教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

田園調布雙葉中学高等学校 授業レポート(2021年1月)

 2021年1月末に、田園調布雙葉中学高等学校の小林潤一郎 先生に授業の様子を伺いました。小林先生が担当されている情報の授業では、「CG」「AI」「IoT」など、毎週テーマを決めて、オンラインと対面のハイブリッドの授業を行っているそうです。
 小林先生は、「オンラインと対面のハイブリッドの授業がコロナ禍で続いており、オンラインで調べたことを、対面で実践するという構成で情報の授業は非常に生徒が自分ごととして取り組んでいます」と言っていました。

 「AI」をテーマにした授業では、以下の6つのサイトを1つ5~10分くらいずつ見ていったそうです。

 自分の描いた絵がAIで識別されたり、自分の写真をAIを使って絵にしてもらったり、ということを体験することで、「いまのテクノロジーでこうしたことができるのだ」ということを実際に感じることができると思います。
 さまざまなAIを活用したサービスを調べる部分は、オンラインで個人でどんどん進めていってそれを皆で事前に共有し、そこで感じたことなどを対面授業でディスカッションしたり体験することができると思います。みんな楽しんで授業に取り組んでいるそうです。

 成果物として、最後のToonMeで作成した絵などができてくるのも楽しいと思います。自分でもやってみました。いまSNSで使っている自分の写真を読み込ませて、Cartoonにしてもらいました。

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 すごいおもしろいです。これを教室でクラスメイトと見せあったりしながら、AIについて考える授業だったら、絶対に印象深いものになるし、AIで何ができるのかということを考える機会になると思いました。

(為田)

書籍ご紹介:『なめらかな社会とその敵 PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』

 鈴木健なめらかな社会とその敵 PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』を読みました。2013年に出版された本ですが、フェイクニュースや政治の分断の問題など今日的な問題に通じることがたくさん書かれていて、とてもおもしろかったです。

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

  • 作者:鈴木 健
  • 発売日: 2013/01/28
  • メディア: 単行本

 インターネットというテクノロジーの発達によって、社会がどう変わっていくのかということが書かれています。

限りない数の挫折を繰り返した後に、私たちが見ているような現代の普通選挙が、世界史の中で安定的に現実化したのはごくごく最近のことだ。その実現のために多くの血が流れ、失敗の教訓は知の蓄積として、あるいは制度そのものの中に活かされている。
血が乾く間もなく、この10年で、良くも悪くも20世紀的民主主義を支えていた新聞やテレビ、雑誌といったマスメディアは急速に衰退しはじめた。これは、国民国家概念とマスメディアのカップリングが、インターネットの登場による価値観と関心の多様化についてこれなくなりつつある前兆現象であろう。私たちは、ネットの文法に即した新しい民主主義の仕組みを考えなくてはならない。
近代民主主義の成熟は、国民国家概念に依存し、制度の硬直さをもたらしつつある。いま必要とされているのは、間接民主制と直接民主制をハイブリッドにもつネットワーク委任的でダイナミックな民主制を、ネットの技術を用いて実現することである。(p.130)

 テクノロジーによって変質し、現状に即さなくなっている社会をテクノロジーでもって通貨や選挙などさまざまな仕組みを変えていくと例が書かれます。なかでも、これまで「個人」という概念でやってきたこの社会を、さらに小さい「分人」という概念にする、という考え方は非常におもしろいと思いました。
 個人と分人について書かれている部分を引用します。

個人(individual)という幻想

近代民主主義は、一貫した思想と人格をもった個人(individual)が独立して存在している状態を、事実論としても規範論としても想定している。
個人に矛盾を認めず、適度に人格の一貫性を求める社会制度は、人間が認知的な生命体としてもつ多様性を失わせ、矛盾をますます増幅させてしまう。そして、一貫性の強要は、合理化、言い訳を増大させ、投票結果を歪めることになる。
そうした近代的な個人(individual)にかわって、分人(dividual)という概念を提示してみよう。“dividual”は、ジル・ドゥルーズ(哲学)が「管理社会について」という短い論考の中で使った概念である(Deleuze, 1990)。彼は、現代社会は規律社会から管理社会へ移行しているというミッシェル・フーコー(哲学)の分析に着目した。権力のあり方が、学校、監獄、病院、工場といった閉鎖された空間における規律訓練から、生涯教育、在宅電子監視、デイケアといった時空間に開かれた管理へと変容していくという。(p.134)

