教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

森村学園初等部 FESTIVAL OF CODING 2021 レポート まとめ(2021年7月20日)

 2021年7月20日に、森村学園初等部を訪問し、榎本昇先生が担当する「FESTIVAL OF CODING」を参観させていただきました。FESTIVAL OF CODINGは、6年生が6人だけが受けられる夏休みの特別プログラミング授業です。午前のmicro:bitを使った授業と、午後のRootを使った授業の様子をレポートしました。
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(為田)

『コンヴィヴィアル・テクノロジー』 ひとり読書会 No.7「第6章 コンヴィヴィアル・テクノロジーへ」&「第7章 万有情報網」

 緒方壽人さんの『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ #コンヴィヴィアル・テクノロジー を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめていこうと思います。

「第6章 コンヴィヴィアル・テクノロジーへ」

 第6章のテーマは、「コンヴィヴィアル・テクノロジーへ」です。本のタイトルと同じ章タイトルで、いよいよ総まとめの章です。

 まずは、この本のテーマである、「二つの分水嶺」の話のふりかえりです。何度も何度も出てくる、この「二つの分水嶺」、あらゆる道具にあてはまる、大事な話だと思います。

 いま、社会に普及しているPCやインターネットも、この「二つの分水嶺」の第二の分水嶺を超えつつある、という話が続きます。

いま、「コンヴィヴィアリティのための道具」だったはずのパーソナルコンピュータやインターネットがもたらした情報テクノロジーは、エネルギーやパワーといった物理的な力ではなく、情報処理能力や計算能力といった知的な力において再び第二の分水嶺を超えつつある。ここで注意すべきは、AIは敵か味方かといったように、あるテクノロジーを是か否か、善か悪かと二元論的に語ることはできないということだ。そうではなく、あらゆる道具に不足と過剰の二つの分水嶺は存在するのだ。しかも、分水嶺が二つあるということは、運命を分ける分岐点は一点ではないということ、つまり、不足と過剰の間の「ちょうどいい」には幅があるということでもある。(p.194)

 僕はPCもインターネットも道具として使っているけれど、僕の使い方は「二つの分水嶺」のどのあたりだろう、と考えてしまいました。仕事として文章を書いたり、表計算使ったり、こうしてブログを書いたりは、第一の分水嶺を超えて第二の分水嶺の前、ちょうどいい範囲かなと思っています。
 一方で、SNSの使い方とかスマホゲームとかにちょっと時間使いすぎかな、と思うので、やや第二の分水嶺の近くにあるような気がしています。アルゴリズムに操られている感じもちょっとしますし。その視点で言うならば、Amazonでの買い物とかもアルゴリズム効いているだろうし、このあたりはどうだろう…と考えます。
 でも、どのサービスも便利だったり楽しくて使い始めたものなので、手放せるものと手放せないものがあるな…この「手放す」とはどういうことなのかについて、この章ではたくさん書かれていました。

イリイチが「道具」という言葉にこだわった理由。それは、道具は本来「つくる」だけでなく「手放す」ことができる、ということにもあるのではないだろうか。(略)使い終わったのに手に持ったまま放さないでいるより、手放せることの方がよほどサステナブルとも言える。「手放す」ことは「捨てる」ことではないのである。(p.196-197)

テクノロジーが生み出した道具だけでなく、教育も、医療も、労働も、政治も、法も、本来必要に応じて「つくれる」そして「手放せる」道具だったのではなかったか。(略)
必ずしもいますぐにすべてを手放す必要はない。ただ、使うだけでなく、つくれるように、そして手放せるようにしておくこと。それこそが未来のテクノロジーに必要なことではないだろうか。(p.198)

 ここで出てきた「手放すことは捨てることではない」「教育も道具」というのを読んで、これまでの「チョーク&トーク」の教育方法、一斉授業をベースにした学校の制度、などにもそのまま当てはまるかもしれないと思います。
 教育の情報化を進めていますが、これは「今までの教育を(一部)手放す」ことにつながるけども、「今までの教育を捨てろ」とは言っていないんですよね。そして、先生側にだけそれは言えることではなく、子どもたちの側にも言えます。教え方だけでなく、学び方も、「(一部)手放す」ことが必要だけど、「捨てろ」とは言っていないんですよね。

「手放せるようにする」ということは、すべてを手放して自分の力だけで生きていけるようになれということではない。わたしたちは生まれながら何にも頼らずスタンドアローンで生きていくことはできない。むしろ「手放せるようにする」ために大事なことは、「頼れるものがいくつもある」ことなのである。(p.198)

