかける。(p.84)

第2章で、フェイスブックツイッター、ブログというネットメディアを利用する人ほど政治的に過激であり、分極化が進んでいると述べた。つまりネット利用と分極化には正の相関関係がある。しかし、だからといってネットを利用すると分極化するとすぐには言えない。
なぜなら因果が逆の可能性があるからである。元々政治的に強い主張を持つ過激な人は一定数、世の中に存在しており、彼らは世の中に言いたいことが多いのであるからネットメディアも積極的に使おうとするだろう。その結果、ネットメディアを使う人に政治的に過激な人が増えたのかもしれない。そうだとすると因果関係としては、まず分極化が先にあってそれからネットメディア利用が起こったのであり、ネットメディアを利用したせいで分極化したわけではあい。このように相関があっても因果は直ちには決まらず、因果の方向は別途調べる必要がある。(p.104)

 なるほど、因果関係が逆なのではないか、というのはおもしろいと思いました。
 それだけでなく、ネットを使うことで、自分の意見ばかりにこだわるのではなく、幅広い意見に接することができるようになり、むしろ考えを変えるような人たちも増えてきている、というふうに調査結果が紹介されていきます。
 この本を読んでみて、さまざまな興味深い調査結果を知ることができました。より詳しく、著者の田中辰雄 先生が説明しているサイトなどもありますので、参考になると思います。
synodos.jp

 「あとがき――ネットの議論を良くするために」のなかでも、改めてメッセージが簡潔にまとめられています。

最後に本書のメッセージをまとめておこう。
現在のネットを見ていると民主主義に資するような生産的な議論はほとんど不可能のように思える。ネットで見かける議論は罵倒と中傷だけであり、相互理解を進める生産的な議論などめったに見かけない。両極端の意見の果てしない攻撃の応酬を見ていると社会は分断されてしまったように見える。
しかしながら、仔細に事実を見ていくとそうではない。ネットの利用で人々が極端な意見に走り、社会が分断されているという事実はない。むしろ大半の人々はネットの利用でどちらかといえば穏健化している。これはネットを通じて多様な意見に接するようになったからと考えられる。ネットで接する相手の4割は自分と反対の意見の人であり、人々は自分と異なる意見にも耳を傾けている。その結果、ネットを使う若年層ほど穏健化しており、分極化していない。これは民主主義にとって良い変化である。自分の意見と異なる意見に触れ、それへの理解が進むことは安定した民主主義にとって大事なことだからである。
振り返ってみると、異なる人への理解はネット草創期の人が抱いた期待であった。その期待は消えたかに思えたが、若年層を中心に実は実現しつつある。ネットには極端な意見を拡大して見せる特徴があるので分断が進行しているように見えるが、それは見かけのことであり、実際には良い方向への変化が起きつつある。本書の最大のメッセージはこの良い方向への変化を指摘することであり、いわば本書はネットへの新たな楽観論と受け取っていただいて結構である。(p.233-234 )

 一方で、本当にそうだろうか。ネットが分断している」と原因付けるのも違うとは思うが、一方でそれほど楽観的でいられるわけではないのではないか、と思う自分もいます。
 この本は、2019年に出版されたものなので、その後なんらかのディスカッションがされていたりするのかなと思い、調べてみました。

www.huffingtonpost.jp

 「ネットは社会を分断する」「ネットは社会を分断しない」というところでの真偽には僕はあまり興味はありません。この本のなかで、「むしろネットが社会を穏健にしている」とも書かれていることには希望も感じます。僕は、学校という場を通じて、「ネットでさまざまな意見に触れて、自分の意見を変えたりもできる」使い方を学んでもらえるようにするには、どういう教え方がいいのか、どういう教材が必要か、というところに注力していきたいと思っています。
 その、自分の実現したいゴールのために、非常に参考になる本だと思いました。

(為田)