そもそも“individual"は、否定の接頭語”in"と「分割できる」という意味の"dividual"が合体し、「これ以上分割できない」すなわち個人という意味になった。しかし、神経科学の知見にあるように、人間は本来は分割可能であり、しかもかりそめにも個人として統合してきた規律社会のたがが、もはや外れようとしている。
近代民主主義が前提としている個人(individual)という仮構が解き放たれ、いまや分人(dividual)の時代がはじまろうとしている。人間の矛盾を許容してしまおう。そして、分人によって構成される新しい民主主義、分人民主主義(Divicracy=dividual democracy)を提唱することにしよう。(p.135)

 1票をさらに細かく分けて、さまざまな政策課題に少しずつ投票するということができるようになる、分人民主主義も、テクノロジーで実現できるのではないか、という話が出てきます。

 いまは「個人」と「国家」としかない概念をさらに間に、概念を入れることができるのではないか、というのは、地域にある学校のあり方というのを考える機会にもなりました。

近代の社会システムは、個人と国家をカップリングさせ、この2つの点に離散的な絶対性を帯びさせることによって成り立ってきた。個人と国家が絶対性をもつことは、普段当たり前のことのように考えられている。
だが、個人より小さなレベルとしての分人の概念を、個人(私)と国家(公)の間のレベルにゆるやかな共の概念を、そして国家より大きなレベルとしてグローバルな連帯をもってくれば、なぜ、この2点がそこまで絶対性をもつのかが疑わしくなってくる。分人、個人、共同体、国家、グローバルがなめらかに連なる5つの山を想像してみてほしい。ここにおいては個人と国家を特権化する幻想は崩れ、バランスのいい秩序が保たれている。
このなめらかな社会が実現するために、投票システムそのものを現代的なスタイルに変えてしまおうというのが伝播委任投票システムである。この投票システムは、中間団体を仮想化し、国家を超えたグローバルな連帯を可能にし、個人の中で矛盾した投票をすることができる。(p.172)

 こういうことを考える授業もやってみたいな、と思いました。
 いきなり民主主義の社会を変えることはできなくても、教室でICTを活用して小規模に「分人」を体験してみる、ということはできそうだと思いました。テクノロジーで社会がどう変わってきているのか、テクノロジーで仕組みや制度をどうやって変えることができるのか、ということを考えるのも、これからの時代には必要になるのではないかと思いました。

(為田)

やってみた:Zoomのスタジオエフェクト機能

 朝からZoomを使っていて、背景とフィルターを設定しようと思っていたら、「スタジオエフェクト(Beta)」という表示を見つけました。いつからあったか定かではないですが、試してみようとクリックすると、「眉毛」と「口ひげとあごひげ」を設定できるようです。
 とりあえず、眉毛を太めに、ひげをおしゃれひげにしてみようかな、と思い設定してみると、Zoomに映る自分の顔の上に眉毛とひげがのっています。不思議な感じです。
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 これはおもしろいと思います。もっとバリエーションが増えてくれたらおもしろいのに…。Zoomを使ってオンライン授業をしていると、児童生徒は自分でバーチャル背景をどんどん設定しています。エフェクトなども使うようになるでしょうか。いまの眉毛と「口ひげとあごひげ」であれば、小中学生ではまだまだいらないかな…。リップの色も変えられるので、こちらのエフェクトを使う人もいるかもしれません。

 こうしてスタジオエフェクトが簡単に使えるようになり、さらにいろいろなエフェクトの種類が増えてくると、リアルとバーチャルの垣根が低くなっていくかな…と思いつつ、まずは楽しんで使えればいいかな、と思いました。

(為田)

教材で使えるかも:歴史と地理のコンテンツを6000点以上収録したWebサービス「山川&二宮ICTライブラリ」

 歴史と地理の授業のときにお世話になっていた、山川出版社と二宮書店が、歴史と地理のコンテンツを6000点以上収録したWebサービス「山川&二宮ICTライブラリ」をリリースしました。
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 画像、動画、資料、統計、地図、グラフなど多様な教材が揃っていて、これらを授業準備に活用できるそうです。電子書籍のように1冊まるまるというのではなく、これらの教材をバラバラにして、どれでも使えるようになっているのがいいな、と思います。
 課金の方法がとてもおもしろいな、と思っています。法人向け定額制コースが年間70,000円、個人向け定額制コースが月1,200円となっています。
 たくさんの教材を使えば使うほど、定額制コースがお得になりますね。法人で契約だと決裁が大変そうなので、個人向けでまずは使ってみよう…という先生も多くいらっしゃるのではないかと思いました。
 少しだけ使う、という先生は、単品購入をしてみて、「あれ?こんなに買うんだったら、定額でいいのではないかな…?」というふうになっていくのかもしれません。