 「むしろ「手放せるようにする」ために大事なことは、「頼れるものがいくつもある」ことなのである。」(p.198)っていうところ、本当にそのとおりだな、と。学校でデジタルを使って学ぶ必要は、こういう言葉でも言えるな、と思います。

未来のテクノロジーは、自然から逃れるためではなく、自然と共に生きるための道具であるべきであり、他者との関わりを断つためではなく、他者と共に生きるための道具であるべきである。(略)
ただ、ここで注意しなければならないのは、わたしたちは、本来「つくれる」し「手放せる」はずの道具であっても、生まれたときにすでに存在していたものや、認知限界を超えて大き過ぎたり複雑過ぎたりするものを、まるで自然のようなものとみなしてしまう傾向にあることだ。それは、本当に手放せない自然なのか、つくり、手放すことができる道具なのか、見失ってはいけないのである。(p.201)

 「手放せる」道具であること。二つの分水嶺のことを考えるときに、「手放せない」のであれば、そもそも分水嶺を超えないように調節とかが難しいはずなので、こういう考え方は大事だな、と思いました。

われわれは、自然や他者と「共に生きる」ためのテクノロジーだけでなく、テクノロジーそのものと「共に生きる」ことについても考えていかなければならないのである。それが、本書のタイトルをイリイチにならった「コンヴィヴィアリティのためのテクノロジー(Technology for Conviviality)」ではなく「コンヴィヴィアル・テクノロジー(Convivial Technology)」とした意図でもある。(p.202)

「第7章 万有情報網」

 「第7章 万有情報網」では、著者の緒方さんがプロジェクトメンバーである、ERATO川原万有情報網プロジェクトのメンバーとの対談。ぐっと具体の話が読めて知的刺激がすごかったです。
www.jst.go.jp

まとめ

 じっくりと読んできて、いろいろなヒントをもらえる本でした。僕は仕事で、学校にICTを実装していくことのお手伝いをすることが多いですが、そのときに、「ICTは道具」だという言葉はすごくたくさん言われるのです。そのときに、この本で読んだ「二つの分水嶺」の話はとても多くの考えるべきヒントをくれました。先生たちに話してみて、いろいろとディスカッションしてみたいと思います。

(為田)

藤沢市教育委員会 校長・教頭 研修 レポート(2021年8月26日)

 2021年8月26日に、藤沢市教育委員会がオンライン開催した校長・教頭研修に講師として登壇させていただきました。講演のテーマは「ICT教育の今、これから ~一人一台端末における、児童生徒の学びの可能性~」でした。
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 藤沢市には、市立小学校が35校、中学校が19校、特別支援学校が1校の計55校あり、それぞれの学校の校長先生・教頭先生にご参加いただきました。Meetで参加していただいたのですが、100名近くの参加となり、なかには校長先生と教頭先生が1つのPCで参加していたり、会議の都合で何校かの校長先生が一緒に参加していたり、ということもあったようですが、1画面には入らないくらいでした。
 本来ならば、現地で先生方の顔を見ながら研修をさせていただきたかったのですが、今回はオンライン研修ということで、オンラインでの聴講の良さが出るように、チャットでいつでもコメントや質問していただいてOKという形にしました。話を聴きながら「いや、それは…」と思ったり、「あれ?」と思ったことなどコメントや質問を書いてもらえるのは、オンライン研修ならではの利点だと思っています。
 また、最後の質疑応答においても、チャットに書き込む方が挙手をして質問をするよりも敷居が低いという声もよく聞きます。今回の藤沢市の先生方についても、積極的に質問をしていただいたり、「もう少し、ここの部分を聴きたい」というコメントをいただきました。また、一人1台のChromebookとロイロノート・スクールでいろいろな活用も始まっているそうで、「うちの学校では、こういうことをしています」という事例紹介などを伺うこともできました。こうした事例が市として共有されていけば、どんどん活用は進んでいくと思います。

 いつもの研修と同じように、「デジタルはこれからの子どもたちにとって必ず使うことになる道具であり、表現や思考の道具として使えるようにしてあげてほしい」ということをお伝えしました。
 そうしたビジョンを校長先生と教頭先生と教育委員会が明確に共有していれば、細かい使い方の多少の差異が学校にあっても、市としてICTの活用が進んでいくと思います。校長先生と教頭先生が、デジタルの活用についてのビジョンをもつことで、教室で実際に子どもたちと共にデジタルを使って学ぶ先生方もいろいろなチャレンジができるのではないかと思っています。

