教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

水戸市総合教育研究所 総研セミナー レポート(2021年7月26日)

 2021年7月26日に、水戸市総合教育研究所がオンライン開催した「総研セミナーⅠ」に講師として登壇させていただきました。講演のテーマは「デジタル社会の学びの形 ~教育現場におけるICT活用力向上~」で、水戸市内の小中学校48校の先生方が参加してくださいました。
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 水戸市内の小中学校でもGIGAスクール構想によって整備された一人1台のChromebookの活用が進んできているということを事前打ち合わせで伺っていましたので、水戸市総合研究所のサイトの「水戸市GIGAスクール構想」のページを見てみると、「水戸市GIGAスクール構想」「ICT活用に関すること」「お役立ち情報」などの情報が公開されています。
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www.magokoro.ed.jp

 残念ながら今回の総研セミナーはオンラインでの研修でしたが、最初に「せっかくのオンライン研修なので、チャットを積極的に使って質問や感想をどんどん思いついたときに書いていきましょう」と事務局の先生から説明をしていただいたので、僕が画面共有をして講演をしている間にも、講演内容に関係する情報共有やフィードバックがどんどんチャットに流れ行く、という形になりました。

 例えば、ICTを子どもたちの「表現手段、思考手段の拡充」のために使いましょう、ということをお伝えしました。ワードプロセッシングや表計算などをもっと使うことで、児童生徒の表現や思考の道具として使えるようにしましょう、という話をしましたが、チャットでは「タイピング、どんなのを使って教えましょうか」とか、「ローマ字は…」とか、「作文指導に使ってみるのは検討したい」などの情報交換が行われていました。
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 こうした講演を聞きながらの質問や感想などの共有というのは、「オンラインだからこそやりやすい」ことだと思います。タイピングなどだけでなく、Google EarthやJamboardを使っての実践、付箋と模造紙を使っていたときとの違いなど、実践をしている学校からの情報共有がチャット上で活発に行われていた様子を見ることができました(もっとじっくりチャットを読み、お話を続けたいくらいでした)。
 チャット上での議論がうまくいっていたから、「対面がもう要らない」という話でもなく、「どの部分がオンライン(デジタル)だから良い」「一方で、この部分はオンライン(デジタル)よりも対面(アナログ)の方が良い」という当たり前の議論をベースにして、どの部分を学校に取り入れて、一人1台のChromebookを使って活用していくのかを考える機会になればいいと思います。

 今回のセミナーを通じて、Chromebookを一人1台使うことで、どんなふうに子どもたちの学びを変えられるのかということが伝わり、それが水戸市の子どもたちの学びを変えることへと繋がっていけばいいと思います。
 また、Chromebookを使っていくとどんな課題が出てくるのか、ということを踏まえて、どう授業を設計していくのかという議論が、それぞれの学校で行われていけばいいと思います。

 今回はオンラインだったのですが、状況が落ち着いたら、ぜひ水戸市内の小中学校を訪問させていただいて、より具体的なお話もさせていただければと思いました。
 このような機会をくださった、水戸市総合教育研究所の皆様、また参加された先生方、本当にありがとうございました。

(為田)

書籍ご紹介:『デジタル・シティズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び』

 坂本旬 先生・芳賀高洋 先生・豊福晋平 先生・今度珠美 先生・林一真 先生の『デジタル・シティズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び』を読みました。

 GIGAスクール構想によって一人1台の情報端末が小学校・中学校で整備されていますが、活用はまだまだこれからな学校が多いと思います。研修講師として学校へ行くと、「どうやって使わせたらいいですか?」という質問とともに、「どうやって制限をかけるのがいいでしょう?」という質問も多く訊かれます。「制限をかける」ばかりではなく、子どもたちがどんなふうに善き使い手になるための指針としての「デジタル・シティズンシップ」について知ることができる本です。

 興味深かった点をメモとして公開していきたいと思います。

 学校でICTを活用するときには、「情報モラル」をどう教えるか、ということが話題になることも多いが、「情報モラル」とこの本のタイトルにもなっている「デジタル・シティズンシップ」の違いが何なのか、ということを明確にしていくことがまず重要です。「はじめに」のなかで坂本先生が、学習指導要領のなかでも、「情報モラル」が指すものが「デジタル・シティズンシップ」の方へ変わりつつある、ということを書いています。

新学習指導要領の英語訳を見ると、情報モラルの英訳がこれまでの「information morals」から「information ethics」へと変更されている。小さなことのようだが、このことには大きな意味がある。「information morals」は英語にはない言葉だが、「information ethics」は学問として確立した概念であり、こちらもデジタル・シティズンシップの土台である。間違いなく、文科省内部でもデジタル・シティズンシップ教育への関心が高まりつつあると言ってよいだろう。(p.iv)