 子どもの頃から、社会の時間は資料集や図版ばかり見ていたので、ひさしぶりに僕もいろいろと見てみようかな、と思いました。個人向けで好きな時代の教材を見てみようかな、と思いました。

ywl.jp


(為田)

保護者向け資料として使えるかも:ICT活用ガイドブック(滋賀県)、一人1台端末の効果的な活用に向けたリーフレット(東京都)、GIGAスクール構想保護者用リーフレット(墨田区)

 GIGAスクール構想により、小中学校に一人1台の情報端末が整備されています。いよいよ児童生徒に使わせる、というタイミングの前に、保護者に向けての資料などを配布し、どのような活動に使うのかなど周知していく必要があります。保護者にきちんと説明することが、理解を深め、家庭の協力や理解を得ることにも繋がります。
 最近、続けていくつかの自治体が出している保護者向けのリーフレットやガイドブックなどを見る機会がありましたので、紹介したいと思います(だんだん増えていくといいですね)。

ICT活用ガイドブック(滋賀県

 滋賀県教育委員会が出している、「ICT活用ガイドブック」をご紹介します。先生方に読んでもらうことが目的になっているガイドブックで、PDFで41ページあります。
 なぜICTを活用するのか、という考え方の部分から始まり、教科ごとにどのように利用するのかという実践事例と合わせて紹介しています。文部科学省の資料との結びつきもたくさん見ることができます。
 後半には持ち帰らせるときの注意事項や、保護者向けの文書の例なども掲載されています。 
www.pref.shiga.lg.jp

一人1台端末の効果的な活用に向けたリーフレット(東京都)

 東京都教育委員会が出している、「一人1台端末の効果的な活用に向けたリーフレット」をご紹介します。こちらも先生方に読んでもらうことが目的になっているリーフレットで、PDFで16ページあります。
 こちらも、学校でどのように活用できるのかが具体的に紹介されています。また、最初の見開きページに、「子供たちが学習者用端末を文具として適切に使うことができるよう、発想の転換をすることが私たち教師に求められています」と書かれています。児童生徒が、思考や表現のツールとして学習者用端末を使えるように、たくさんの機会を作ってほしいなと思います。
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infoedu.metro.tokyo.lg.jp

GIGAスクール構想保護者用リーフレット墨田区

 東京都墨田区教育委員会が出している、「GIGAスクール構想保護者用リーフレット」をご紹介します。こちらは、見開き2ページ(全4ページ)にまとめられた、保護者用リーフレットです。保護者に対して、どのような文書を出していくのがいいのか、ということがわかりやすくまとめられています。

まとめ

 3つの自治体の資料をご紹介しましたが、各自治体で担当の方が時間をかけてこうした資料を準備していると思います。もしかすると、学校ごとに作っているケースもあるかもしれません。他の自治体の資料を参考にして、自分の自治体にあった形にカスタマイズしていく、というふうになるといいな、と思います。

(為田)

書籍ご紹介:『学校図書館をハックする 学びのハブになるための10の方法』

 クリスティーナ・A. ホルズワイス、ストーニー・エヴァンス『学校図書館をハックする 学びのハブになるための10の方法』を読みました。帯にある「「自分とカンケーねー場所」のイメージを壊す!」という言葉がとても好きで、手にとりました。

 タイトルにあるとおり、学校図書館が「学びのハブになるための10の方法」=10のハックが書かれています。じっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学校図書館をハックする」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 まず、「ハック1 学校図書館のスペースを変える 図書館をデザインし直せば生徒はやって来る!」です。ここでは、そもそも、学校図書館がいかに魅力ある場所になり得るか、ということが書かれていました。

 ここまで読んで、工学院大学附属中学校・高等学校の図書館がまさにこうだったな、と思いました。訪問したときのレポートへのリンクを貼っておきます。

blog.ict-in-education.jp

 この、チョムスキーの言葉の重たいことよ…。

 続いて、「ハック2 方針、手順、慣習を見直す 重要なこと、つまり「生徒」にフォーカスしよう」では、忙しい学校図書館員の仕事のなかで何をすべきか、ということが書かれています。

 僕が通ったSFC慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では、図書館はメディアセンターと呼ばれていたけど、CNS(Campus Network System)、データベース、AVの3つのコンサルタントカウンターがあって、学生をサポートしていました。コンサルタントは学生がしていて、職員の方も助けてくていました。まさに、この仕組みだったな、と読んでいて思いました。

