教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

授業で使えるかも?:Math Solverで1次不等式の問題を解いてみた

 以前から気になっていた、Microsoft Math Solverを手元にあったiPhoneにインストールして使ってみました。数学の問題を認識して解法を表示してくれるアプリです。

Microsoft Math Solver

Microsoft Math Solver

 手元にあった数研出版の「最新 数学Ⅰ」の1次不等式の問題(p.45)をスキャンしてみました。「スキャン」のボタンをタップして、問題範囲を選択してからシャッターボタンを押すだけです。
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 問題が認識されると、画面に問題が表示されます。同じ数式でも、そこから「何を求めるか」はいろいろあるので、複数の解が表示されることもあります。例えば、不等式であれば、不等式を解くだけでなく、グラフで表すこともできます。
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 最終的な解だけではなく、「解の手順」をタップすることで解の手順を表示させることもできます。
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 問題は撮影するだけではなく、「描く」のボタンをタップして手描きで問題を書いて読み込むこともできます。
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 こうしたアプリは、「便利ではあるけれど、宿題をこのアプリで解くズルが出るのではないか?」などというコメントをいただくこともときどきあります。問題集の正答を写してしまうのと同じように、自分でわからないところがあったときに、Math Solverで実際に解法を段階ごとに追ってみて、授業内容を思い出すこともあるだろうと思います。どのように使うべきなのかについても合わせて紹介をしていくといいのではないかと思います。

 どれくらいの問題まで認識ができるのか、こうしたフォーマットでの勉強の仕方がどれくらいの学年のどの領域の問題に適しているのか、ということについては、まだまだもっと使い込んでみないとわからないと思いましたが、学習方法の一つの選択肢として、おもしろそうだと感じました。

(為田)

京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.6(2020年1月15日)

 2020年1月15日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。京都教育大学附属桃山小学校は、文部科学省の学校ICT活用フォーラムの視察先の一つとして選ばれていて、午後に学校ICTを活用フォーラムが行われましたので、そちらにも参加させてもらいました。

 授業見学後に、全体説明会が行われました。桑名良幸 教頭先生から、見学させてもらった授業の背後にある設備やシステムなどについての紹介がありましたので、メモを公開します。

ネットワーク

 最初に1人1台のiPadが接続されているネットワークについての説明がありました。ネットワークのセキュリティは2つのポリシーによっているそうです。

  • 個人情報
    • 高度な情報機密が必要
    • 厳しい設定になっている
    • 開けないサイトも多い
  • 学習データ
    • USEN WiFi回線を活用
    • 児童のクリエイティビティを伸ばすためにメディア・コミュニケーション(MC)もあり、メディアとの付き合い方を学んでいる
    • 制限をかけるよりも使う
    • 使った時に起こることや使い方についての指導をする
    • 不必要な制限は外す

iPadとアプリケーション

 次に、1人1台のiPadで機能しているアプリケーションなどについての説明がありました。

  • iPadを活用する利点
    • 軽い
    • できることの可能性が多い
    • 直感的に使える(1年生でもロイロノート+iPadで指で書き込める)
    • 1年生~3年生は共有
    • 発達によって使う頻度が違う。計画的に使うべき。
    • 4年生以上は学習の質が変わってくる。ここからは一人1台使わせる。深い学び。
  • ロイロノート
    • 桃山小学校の学びのメインとなっているツール
    • 子どもたちの思考を止めない。再構築する。
    • デジタルシンキングツールで深い学びへの到達
    • 日々の学習記録を蓄積。思考の形成的評価。ポートフォリオ
  • G-Suite
  • Everyone Can Create
  • BOX
  • Classting
    • 学校だより、学級通信をデジタル配信、ペーパーレス化
    • 保護者の登録が簡単
    • 教育用で、クローズドな運用が可能
    • カラーで写真も見せられて、保護者にも好評
    • 保護者の理解を得て実現
    • リアルタイムで写真を送れる
    • 学級通信の代わりに出せる
    • 予約配信もできるので、時短効果もあり