 「第1章 デジタル・シティズンシップとは何か」のなかで、坂本先生は「情報モラル」と「デジタル・シティズンシップ」の違いについて書いています。そもそもの考え方の背景が違うことがわかります。

日本の教育政策にはデジタル・シティズンシップの概念が存在しないが、世界の議論や政策の潮流を見れば、いずれ教育政策上の課題となることは避けられないだろう。冒頭で述べたように、現状の「情報モラル」教育はインターネットの安全に重きをおいた保護主義的な色合いの濃い施策であるが、他方では1人1台のPC施策を推進しており、そこには矛盾がある。保護主義を前提とすれば、学習道具としての情報機器活用は学校内に閉じ込められるか、教具的活用の補助手段にしかなりえないだろう。「情報モラル」は「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」だが、デジタル・シティズンシップは能力であり、スキルである。脅かして抑止するという発想では、これからのグローバルな世界を生きる子ども・若者を育てることは困難だ。(p.35)

 坂本先生は、「デジタル・シティズンシップ」の内容として、アメリカ、ヨーロッパ、OECDユネスコでどのようなことを定めているのかについても紹介しています。それぞれに「どのような子どもたちを育てるのか」というゴールが違います。
 2019年に刊行された、マイク・リブル&マーティ・パーク『The Digital Citizenship Handbook for School Leaders』*1のなかでは、デジタル・シティズンシップの9要素がまとめられています(p.18-21)。

  1. デジタル・アクセス
    • 情報技術や情報源へのアクセスの公平な分配
  2. デジタル・コマース
    • 商品やサービスの電子的売買のこと
    • 何らかの方法でお金を使うときに用いるツールや安全対策に焦点をあてる
  3. デジタル・コミュニケーションと協働
    • 電子的な交流と共有された創造活動
  4. デジタル・エチケット
    • 電子的な行動基準や手順
    • 「わかりやすく言えばデジタル機器を使用する際の他者への配慮」
  5. デジタル・フルーエンシー
  6. デジタル健康と福祉
    • デジタル世界における「身体的・心理的な幸福」
    • 「特に1人1台の端末環境にある学校では、児童生徒にとってどの程度の利用時間が適切なのか考えなければならない」
  7. デジタル規範
    • デジタル世界での行動に対する責任であり、問題に対処するための規則の基礎
    • 「現実世界と同じように、オンラインの世界でも、デジタル機器を利用する人々をリスクから守るための仕組みが必要である」
  8. デジタル権利と責任
    • デジタル世界のすべての人に保障される権利とそのために求められる条件
    • 著作権もここに含まれる
  9. デジタル・セキュリティとプライバシー
    • 安全性を確保するための電子的な予防

 個人的には、ここでまとめられている項目が納得感がいちばん強かったです。Kindleで読むこともできそうなので、チェックしてみたいと思いました。


 続く「第2章 情報モラルからデジタル・シティズンシップへ」では、芳賀先生が、情報モラルとデジタル・シティズンシップ教育の違いについて書いています。そもそも、1時間とか時間をとって「情報モラル」を学ぶ、ということではなく、あらゆる教科の土台となるべきだということがわかります。

今や、デジタル・シティズンシップ教育は、教科を選ばず共通に学ぶことができるユニバーサルな教育であり、ある特定の国や地域に特化した教育ではなく、グローバル・スタンダードな教育となっている。(p.40)

デジタル・シティズンシップ教育の指導者は、ネット・トラブルに巻き込まれる恐ろしいケースを紹介してむやみに児童生徒を怖がらせる注意喚起はしない。「相手の気持ちを考えましょう」という安易なまとめ方をすることもない。指導者自らICTを前向きに使いながら、模範的な言動や態度をとることが求められる。そして、答えが出せずとも問題に対してクリティカルに考え、対話をし続けることが大切であると学習者の背中を押し、たまにはゆっくり考えようか、と学習者と一緒に立ち止まり、オープンエンドな学びを促す。
反対に言えば、デジタル・シティズンシップ教育は、指導者も学習者も、大人も子どもも、それぞれの理解に基づき、「参加」することによってしか成立しえない教育――社会的構成主義の性格を持つ。(p.40-41)