 最後に、新型コロナウイルスの感染状況が広がっていて、翌週から2学期がスタートする時期なので、どんな状況になっても学びを止めないためにICTで何ができるか用意をしておきましょう、というお話もさせていただきました。
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 僕は小学校から大学まで藤沢市で学んだので、藤沢市は地元です。こうした形で地元への恩返しが少しでもできればいいな、と感じています。今後も学校での活用研修や、授業を参観させていただいてのお手伝いなどもできればと思っています。

(為田)

淑徳小学校 淑徳アルファ カズトロジー 授業レポート No.5(2021年8月24日)

 弊社フューチャーインスティテュートは、淑徳小学校放課後クラブ 淑徳アルファで、コンピュータを使ってさまざまな活動を行う授業「カズトロジー」を行っています。毎年夏休みは通常よりも参加者が少ないので、学期中のカリキュラムを進めるのではなく、「いつもとちょっと違うことを体験できる」ようにと思って内容を決めています。
 2021年8月24日の3年生の授業では、プログラミングロボットRootを使ってプログラミングをしてみました。アイロボットはロボット掃除機ルンバのメーカーです。ルンバのことは知っている子が多いので、「ルンバって、壁にぶつかったらどうなる?」「後ろに戻る!」「それだけ?」「壁沿いを動いて掃除するから、下がって、ちょっと曲がって、また前に行く…」「そうだよね。今日は、そういう動きを自分たちで考えてRootにさせてほしいと思います」と言って、2人組でプログラムを組んでもらう時間にしました。
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 iPadiRobot Codingのアプリを起動して、そこでプログラムを組んでいきましたが、白紙の状態からスタートするのではなくて、教材ファイルをダウンロードして、それを元にして自分なりのプログラムを組んでいきました。今回は、ただ「まっすぐ移動し続けるブロック」と、Rootの前面にある「バンバーセンサーの条件分岐ブロック」だけを用意してありました。こうすることで、最初の条件を作るところに時間をかけなくてすみます。
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 「ルンバとまったく同じ動きでなくてもよくて、例えば壁にぶつかったら音を鳴らして教えてくれるとか、そういうのでもOKです」と言うと、いろいろなアイデアを出してRootを動かし始めました。
 いろいろなアイデアを考え、それを実現するためにプログラムを作ってみて、思い通りに動いたときの楽しさを感じてほしいのはもちろんですが、「やってみて、ダメだったら直していけばいい」とチャレンジしていく姿勢も学んでほしいと思っていました。
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 プログラムを組んだら、実際にどんどん動かしていきます。淑徳小学校の3年生は、ふだんの授業から自分のiPadを使っているので、自分たちの作ったプログラムでRootが動いている様子を撮影している子もたくさんいました。こうしてできあがった成果を、デジタルのポートフォリオとして残していけるのはとてもいいことだと感じました。
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(為田)

教材で使えるかも:Twitterで偶然出会った、すごい写実画

 TwitterARIAさんが色鉛筆で描いた三ツ矢サイダーの絵が流れてきました。すごい、すごすぎる…。こういう、色鉛筆でもこんな表現ができるんだ!というのを見せてくれるのは素晴らしいな、と思いました。

 それから、友人の鈴木けんぽうさんがシェアされていた、画家の岡靖知さんの油絵もすごかったのを思い出しました。

 ICTは、いままでの自分の身の周りにはなかった、新しい世界を見せてくれることがあります。
 学校の授業でこれらと同じものを描く機会はないかもしれないけれど、「こういう表現があるんだ」ということを知って、絵を描いたり見たりする幅が広がればいいな、と思います。

(為田)

淑徳小学校 淑徳アルファ カズトロジー 授業レポート No.4(2021年8月24日)