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ハードウェア環境

 順番は前後するのですが、全体会後に校長補佐の児玉先生から、教室の備品についてのお話も伺いました。「少しの予算と工夫で、教室環境は大きく変えられる」と児玉先生はおっしゃっていました。

    • iPadを1人1台で使うようになり、教科書やノートを置くと、机が狭い。
    • 京都教育大学附属桃山小学校では、天板だけを変えている。
    • コストをかけずに変えることができる。
  • モニター
    • モニター+Apple TVで整備可能

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質疑応答

 最後に質疑応答がありました。参加者からの実務的な質問が多く出ていたのが印象的でした。

Q ICT支援員は?

  • ほしい、居たらいいと思う。得意な職員+企業のサポート。
  • 操作をシンプルにしたいという点でも、iPadが強い

Q iPadが1年~3年で共有、データの保存先は?

  • メインで使っているロイロノート・スクールはクラウド化。卒業するまではもちろん、卒業後にもクラウドにデータがある。
  • 純正アプリについては、G Suiteのストレージを使っている。

Q ロイロノート、GoogleのIDとパスワードは児童生徒が使ってトラブルは?

  • よくある質問だが、IDとパスワードを自分で管理するのは当然。
  • 子どもたち自身が自分で管理できるように指導する。

Q タブレット管理 持ち帰りは?

  • 年間での故障はほぼない。あっても保険で対応できる範囲。
  • 持ち帰りは考えていない。今後BYODをいずれは検討するかもしれない。
  • アダプティブラーニングをやるときに考えるかも。

Q 否定的な先生の意識改革は?

  • 研修を実施している
  • 組織づくりは学校の問題
  • 1学年(2学級)で、ICT+情報活用能力の担当が学年に入るようにしている
  • 授業で使うなかでできるようになる。
  • 核になる人が必要になります。

まとめ

 授業と学校ICT活用フォーラムの両方を見学させていただくことができました。1人1台PCの整備については、もちろん進めていかなくてはなりませんが、「入った後に、どういう学校/授業が現れるのか」ということについての準備もしていかなくてはなりません。先進的に取り組んでいる京都教育大学附属桃山小学校の知見が、参加された皆さんの自治体・学校へとどんどん広がっていけばいいと思います。お手伝いができる部分は、何でもしていきたいと思っています。


(為田)

京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.5(2020年1月15日)

 2020年1月15日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。京都教育大学附属桃山小学校は、文部科学省の学校ICT活用フォーラムの視察先の一つとして選ばれていて、午後に学校ICTを活用フォーラムが行われましたので、そちらにも参加させてもらいました。

 学校ICT活用フォーラムの休憩時間にもう2つの授業を見学させていただけたので、そちらの様子も、見学できた範囲でレポートしたいと思います。

5年生 社会

 5年2組では、樋口万太郎 先生が社会の授業を行っていました。教室に入ると、児童が「わたしたちは、テレビの情報をどのように生かせばよいのでしょうか」というテーマでグループごとにプレゼンテーションをしていました。iPadの画面をモニターに映し出してプレゼンテーションをしています。

 それぞれのグループのプレゼンテーションを聴いて、クラス全員で「大切なキーワードを抜き出す」という活動をしていました。児童は、みんなそれぞれのやりかたでキーワードの抜き出しと内容のまとめをしています。iPadにペンで手書きをしている児童もいれば、ノートに鉛筆でまとめている児童もいます。
 こうして、さまざまな方法にトライしてみて、自分にあった方法を身につけられることは非常に大切なことだと思います。
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 また、樋口先生自身も児童と同じプレゼンテーションを聴いて、自分のiPadでメモを作っていました。そして、iPadの画面を録画しながらプレゼンテーションの音声を録音していました。
 画面を再生すれば、真っ白なノートから、どんな順番でメモをとっていったのかを、児童と一緒に見直すことができます。こうして、先生がどうやっているのかを同じ立場で児童が見られるというのもいいな、と思いました。
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6年生 メディア・コミュニケーション(MC)