 デジタル・シティズンシップ教育のコンセプトとして、学校の一場面で使うというのではなく、もっと日常のなかで考える必要がある、と書かれています。

デジタル・シティズンシップ教育のコンセプトは、ICTは子どもの「日常」であると捉え、ネット社会は特殊な世界ではなく、日常生活や社会とシームレスな関係にある、というものである。
だからこそ、子どものICTを取り上げてしまって、その利用をやめさせるのではなく、善き市民として、幸福な善き社会の構築をめざし、前向きにICTを利用しようとする。
一方で、情報モラル教育のコンセプトは、指導対象(ICT)を、普段は使わない非日常的な特殊な道具と規定する。ネットは危険な遊び、娯楽であるから、学校では、特別な必要がないときには使わせず、取り上げてしまいがちになるのである。(p.60)

 続けて、「第3章 我が国の教育情報化課題とデジタル・シティズンシップ教育」で豊福先生が、ICT教具論とICT文具論の違いについて紹介をしてくれます。デジタル・シティズンシップ教育が、子どもの「日常」のなかでのICTを考えるのであれば、当然、ICTは先生が教えるための道具=教具ではなく、子どもたちがいつでも使える道具=文具となるべきだと思います。

ICT文具論として学習者中心の文具にする際は、具体的には、①生活全般や学びにおける道具的位置づけと使用頻度を高め必需品にする、②責任ある利用方針(第1章、第4章を参照)のもと、機器の扱いや管理を子どもに任せる、③機器の天板にシールを貼ったり、画面背景の壁紙を自分の好みに変えたり、といった個性化によって大切に扱うよう促す、などのはたらきかけを行うことが欠かせない。ICT教具論の管理制御的発想の対極にあるからといって、ICT文具論は個人に丸投げ放任にするものだと捉えるのは間違いである。(p.110)

 こうした考え方に基づいて、デジタル・シティズンシップをどのように学校に実装していくことができるのか、ということについて、「第4章 デジタル・シティズンシップ教育の実践」で今度先生と林先生が実践を紹介してくれています。

 「情報モラル」との違い、海外での先進事例、一人1台の情報端末を文具として活用すべきという方向性、そしてそれを実践している事例と、総合的にさまざまな面からデジタル・シティズンシップについて知ることができます。
 一人1台端末をどのように学校に、子どもたちの日常に実装していくかを設計していく先生方にとって、たくさんのヒントを得ることができる本だと思います。

(為田)

*1:Ribble, Mike& Park, Marty, The Digital Citizenship Handbook for School Leaders: Fostering Positive, Interaction Online, Intl Society for Technology in educ, 2019

授業で使えるかも:農林水産省「マフ塾」

 農林水産省が公開した、夏休みの自由研究や勉強に役立つサイト「マフ塾」がおもしろいです。マフは、農林水産省の英語名「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の頭文字「MAFF(マフ)」ですね。
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www.maff.go.jp

 デザインがちょっと昔懐かしい感じではありますが、そのおかげなのか読むときのスピード感がゆっくりでちょうどいいきがします。「自由研究」「クイズ」「秘 授業」などなどのコンテンツを見ることができます。GIGAスクール端末を持ち帰っている小学生や中学生が、のんびりと見てみると、「お!」という本気のコンテンツや情報に接することができるかもしれません。

 農林水産省は、YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF ばずまふ」の発信もしていますが、こちらもおもしろくて好きです。今回のマフ塾からもリンクが貼られているコンテンツがたくさんあります。
www.youtube.com

 こうしたコンテンツをきっかけにして、子どもたちが社会の仕組みに興味関心を持ったり、自分の周りにある仕事について考えたりするきっかけになるかもしれません。省庁から直接子どもたちに向けた発信がされることは、とても重要だと思います。
 夏休みに学校から持ち帰った端末でマフ塾を見て、「この動画、おもしろくない?」とGoogleクラスルームでクラスメイトや先生に教えてあげて、「ほんとだー」と盛り上がったりすればいいな。夏休みに買い物に行って、「あ、そこのじゃがいもの箱、見かけたよ!」とか写真が送られてきたりとか。そういうのができたら、とても楽しいな、と思いました。

(為田)

『一人1台のルール』読書感想文大会

 6月に発売になりました『一人1台のルール ―― 自由に情報端末(デジタル)を使えるようになるために』の感想文をお寄せいただきましたので、ご紹介していきたいと思います。
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一言で言うと、希望。こんな学校があったのか!すばらしい。智栄という字もよい笑。

やらない理由ばかりで変わろうとしない先生たちに辟易していたので、例えるなら闇の中の光。

公立の学校の先生たちには、さとえ学園の爪の垢煎じて飲ませたい。嫌なら公立でこれやってほしい。
やってほしいと書くと今度は方法論みたくなるけど、真似して欲しいのは、そのマインドセットとスキルセットだ。