 次に、「ハック3 「図書館工房」をつくる すべての生徒に、体験を通した学びの楽しみを提供しよう」。図書館工房は、原書では「LIBRATORY(Library+Laboratoryの造語)」が使われているそうです。メイカースペースを作ろう、ということが書かれていました。

 学校図書館が、アナログもデジタルもどちらのメディアにも触れられて、本を読んだり資料を調べるインプットも、文章を書いたりディスカッションで思考を深めたりするアウトプットも、両方でできる場になるといいな、と思いました。

 新渡戸文化小学校のVIVISTOPで参観させていただいた、デジタルとアナログを行ったり来たりする授業を思い出しました。VIVISTOPも、まさに工房でした。
blog.ict-in-education.jp

 「ハック5 図書館プログラムをイノベーティブにする 図書館のプログラムをデザインして、カリキュラムに命を吹き込もう」では、「学校図書館は、コラボレーションというよりは孤立している」(p.108)という問題が取り上げられています。

 学校図書館は、「どんなカリキュラム(教科指導、部活、行事)でも支援できる最高の機器と多様なテクノロジーが揃う場所」(p.108)にすることができます、と書かれていました。GIGAスクール構想で、一人1台の端末が入ってきた時に、学校図書館は大きく変わるチャンスかも知れません。そして、それは先生方にとってもとても助かることなのではないかと思いました。

 「ハック8 学校図書館の重要性を主張する 利用者にとっての価値を伝えよう」では、「ディジタル世界にあって、図書館は時代遅れだと思っている人がいる」という問題点が書かれていました。
 テクノロジーを次々に導入しても「教師も生徒もついていくことができません。そうなると、学校図書館学校図書館員は、ますます自分たちが解決の一部を担えると気づくことになります」(p.184)と、これからの日本の学校にもあてはまる問題点だと思います。

 「ハック9 グローバルなつながりをつくる 図書館の周りにある壁をぶち壊そう」では、ICTを図書館で活用する事例が紹介されています。

 このあたりは、コロナ禍でZoomなどのツールを使う経験が学校に蓄積したこともあるし、GIGAスクール構想で一人1台端末が実現すれば、さらに幅広い使い方ができるようになりそうです。グルっと回って、図書館員の専門性が求められるはずだ、と思っています。

 最後の「ハック10 いつでもどこでも読むことを称える 図書館、学校、地域のなかで読む文化を促進しよう」では、「読む文化」についてのコメントがされていました。

 この、「読み友」をつくるという活動は、学外に出なくても、まずは学内でGoogle Classroomなどで部屋を作ったり、グループを作ったり、というのでもいいかもしれないと思いました。図書委員さんや司書の先生がコミュニティをリードしていく感じでやれば、学内での情報共有にICTを活用しながら、「読む文化」が作っていけるように思います。

 こうして10のハックを読んできて、学校図書館がICTを活用することで「学びのハブ」になる可能性についていろいろとアイデアも出てきました。「読む文化」は、情報活用能力の大事な要素だと思っていますので、学校に実装できそうなアイデアは先生方にどんどん発信していきたいと思いました。

(為田)

書籍ご紹介:『できるGoogle for Educationコンプリートガイド 導入・運用・実践編』

 インプレスさんから、『できるGoogle for Educationコンプリートガイド 導入・運用・実践編』をお送りいただきました。GIGAスクール構想でGoogleChromebookを配備し、Google for Educationを活用しようとしている学校も多いのではないかと思います。タイトルにあるとおり、導入・運用・実践まで、さまざまな情報を読むことができる1冊になっています。

 学校の授業で使いたい、と思って前から読んでいくと、最初の方は導入と運用がメインで管理者が知りたい情報が続くように思いますが、中盤から後半にかけては、「アプリケーションを授業で活用しよう」「校内外のコミュニケーションを円滑にしよう」などの章が出てきますので、授業で使いたいと思う機能について丁寧な操作方法を見ることができます。このあたり、意外とネットで検索して見るよりも、本を横に置いてページを開きながら使ってみたい、という人もいるのではないかと思います。

 また、最後の付録のところでは、「活用事例」として、小2道徳、小4体育、小5理科、小5社会、小6国語、中1理科、中2数学、中2英語、中3総合的な学習の時間、中3社会とGoogle for Educationを使ってどんな授業ができるのかの事例を見ることができます。

 どんな授業ができるのかを事例で知ることができ、知りたい操作方法を丁寧に見ることもできるので、必要なページを開きながら、いろいろと先生方に試してもらえるのではないかと思います。

(為田)