 6年2組では、木村明憲 先生がメディア・コミュニケーション(MC)の授業を行っていました。京都のCMを作っていましたが、グループごとにパンフレットを作っていたり、電子書籍を作っていたり、動画を作っていたりします。紙でポスターを作っている人もいます。iPadを使うことが目的ではなくて、iPadはCM作りの手段として活用されていました。
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 このクラスでは、G Suiteを活用していて、一人ひとりが自分のGoogleアカウントをもっています。
 Googleフォームを活用して、自分たちでアンケートを作っているグループもありました。自分たちのグループのGoogleフォームを作って公開したら、QRコードで読み込めるようにしたら、たくさんの人に簡単に答えてもらうことができます。
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 さまざまなツールをいろいろな形で活用できるようになることで、児童の学びの選択肢がどんどん広がっていくと感じました。

 No.6に続きます。
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(為田)

書籍ご紹介:『現実はいつも対話から生まれる 社会構成主義入門』

 ケネス・J・ガーゲン メアリー・ガーゲン『現実はいつも対話から生まれる 社会構成主義入門』を読みました。「Help Schools/Education Become Future Ready」という行動指針をもって活動をしているなかで、何人かの方に「アクションリサーチを学んだことがありますか?」「社会構成主義の本を読んでみたら?」と薦められたことがあり、そのなかで推薦された一冊でした。

現実はいつも対話から生まれる

現実はいつも対話から生まれる

 読んでみての感想は非常に学びが多く、本当におもしろかったです。また、仕事をするうえで大切にしなければならないな、と感じることもたくさんありました。自分の中に留めおきたいと思ったことを中心にメモとして公開したいと思います。

 まずは、大学でもまったく触れてこなかった、「社会構成主義とは何か?」というところからまとめておきます。

社会構成主義はもともとデュルケームなどにより、社会学の考え方として生まれたものです。「現実」はそれとして存在するのではなく、人々の頭の中で作り上げられるという考え方でした。
(略)
ケネス・ガーゲンは、社会構成主義の考えは社会のすべてが幻想だとか実存が存在しないということではないと主張し、人は対話(ダイヤローグ)を通して意味をつくっていくのであり、「言葉が世界を創造する」と述べて社会構成主義に新しい価値を与えました。(p.3-4)

 ここで書かれている、「「現実」はそれとして存在するのではない」という考え方は、大学のゼミで学んでいた、意味づけ論に非常に近いと思っています。

コトバの「意味づけ論」―日常言語の生の営み

コトバの「意味づけ論」―日常言語の生の営み

 意味づけ論は、伝えたいと思う言葉に意味はなく、そこに意味をつけるのは、言葉を受け取る側なのだ、という考え方です。したがって、どんな意味づけをするかは言葉を受け取る側がどういう思考をする価値の枠組み(フレーム・オブ・レファレンス)を持っているか、にかかってきます。僕は、「だからこそ、このフレーム・オブ・レファレンスを育てるために教育が大切だ」と思って、教育業界に進みました。
 そうしたことを思い出させてくれる箇所もいくつもありました。

説明が「正確」かどうかは、「共通の伝統」にかかっているのです。(略)
伝統の一つひとつに、それぞれ特有の判断基準があります。ですから、裁判での証言が真実化どうかというのは、その証言者が、私たちと同じように言語を使っているかどうかによるのです。デベロッパーが新しく地域を開発しているのか、それとも、空き地を破壊しているのかということも、「開発」という言葉をどのような意味で使うかにかかっています。
その意味で、「真実を話す」ということは、「ある特定のコミュニティ(共同社会)の伝統を支持する形で話す」ということなのです。(p.29-30)