何故、何のためにやるのかが、公立ではできてない。教科書ベースの指導、去年と同じ授業、ICTは使ったふり。あるいは臭いものとして蓋。

いざGIGAが始まって、自分ができないからという理由でキーボード入力も指導しない。デジタルに不慣れな人がデジタルに不慣れな人を再生産してることに、何の疑問も持たずに教師をしている。いろいろ理由があるんだと言い訳される。

もう一度リセットして欲しい。破壊と再生。さとえ学園というすばらしいロールモデルがあるから、再生も捗るというもの。

さとえ学園は待ってくれない。もう次のステップに進み、どんどん良質なロールモデルを築いていってほしい。【匿名希望】

 さとえ学園小学校の実践が、そのまますべての学校に適応できるかというとそんなことはないと思うのですが、「どの部分ならば、うちの学校でもできるだろうか」と考えるきっかけになればいいな、と思っています。

さとえ学園小学校の実践を読ませていただいて、特に素敵だなと個人的に感じたことを3つ述べさせていただきます。

  1. ビジョンとゴールの設定が共有されていること。
  2. 子供の実態を把握した上でレベルアップ型のルールが作られていること。
  3. レベルアップ型のルールの中身がルーブリックとして示されていること。

1 については、iPadはじめICT端末を使うことが目的ではなく、当たり前のように授業や学校、家庭といった子供の世界で使うことで、どのような資質・能力を育てていきたいか。詳しく記されておりませんでしたが、きっとさとえ学園の先生方でしっかり共有されていることが素敵だと感じました。本書では、ICTの光の部分というように表現されていますが、そこがやはり大切だと感じました。またゴールについても、Substitution(代替)からRedefinition(再定義)という、その先に向かって新しい何かを生み出していくという熱意も大変刺激をもらいました。

2 については、「よくないiPadの使い方をする子もいますよ。たくさん」と記されており、失敗も成長のチャンスとして捉えているところ、そして具体的な解決の姿を点数化して目にみえる形で示されているのも大変勉強になりました。勤務している学校でも、やはりよくない使い方をする子がいます。その時、一時預かるであったり、指導はしますが、どうしても「次からはしないように!」という大人目線の指導になってしまいがちです。子供自身に「次からはどうしたらいいのか。どのように使うべきなのか。」考えさせながら失敗を受け止めさせて、具体的な行動に落とし込んでいく必要があると改めて反省しました。

3 については、グリーン、ブルー、ゴールドと、具体的な姿がルーブリックのように段階的に示されているところが、とても素敵でした。きっとこのルールを描く際には大変な労力があったと思われます。そして、子供の実態に合わせて常に変えていく、作って終わりではなく運用しながらアップデートしていくという視点も大切だなと感じました。

以上、拙い文章で申し訳ありませんが、感想とさせていただきます。【池邊 寛@戸田第一小学校】

 現場目線での感想をいただいてありがとうございます。池邊先生が書かれている、3の部分について、「具体的な姿がルーブリックのように段階的に示されている」というところ、とても重要だと僕も思っています。それぞれの学校でルーブリックを作っていく、という試みが部分的にでも進めばいいな、と思います。

以前からブログで紹介されていたさとえ式レベルアップ型ルールに興味があり,読んでみました。こういったルールというのは,ともすれば最終的には全員をゴールドにすることを目的として設定されがちだと思うのですが,それだと子どもたちの方でもそこまで真剣にルールを守ろうとしないかもしれません。その点,6年生でもゴールドが10%しかいないとなると,せっかく上のレベルに上がった子は下がりたくないと思うでしょうし,下のレベルの子は頑張ってレベルアップしたいと思うのではないかと思います。
またルールも,「こうしてはいけない」と禁止するルールではなく,「上のレベルに行けばこれができるようになる」というように設定されているところがとても素敵だと思いました。背景には,子供だからと言って侮ったり,甘くしたりすることなく,自分で自分を律する力を身に付けられるように導く姿勢があるのだなと思いました。単に「子どもを信頼して任せる」というだけの,良くいえば性善説,悪くいえば無責任な任せ方ではなく,それぞれの子どもたちを一人の人格として尊重しているのだなと感じました。【清遠】

 そのとおりで、「子どもたちを信頼して、iPadを賢くなるための道具として使ってもらっている」という部分が素晴らしいですよね。

近年、「ブラック校則」という言葉とともに、日本の学校における人権感覚にようやく注目が集まりはじめています。校内でも「一人1台のルールをどうするべきか」という話題があがる中、このまま禁止型のルールを増やしてしまえば社会の流れと学校内のルールとの乖離の再生産になってしまうのではないかと考えていました。
そんな中、「レベルアップ型のルールづくり」という言葉に惹かれて本書を読ませていただきました。

iPadの活用場面やルールの運用、具体例などが先生方の言葉とともに書かれており、実践自慢でも評論でもないので、勤務校ではどのような形で進めていけそうかをイメージしながら読むことができました。