 弊社フューチャーインスティテュートは、淑徳小学校放課後クラブ 淑徳アルファで、コンピュータを使ってさまざまな活動を行う授業「カズトロジー」を行っています。毎年夏休みは通常よりも参加者が少ないので、学期中のカリキュラムを進めるのではなく、「いつもとちょっと違うことを体験できる」ようにと思って内容を決めています。
 2021年8月24日の1年生の授業では、Google Earthを一人1台ずつじっくりと使ってもらいました。PC教室にはSKYMENUが導入されているので、先生機でGoogle Earthを淑徳小学校からスタートするようにリンクを作り、全員のPCへ送りました。リンクは送られると自動的に開くように設定してあったので、子どもたちは何もせずに、いきなり目の前のディスプレイにGoogle Earthが起動します。自分が通う淑徳小学校が上から見えて、「あ、学校!」と声をあげていました。
 こうしてテクノロジーを目の当たりにして、「おお!」「すごい!」と思ってもらうことと、そのテクノロジーを好きなだけ使う時間をとる、というのは意外といつでもできることではないので、夏休みの最後にチャレンジしてもらいました。
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 Google Earthは、「テレビで見たことある!」という子も多く、だいたい何ができるのかということも知っているようでした。授業の最初に伝えた操作方法は、ズームインとズームアウトと、ドラッグして場所を変えることと、「“Feeling Lucky”(サイコロのボタン)であちこち飛ばされるよ」ということだけです。「自由にどこでも行ってごらん。おもしろいところを見つけたら教えて」と伝えると、みんなのGoogle Earth探検がスタートしました。
 スタート地点だった淑徳小学校から、自分の家までどんどん道を歩いていって、駅で鉄道に乗って…ということをしている子もいました。自分が通っていた幼稚園を教えてくれる子もいました。旅行で行ったことがある場所を教えてくれる子もいます。
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 どんどんズームアウトしていって、地球を外から見る子もいました。こうした自分の学校からどんどん離れていって地球にまでなるのを体験するのもおもしろいと思います。
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 逆に、ズームインしすぎてしまって、南極や太平洋などでズームインしすぎてしまうと、行っても行っても真っ白や真っ青、みたいなことも起きます。「先生、ここ、どこ?帰れない…」と言われるので、ズームアウトして教えてあげました。

 Google Earthを自分なりの楽しみ方でたっぷり時間をとって体験できたのは夏休みならではでよかったかな、と思います。
 1年生はカズトロジーの時間でまだキーボード入力を練習していないので、今回は検索機能は使いませんでしたが、授業の最後に「これでキーボード使えれば、思ったところに行けるんだよ」と伝えました。そして、「Google Earthは、おうちのスマホとかiPadとかでもできるよ」と教えてあげたので、もしかしたらチャレンジしている子もいるかもしれません。好奇心を伸ばすツールとして、どんどん使ってくれればいいな、と思っています。

 No.5に続きます。
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(為田)

【メディア掲載】日経ビジネス「毎日利用は「14%」、掛け声倒れにできぬGIGAスクール構想」(2021年9月15日)

 2021年9月15日にYahoo!ニュースで公開された「毎日利用は「14%」、掛け声倒れにできぬGIGAスクール構想」(日経ビジネス)を読みました。

news.yahoo.co.jp

 GIGAスクール構想でのさまざまな学校の取り組みを紹介している記事なのですが、そのなかで、先日発売された著書『一人1台のルール』で紹介させていただいた、さとえ学園小学校の事例が取り上げられていました。

デジタル機器の活用は、自治体や教育委員会ごとに様々だ。ある学校では、生徒のスキルとモラルに応じて米アップルのiPadの「利用免許」を更新し、普通自動車免許のように「グリーン」→「ブルー」→「ゴールド」となるにつれて利用制限を解除する、というユニークな取り組みを始めた。ほぼ全員にパソコンやタブレットなどの端末が行き届いたからこそできる施策だろう。

毎日利用は「14%」、掛け声倒れにできぬGIGAスクール構想(日経ビジネス) - Yahoo!ニュース

 文中では「ある学校」と書かれていますが、さとえ学園小学校です。グリーン→ブルー→ゴールド、とレベルアップするにしたがって、できることが増えていくという、さとえ式レベルアップ型ルールが紹介されています。
 『一人1台のルール』の本では、このレベルアップ型ルールを運用するにあたって使っているツールやシステムも含めて紹介をしていますので、ぜひお読みいただければと思います。
 また、さとえ学園小学校のルールは、学校だけで行っているものではなく、保護者の方々も一緒になって作り、運用されている点が素晴らしいと思います。
 このルールについては、さとえ学園小学校だからこそできることばかりではなく、日本全国のできるだけ多くの学校でもできることは多いと思います。それぞれの学校の端末整備状況や、学校での活用状況に合わせて、「それぞれの学校でこうしたルールを作ることができるのではないでしょうか?」という提案のつもりで書いた本でもあります。
 多くの学校で、先生方、保護者のお役に立てれば幸いです。もしよろしければ、お手にとってみていただければと思います。

 読んでくださった方からの感想もまとめておりますので、こちらも参照してみていただければと思います。
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(為田)