 コミュニティごとにそれぞれ伝統があり、コミュニティをまたがる形でのコミュニケーションは、そのことを念頭においてしなければなりません。

ヴィトゲンシュタインによる定義では、私たちの「言語ゲーム」は、「生活形式」と彼が呼ぶ、より大きな行動パターンの中に組み込まれています。実際、生物学者、美容師、銀行家はそれぞれ違った「生活形式」の中にいます。
「言葉」は、これらの異なる「生活形式」を一つに束ねる助けとなっていると同時に、「生活形式」が「言葉」に意味を持たせているのです。また、それと同時に、これらの「生活形式」が私たちの世界に「限界」をつくってもいます。(p.29-30)

 ヴィトゲンシュタイン言語ゲームの話も、ひさしぶりに読みましたが、やはりおもしろい。

私たちはみな、「事実」と「価値観」との違いを知っています。
「事実」とは、「確かなもの」で、客観的であり、願望や政治、宗教といったバイアスがかかっていないエビデンス(証拠)に基づいた記述です。
一方、「価値観」とは、「脆弱なもの」で、主観的であり、確固たる基礎もなく、単純であり、個人的に心を注いでいるものを表しているに過ぎないと考えられています。
私たちは「事実」には同意しなければなりませんが、「価値観」に関しては、それぞれ違うものを持つ権利があるとも考えられているでしょう。
社会構成主義は、この長い間に培われた「事実」と「価値観」の区別に挑戦します。(p.33)

 「事実」と「価値観」の違いは、「学校にICTを導入すべきか」という仕事に関わるところでも、気をつけて行動しなければならないところだな、と思っています。自分のいる場所から見えることは、多くの場合「価値観」であり、「事実」ではないかもしれない、と思ってコミュニケーションを取りたいと思っています。
 僕は、学校はガラガラポンで作り直そう、とは思っていません。今まで先生方が作り上げてきたもののなかに残したいものもたくさんあります。ただ、それもすべてが「事実」ではなく「価値観」でしかないものもたくさんあるのだと思います。
 この間を、どのように繋いでいかなくてはならないのか、ということを懸命に考えていきたいと思います。
 そうした考え方についても、書かれていました。

社会構成主義は、どの伝統、どの価値観、どの宗教、どの政治的イデオロギー、どの倫理観が、究極的あるいは超越的に正しいか間違いかを決めるという責務から、私たちを解放します。
構成主義の視点では、あるグループにとっては、すべてが正当かもしれないのです。構成主義者の考えは、「徹底的な多元主義」、つまり、さまざまな名前のつけ方、さまざまな価値の置き方に心を開くよう私たちを誘います。
自分自身の伝統の優位性を主張するための基盤を持たないので、他の伝統に関心を持ち、敬意を払うという姿勢が生まれるのです。自分の伝統には存在していないもので、他の伝統が提供できるものには何があるでしょうか?自分の伝統にあって、他の伝統にとっても価値があって共有できるものは何でしょうか?(p.40-41)

構成主義の概念に関わることによってもたらされる最も興味深いことの一つは、それがもたらす「止まることのないクリエイティビティ(創造性)」です。
唯一無二の真実を探し求める人は、世界をたった一つの固定された言葉へと単純化しようとします。唯一無二の真実を宣言するということは、言葉を「急速冷凍」して、その結果、新しい意味が現れる可能性を狭めてしまうということです。
一方、構成主義者が支持するのは、「常にいつまでも開かれたままの対話」です。そこには常に、もう一つの声、もう一つのビジョン、もう一つの構想や修正案という余地があって、「関係」にはさらなる広がりがあります。(p.49)

 ここで書かれている、「常にいつまでも開かれたままの対話」ができる人でありたいと思っています。学校の先生の声を聴き、一緒に学校をFuture Readyにしていく仲間として活動していきたいと思っています。