実際に本校でも、本書を参考に児童たちがレベルアップ型のルールメイキングを行ってみています。
子どもたちも経験からルールを考えるので、「◯◯したらダメ」という禁止型のルールがはじめに出てくるのですが、本に出てくるさとえ学園のルール運用のイメージを伝えながら少しずつ考えています。

「児童主体」「押しつけじゃないルール」というキーワードでルールをつくるヒントが詰まっている一冊です。【小林湧@戸田市立新曽小学校教諭】

 小林先生が行っているルールメイキングの授業にお役に立っているとしたらとてもうれしいです。「○○したらダメ」という禁止型のルールではなく、デジタルをどう使っていくのかというルールを考える機会になるといいと思っています。

子どもたちがTrelloなど、さまざまなアプリを活用しているのを読み、正直とても驚きました。社会人の私よりよっぽど使いこなしていると感じました。子どもたちでここまでできるのであれば、大人の私たちが「できない」というのは無いですね...。

仕事柄、一人一台になることで、これまでできなかったこと、これまでできたけれどなかなかやりづらかったことがよりスムーズにできるようになるということは理解していますが、端末のみ使う(使わなければいけない)!など正直極端なこともたくさん見てきました。でも、この本の中でも「ノート」「ワーク」という言葉が出できているように、どちらかだけではなく、併用していくということが大切なのだと改めて実感しました。

この本を参考にさせていただき、こういった使い方もできますよということを関わっている学校にも伝えていきたいと思います。とても参考になりました。もしかすると、「ここまではできない」という声があるかもしれませんが、これならやれそう!と思える部分をやってみる、そして、できることを広げていくという方向にできるといいなと思います。【みか】

 ぜひ、こういった実践をしている学校があるということ、ルールを作ってみるという方法があるということを広げていっていただければと思います。

今まさに悩んでることに対する答えや参考にして取り組んでみたいことが、たくさんありました。勤務校では、4月から授業で活用することになり、ルールや使い方などは、先進校のものを参考にして、私が中心になってというか私だけで案を出して、管理職から手直しをしてもらって決まりました。でも、管理的にしたくない思いとその逆の思いが錯綜していました。担任している6年生は、やはりいろいろやらかします。どうしても注意する必要があるんです。このような今だからこそ、この本から学ぶことが多かったです。やらかした子供達と自分達が守れるルール作りをしようと考えていました。守れるルールより、「このレベルに行けた人だけ使える機能が増える」や、「レベルダウンがあり、戻るためには、相応の対処をしないといけない」というのは、とてもいいシステムだと思います。職員間の共通理解や保護者への啓蒙などもまだまだだと思いました。先生方のコメントからも児童の実態や先生方の悩みや思いが伝わってきました。【岩城豊@山形県中山町立長崎小学校】

 そうですね、先生方の間での共通理解や、保護者との情報共有も大変重要だと思います。学校でデジタルを学びのツールとしてどう使うかということについては、保護者の使い方とは違う部分もあると思いますので、体験してもらったり、ルールを共有したりして、理解をしてもらうことが重要だと思います。

私は、熊本県のある地方の公立小中学校でICT支援員として「一人1台」のサポートをしています。
(会社全体でその地域の小中学校12校を担当しています)
端末は、Windowsタブレット(キーボード付属)です。
タブレット導入から約3ヶ月経ち、少しずつ子どもたちの生活にタブレットが浸透してきたところです。

そんなときにこの書籍のことを知り、拝読しました。
気になる箇所からピックアップしてざっくり読んだだけで恐縮なのですが、現時点での感想をお送りします。

まず、前提として私が担当している地域の学校の課題として大きく2つあると捉えています。

1.タブレットを使うためのインフラが十分でない
2.先生方がどのようにタブレットを活用していいか分からない

4月の導入当初から最近までは、1でつまづくことが多いという現状がありました。
具体的には、

タブレットのスペックの問題で新たなアプリをDLすることが許可されていない
②ネットワークの帯域や契約内容の問題で、校内で同時にタブレットを使える台数が圧倒的に少ない

ことがあげられます。
ですので、書籍の第1章については「真似できない、、、」という切ない気持ちが生まれたもの正直なところです。
でも、これらのアプリが役に立つのであれば、それをヒントに私たちの持つタブレットでそれに代わるやり方がないかと考えられます。
今後いくつか検証をしていきたいと思っています。

私が最も大きな気づきを頂いたのは、「はじめに」に書かれていた、「iPadをかしこくなるための道具として位置付けて、子どもたち自身が使用の是非を判断している」という点です。