 実際に、教育に関しても書かれている箇所がありました。

従来型の教育は個人主義に根差しています。伸ばすべきは一個人の知性であり、学生は本人の成果に基づいて評価され、各自に成績がつけられます。
しかし、構成主義的な概念は、人間観と政治的イデオロギーの両面からこの個人主義に疑問を投げかけます。
先に、個人の「考え」とされるものは、実は関係性に身を浸すことで得られる副産物なのだと論じました。たとえば「正義」や「責任」を説明する言葉を持たないのに、どうやってそれらについて思考できるでしょうか?
また、これまで見てきたように、個人を社会の基本単位にすれば、そこから生まれるのは分離と孤立の文化です。かたや、私たちがリアルだとか合理的だとか大切だとかみなすことすべてが関係性の副産物だとしたら、関係性のプロセスを教育実践の中心に据えるのも理に適ったことなのです。(p.115-116)

 実際に教育者のなかで「関係性」を取り入れた実践についても続けて次のように書かれていました。

教育者の間で関係性を取り入れる動きが加速しています。この動きから生まれた大きな成果が協働学習の登場です。これは、他者と共に学習を行い、他者の中に身を置くことによって学びを得るものです。先に紹介した対話を取り入れた実践は一つの例に過ぎません。
関係性を導入する動きの中でも、おそらく一番よく知られているであろう形態が「コラボラティブ・ライティング(協働作文)」です。
小学校から大学まで、ライティング担当教師は個人ごとに課す作文の課題ではなく、コラボラティブ・ライティングを実験的に取り入れています。
コラボラティブ・ライティングでは、生徒は2人1組となるか、小さなグループの一員となります。いずれにせよ、生徒は最終原稿を一緒に仕上げるのです。
教師も実感していることですが、この「一緒に取り組む」プロセスにはグループメンバー全員の強みやスキルが活かされます。
例えば、抽象的概念を扱うことを得意としている生徒もいれば、説明に使うのにぴったりの物語を提供してくれる生徒もいるでしょう。奇抜な考え方をする生徒やグループをやる気にさせてくれる生徒もいるでしょう。
メンバーそれぞれが全体に対して自分なりのやり方で貢献することになります。このように生徒が強みを活かして貢献できるようになるだけでなく、互いの姿から学ぶことも可能になります。(p.116-117)

 TwitterなどのSNSでよく見られる炎上やコミュニケーションのすれ違いなどに関しても、社会構成主義と絡めて考えられそうなことが多いように思いました。

伝統的に知識の探求は「真実」の探求と密接に関係していました。しかしこの伝統とは対照的に、社会構成主義者は「知識」を特定の思い込みや信念、価値観に導かれた各コミュニティの産物として理解しています。
「すべてに当てはまる真実」ではなく、「コミュニティ内での真実」という認識をしているのです。
「無知だ」と言われる人は、すべての知識に欠けているのではありません。ただ、彼らを無知だとみなすコミュニティに属しているだけなのです。彼らは、別の種類の知識によって機能しています。
たとえば数学の教授は野球選手より物知りだというわけではありませんし、歴史学者はレンガ職人より物知りだというわけでもありません。それぞれの集団の知識が異なる方法で異なる目的のために機能するのです。
知識は複数存在するという認識への発想転換が、私たちが以前から行っていた知識を構成する行為に対し、社会構成主義的な疑問をさらに投げかけるきっかけになります。(p.131-132)

 「教育をFuture Readyにする」などという大きなテーマは、非常にたくさんの分野にまたがって問題解決をしなくてはならないと思います。その際に、分野を越境していくことは本当に大切だと思っています。

社会構成主義者の課題は分野の境界を曖昧にすることです。私たちの最高の幸福は、「クロストーク」にあります。
「クロストーク」とはすなわち、複数の現実や価値観が交わることを可能にするような対話のことです。現実や価値を共有することができないと、価値や新たな伝統が生まれる可能性を見落としてしまうという状態を招きます。(p.135)

 アクションリサーチがどのように存在しているかについても紹介されていました。いま自分がしている仕事の仕方がアクションリサーチとどれくらい近いのかは、僕自身にはまだ評価できないのですが、「新しい可能性を生成する」ことに貢献できているのだとしたら、本当にうれしく思います。

研究者はリサーチ利用の可能性に関心を寄せる傾向にありますが、それは未来を予測する目的で過去を記録するためではなく、新しい未来を直接つくり出すためです。
この狙いに向けて特化されているのがアクションリサーチです。1970年代に始まったアクションリサーチは、当時の政治や知識開発の盛り上がりと時を同じくして起こりました。
当時の研究者は研究所にこもって人や動物を研究し、仲間の研究者や長期的な科学の成果のために雑誌論文を発表するということは目指していませんでした。彼らはむしろ、外に出て、必要とする人に奉仕したのです。そのような研究が重苦しい政治情勢や経済状況から人々を解放することを促し、新しい生活の可能性を生成することを望んでいました。
この特殊な形式のリサーチ関与は長年にわたって規模が拡大されていますが、特にイギリス、スカンジナビア南アメリカで顕著です。1990年代後半にコロンビアのカルタヘナ市で開催された「アクションリサーチ・ワールドシンポジウム」には、61カ国から2000人もの代表が集結しました。
現時点では、アクションリサーチの主な目的は苦痛の緩和や正義の確立、争いの縮小、民主的プロセスの増進などを含むものです。アクションリサーチは、組織開発や教育、コミュニティ開発、セラピーなど、さまざまな実践の場で役立っています。(p.161-162)

 読み終えて、自分の仕事の整理をすることもできたし、これからのことを考える機会にもなりました。アクションリサーチも社会構成主義も本当におもしろい。「他にもこれ読んだ?」という文献などがありましたら、ぜひご紹介いただきたいです。
 また、学校をサポートする立場の企業の方々と一緒に、このテーマで何かディスカッションやミニ講義などの場もできたらうれしいな、と思いました。興味がある方は、SNSやこのブログを通じて、コンタクトしていただければと思います。

(為田)

京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.4(2020年1月15日)

 2020年1月15日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。京都教育大学附属桃山小学校は、文部科学省の学校ICT活用フォーラムの視察先の一つとして選ばれていて、午後に学校ICTを活用フォーラムが行われましたので、そちらにも参加させてもらいました。

 実際にiPadを活用した授業を見学することができましたので、それぞれのクラスに10分ほどしかいなかったので、見学できた範囲でレポートしたいと思います。

3年生 理科

 3年1組では、中西和也 先生が理科の授業を行っていました。電球がつくかどうかをみんなが見られるように、先生のiPadのカメラで撮影した映像をリアルタイムで大型モニターに接続していました。こうすることで、先生の手元での実験の様子を教室全体で見ることができます。
 学習課題としては、「どのようなものが電気を通す/通さないのだろうか」を考えます。児童の机の上にある一人1台のiPadでは、ロイロノート・スクールを立ち上げていて、そこにはカードがたくさん並んでいて、どれなら電球がつくのかを考える際の教材として使えるようになっていました。中西先生は、「1円玉は?」「ハサミは?」と質問し、みんなで考えていきました。
 最後に、「課題の解決のためにはどうすればいい?」と中西先生が質問すると、児童は「実験!」と答えていました。

 iPadを使うことによって手作業で行う実験などがまったくなくなってしまうわけでは当然ありません。iPad等のデジタルと、これまでの授業で大事にしてきた児童が自分の手でする実験を通しての「わかった!」という喜びは、両立するものです。これをどのようなバランスで両立させるのかが、先生方の授業設計力そのものだと感じます。
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1年生 国語

 1年1組では、山口翼 先生が国語の授業を行っていました。児童はiPadでロイロノート・スクールを立ち上げて、シンキングツールの一つであるフィッシュボーン図を使って、「ものの名前」の勉強をしていました。
 フィッシュボーン図の魚の頭の部分に「まとめてつける名前」を書き、背骨の部分に「1つ1つの名前」を書いていきます。児童は、キーボードを使わず、iPadに手書きで文字を書いていきます。例えば、「1つ1つの名前」のところに「ぞう」「ライオン」「チーター」「くま」「パンダ」と書いてあり、「まとめてつける名前」に「どうぶつ」というふうに書いていきます。
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 ロイロノート・スクールを使って、児童に提出をしてもらえば、先生の方でそれをまとめてみることができます。山口先生は、モニターに児童の作ったフィッシュボーン図を提示して、みんなで共有しながら考えていきます。
 自分ががんばって考えたもの、書いたものを先生はアナログでの授業よりもずっとたくさん見ることができますし、見せることもできます。こうしたやりとりができるようになったときに、どんな授業を設計すればいいのかということを、先生方は考えていかなくてはならなくなります。
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5年生 国語