私たちの学校でも、子どもたちはタブレットに馴染んできています。
ICTに疎い先生もいらっしゃる中で、子どもたちのほうがタブレットで何ができるのか詳しく知っているというケースも散見されます。
そんな中で、子どもたちにモラルを身に付けてもらい、安全にタブレットを活用してもらうためには、子どもたち自身に判断する力を育んでもらうほかないと気づきました。
そのためには、「タブレットがどんな存在なのか」を定義することから始める必要があります。
それがそれぞれの学校でなんと定義されるかは未知数ですが、ICT支援員としてこの本から得られた知見やヒントを現場にフィードバックして、先生方のサポートを続けていきたいと思っています。【ランラン@ICT支援員(熊本県)さん】

 第1章だけだと、「うちの学校はこんなの無理…」となるかもしれませんが、その根底にあるルール作りの部分は、さまざまな学校の状況に合わせて適応できることも多いと思っています。ぜひ、先生方のサポートのお役に立てていただければと思います。

◆ ◆ ◆

 こうして感想を直接お寄せいただくことで、また僕自身も考えをアップデートしていきたいと思っています。感想をお寄せいただいた皆様、本当にありがとうございました。

(為田)

東京都私学財団 重要・経営課題研修 レポート(2021年7月8日)

 2021年7月8日に、公益財団法人東京都私学財団の「令和3年度 第1回重要・経営課題研修」に講師として登壇させていただきました。本来、対面で行うはずだったのですが、講師である為田の都合で直前になって会場へ伺うことができなくなってしまい、事務局の皆さんにご協力をいただきまして、急遽オンライン講演に変更していただきました。(参考: https://www.shigaku-tokyo.or.jp/training/?id=203
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 講演のテーマは、「教育現場におけるICT活用力向上 ~確実なICT環境整備とICT環境を活かした教育の実現~」でした。
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 弊社は、教育委員会や学校での研修を多くさせていただいているのですが、今回の東京都私学財団での研修は、参加者の幅がいちばん広い研修となったと思います。お申し込みをいただいたのは幼稚園から小学校、中学校、高校、専門学校の教職員の皆様で、幅広い児童・生徒・学生が学んでいる場を作っている方々に向けてお話をさせていただきました。
 当然、校種によって「どんなICTの使い方ができるのか」という事例については少しずつ違うものになりますが、その根本にあるべき「どんな子どもたち/人を育てたいのか」ということと、そのために「ICT(デジタル)はどのような役割を果たすべきだと思うのか」をしっかり考えてください、ということをお伝えしました。
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 専門学校など、より社会への関わりが近いところでは、学生さんがデジタルをアイデア出し、情報収集、表現で使っているだけでなく、デジタルを使うことで社会に発信をし、そこからチャンスを掴んでいく、ということもあり得ると思っています。そうしたことができるのだということを学校が知っていて、そのための素地を作るという役割を果たす、ということは大事なことだと僕は思っています。

 最後の質疑応答のところでは、マイクのトラブルで十分に質問にお答えすることができなかったのですが、アンケートにいただいた質問については、メールベースでやりとりもさせていただきました。より多くの学校がICTを武器として使って学びの場をアップデートしていくように、お手伝いを引き続きさせていただければと思っています。

 直前にリモートでの開催に切り替えていただき、会場やシステムなどの準備をしていただいた東京都私学財団の事務局の皆様、そして参加者の皆様、本当にどうもすみませんでした。ありがとうございました。

(為田)

まなびポケットEXPO~2021夏~ イベントレポート No.3(2021年6月28日)

 2021年6月28日、オンラインで開催されたまなびポケットEXPO~2021夏~に参加させていただきました。
 今回は、第2部で紹介された、まなびポケットのサービス紹介部分をまとめてレポートします。

 最初に、まなびポケットが目指すビジョンは、「誰もが意思と特性に応じて、自分らしく学ぶ社会」であるということが紹介されました。これは、デジタルだからこそできるのではなく、これまでの教育でも大事にされてきたことではありますが、デジタル技術の発達によって先生方や学習者をサポートしていきたい、という思いが見られるビジョンだと思いました。そのことを、稲田さんは、「まなびポケットは学習者のエージェントになる。学習者も支えるし、先生方も、保護者も支える」と表現していました。
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 まなびポケットのロードマップも紹介されていました。最初は、教育委員会がICTを整備することをサポートし、それから先生がICTを活用することをサポートし、これから学習者が学びの効果を高めることをサポートしていく、と紹介がされました。
 デジタルで学校教育が、学びがどのように変わっていくのか、ということは、まだまだ実態として知られていないケースが多いので、このロードマップにしたがって、だんだん学習者(と保護者)にも見えるようにこれからなっていくのだろうな、と思いました。