 5年1組では、長野健吉 先生が国語の授業を行っていました。児童はiPadでロイロノート・スクールを立ち上げ、シンキングツールの一つであるピラミッドチャートを使って、評論文の筆者の考え(「判断できる人間になってほしい」)に説得力を持たせるために、どういった要素が入ればいいのかを考えていました。
 iPadを活用することで、ノートや教科書はどう使うようになるのだろう?という質問をときどき受けますが、教科書やノートもより一層見るようになっているクラスも多いように思います。児童は、教科書もノートもiPadも、学びの道具としてそれぞれの用途で使いこなしていきます。
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 授業をする側も同様で、長野先生はモニターに児童の作ったピラミッドチャートを映し出して説明しながら、ホワイトボードでの板書も行います。どういった形で児童の思考を活性化させるのか、一緒に考えていく場を作っていくのか、というのは授業を作る先生方の仕事であり続けます。
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 児童が自分で考える場面になると、長野先生はどんどん児童の間に入っていき、児童の考えを聴き、たくさんの質問を投げかけ、議論を活性化していきます。こうしたやりとりをする時間を作り出すことも、ICTが教室に入るメリットだと思います。
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 たくさんのことを書きたくなると、iPadのソフトキーボード(画面上で使うキーボード)よりも、外付けキーボードを使いたくなる児童が多いようです。京都大学附属桃山小学校では、外付けキーボードは自分で用意して持ってきているそうです。
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 学校ICT活用フォーラムの授業見学としては、以上の3つのクラスの見学で終了だったのですが、休憩時間にもう2つの授業を見学させていただけたので、そちらの様子もレポートしたいと思います。No.5に続きます。
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(為田)

京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.3(2020年1月15日)

 2020年1月15日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。京都教育大学附属桃山小学校は、文部科学省の学校ICT活用フォーラムの視察先の一つとして選ばれていて、午後に学校ICT活用フォーラムが行われましたので、そちらにも参加させてもらいました。
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 全部で参加者は60名ほどで、「児童1人1台コンピュータ」の実現を見据えたGIGAスクール構想のために、実際に1人1台を実現した学校でどのような授業が行われているのか、どのような設備が必要なのか、ということを視察しようという参加者の熱意が感じられました。

 副校長の原田勝之 先生から、「国立大学附属の学校の使命」として、以下のようなポイントをが紹介されました。

  • 実験的・先導的な学校教育
    • 地域における指導的・モデル的な学校としての取り組み
  • 次代の教員を育てる
    • 教育実習等のフィールド提供
  • 大学・学部における教育に関する研究への協力

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 まさに、こうした観点から、今回の学校ICT活用フォーラムなどで見ていただく授業などの研究をされている先生方がたくさんいらっしゃいます。特に、情報教育に関しては、相手意識を大切にした子どもを育てるべく、さまざまな実践が行われています。
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 これまで、京都教育大学附属桃山小学校が、時間をかけて少しずつ積み上げてきた環境を、参加者の方が学び、それぞれの自治体へと持ち帰り、それぞれの自治体・それぞれの学校に合わせた形で実装できるように、何かお手伝いができればいいな、と思いました。

 No.4に続きます。
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(為田)

弘前市立千年小学校 授業レポート まとめ(2019年12月6日)

 2019年12月6日に、弘前市立千年小学校を訪問し、ロイロノート・スクールを使った4年1組の算数の授業を見学させていただきました。また、千年小学校でどのようにiPadを運用しているのか、学校での仕組みや教育委員会での取り組みについてレポートしました。
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(為田)