 2021年度以降は、「“学校DXはまなびポケット”と言われるようになりたい。ICTをいつでもどこでも日常的に活用できるように、それをさまざまな選択肢のある教材と一緒に実現したいと思っている」、と稲田さんは言います。
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 「ICTをいつでもどこでも日常的に活用できる」を実現するための、まなびポケットの4つの機能・サービスが紹介されました。これらの機能・サービスによって、先生を楽にもできるし、学習者はより充実した学びをすることができるし、一律でなく個々に応じた支援もできるようになると思います。

  1. 後付け端末保証「たんぽくん」
    • GIGAスクールでは、修理保証に入っていない自治体もあると思う。保証は導入時にしかダメなこともあるが、保証を後付けできる。
    • 端末が壊れることを恐れて持ち帰りをしない、という学校の気持ちはわかるので、安心して持ち帰りができるようにサポート。
  2. 保護者機能
    • 情報の入力が1回だけでよくなる。集計を自動化できる。
    • 先生IDと保護者IDを利用してもらう。
      • 保護者が児童生徒IDを使う、というのではなく、保護者IDは無償で作成可能。
      • メールアドレス収集も不要で、保護者IDを作ることができる。
    • 欠席連絡がデジタル化。
    • 保護者連絡がデジタル化。学習だよりの配布、アンケートの実施も可能に。誰が読んでいるかをリアルタイムで確認することも可能。
    • デジタル連絡帳を、2021年秋 提供予定。日々の連絡事項、体温測定結果の集計などの連絡が可能に。
  3. まなびポケットCBT
    • 小学校2年生~中学校3年生、国語と算数・数学の2教科をComputer Based Testで提供。
    • 項目反応理論(IRT)を採用し、従来の素点や偏差では難しかった通年・経年での学力変化の計測が可能に。
    • CBT結果と日々のデジタル教材の学習データとの相関分析も可能。データに基づいた学びの実現を目指す。
  4. 研修プログラム

 GIGAスクール構想によって一人1台の情報端末が配備されたところで、まだまだこうした活用まではいっていない、という学校や自治体も多いとは思うのですが、「いまはまだそこまで行っていない」というだけであって、いずれ子どもたちはこうした学びの機会を得るようにもなっていくので、「いま技術的にはどこまでできるのか」「今後、どのようなことが教育の現場に入ってくるのか」ということを知るのは、ただ端末の操作方法を知る研修よりもずっと価値のあることだと思いました。

 イベントに参加されていた先生方も、そのように思っていたのではないかと思います。僕自身も大変学ぶことが多いイベントでした。

 堀田先生、NTTコミュニケーションズの稲田さんをはじめ、皆様。レポートを書く機会を与えていただき、ありがとうございました。
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(為田)

書籍ご紹介:『賢い子はスマホで何をしているのか』

 石戸奈々子さんの『賢い子はスマホで何をしているのか』を読みました。タイトルから「スマホで何してるのか?」というところにテーマがあるように思っていましたが、読み進めていくと「デジタルは子どもたちの学びに何をもたらすのか?」というもっと大きなテーマについて学ぶことができました。

 教員研修の講師をさせていただいた後の質疑応答でよくディスカッションになる点なども多く含まれていて、視野が広がりました。大事だなと思ったポイントのメモを共有したいと思います。

 最初に、石戸さんはそもそも「使ってもいい」「使ってはダメ」の二択で語られていることへの違和感を書いています。

私は正直、「使ってもいい」「使ってはダメ」の二択で語られていることに、ものすごく違和感をもっています。大人だって、スマホを見すぎたら目が悪くなるし、時間も奪われる。詐欺にあう人もいれば、スマホ依存になる人もいます。それでも、そうしたデメリットをはるかに上回るメリットがあるから、ここまで愛用されているわけです。
いかにすればデメリットを極限まで減らし、メリットを極限まで増やせるか?そう発送するのが大人の知恵です。決して「リスクがあるから全否定」とはならない。
子どもにスマホタブレットを使わせることについても、同じように考えないほうが不自然だと思うのです。リスクがゼロかと問われたら、問題点はあるでしょう。でも、メリットだってすごく大きい。「どうすればリスクを極限までおさえ、デジタルを活用して大きな教育効果を上げられるか」という議論に時間を割くほうが生産的です。(p.3-4)

 これはスマホだけの話ではなく、もっと大きく「デジタル」全般でも言えることだと思います。

 石戸さんは、デジタルの強みとして、3つの特徴を挙げるそうです。

私は「デジタルの強みって何ですか?」と聞かれたときに、必ず三つの特徴を答えます。創造、効率、共有です。(p.129)

 その特徴が出ている例として、品川区立京陽小学校での授業が紹介されていました。3年生の理科「風とゴムのはたらき」では、シミュレーションの様子が紹介されます。

理科なら、輪ゴムで車を動かします。まずは「輪ゴムの本数を増やすと、ゴムの力はどうなるだろうか?」と問いかけて、子どもたちに予想してもらう。
次に、スクラッチにプログラミングして検証する。スクラッチなら、輪ゴムで車を動かすシミュレーションが簡単に作れます。そのアニメを見ることで、本数による違いをより実感することができるのです。
ここで重要なのは、リアルの世界では難しいことでも、デジタルなら簡単に実現できてしまうこと。例えば、「輪ゴムが5万本だったら、どうなる?」なんて実験すらできてしまう。これまではまず不可能でした。(p.116)

 続いて、5年生の音楽「音楽づくり」では、デジタルが創造のツールになっている様子が紹介されています。

5年生の音楽の授業では、作曲をやりました。でも、考えてみてください。この本を読まれている親御さんが小学生のとき、作曲をするなんて考えられましたか?
(略)
ごくごく一部の例外を除けば、作曲なんて、ほとんどの小学生にとって無縁の存在だったはずです。
ところが、デジタルの世界では、簡単に音が出せるし、さまざまな楽器を使い分けることだってできる。適当に音を鳴らしているうち、それっぽいものができてしまう。「なんか気に入らないな」と思ったら、何度も何度もやり直しができる。
しかも、それを楽譜に落とし込めなかったとしても、機械が保存してくれる。鼻歌を楽譜に置き換えてくれるソフトもすでに存在します。これまでは、思いついた曲を記録として残すことが、小学生には難しかった。そのネックが消えたのです。
これが何を意味するか?表現のハードルが下がるのです。これまで、大半の子は作曲してみようなんて考えもしませんでした。でも、デジタルの力を借りれば、作曲は「ちょっとやってみようかな」という、身近な存在に変わります。(p.118-119)

 楽器ができないから音楽を楽しめない、音楽知識がないから音楽を楽しめない、という状況を、デジタルが飛び越えさせてくれています。リコーダーが吹けなくて音楽を楽しめなかった自分の小学生時代が思い出されます…

 また、5年生の社会の時間で歴史クイズを作ったときには、「創造」と「共有」の特徴が出ていると思いました。

5年生の社会の時間に、歴史クイズを作ったときも同じでした。授業で習ったことは、みんな知っている。驚かせるには、みんなが知らない問題を出すしかない。
ものを作ろうとすると、何がしかのインプットが必要です。インプットがゼロのまま、もの作りをすることはできない。彼らはそれに気づき、自分から情報をとりにいく行動に出た。クイズ形式にしただけで、学びが主体的なものに変わったわけです。
自分が作ったもので、クラスメートに遊んでもらう。これまでの一方通行の授業には存在しない体験です。友だちに遊んでもらうとなれば、ビックリさせたいし、笑わせたいし、「ためになった!」と言ってもらいたい。だから誰に指示されるでもなく、自分から懸命に調べるようになった。
私はこれからの時代、「学び合い」がより価値をもってくると考えていますが、まさにそういう理由なのです。スクラッチを紹介したときに、承認欲求がモチベーションになって、より創作に打ち込むようになると話しましたが、あれもネット上で学び合いをやっているのだと思います。
学び合いは、主体的な学びと深くつながっている。これも、簡単にもの作りでき、簡単に共有できるコンピュータの存在あってこそです。私が「教育のデジタル化は学び方を変える」とくり返す意味が、少しはご理解いただけたでしょうか。(p.124-125)

 デジタルによって、「自分で作る=創造する」機会を多く持つようになることで、人に伝える楽しさ、人と関わる楽しさは、さらに増えるのではないかと思います。そうして自分が創造する側にまわることは、著作権への思いも育むことができると石戸さんは書いています。

クラッチとの付き合い方を見ていても、時間をかけて作品を作る苦労を体験し、その作品が一度でもリスペクトされた経験をもつ子どもは、著作権を軽んじることはありません。リミックスするにしても、原作者へのリスペクトを忘れない。著作権問題も、そちらの方向で解決するのがいいと思うのです。(p.135)

 ここでメモとして書いた以外にも、学校やワークショップでの子どもたちの実際の学んでいる様子を見てきた石戸さんならではの事例の紹介がたくさんありました。先生方にも、保護者の方にも読んでもらいたいと思います。

(為田)