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筑波大学附属駒場高校 授業レポート No.2(2018年10月11日)

 2018年10月11日に、筑波大学附属駒場高校の澤田英輔先生が教える高校2年生の現代文の授業を見学させていただきました。澤田先生は、授業の中でライティング・ワークショップを実践されています(ライティング・ワークショップについては、澤田先生が訳された『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』を参照してください)。

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

書く作業とカンファラン

 ミニ・レッスンが終わると、生徒たちはいよいよ書く作業の時間となります。今回見学した授業では、生徒たちは自分の主張や発見を伝える文章(ジャンルでいうとノンフィクション)を書いていました。この文章は、最終的に作品集としてまとめられるので、そのときに2ページになるように文章を書くそうです。
 生徒たちはそれぞれ思い思いの場所で、思い思いの姿勢で文章を書くプロセスに入りました。今回見学させていただいた授業では、だいたい25分くらいが、書く作業の時間としてとられました。
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 図書館の中には、畳が敷いてあるスペースがあり、そこに円卓が置かれていました。この円卓の上で文章を書いている生徒もいました。それぞれが自分で書く作業に集中できる場所を選べるのはいいと思いました。
 書くことに苦しんでいる生徒もいるそうです。「いちばんの難関は、何を書くかを決めるところ。ディスカバリー・ライティング(自分に発見をもたらすような書く経験)を勧めている。書く経験を通じて、自分に何か発見があるようなライティングの経験をしてほしい」と澤田先生は言っていました。
 書けない生徒には、アイデアの捉まえ方(本棚をぶらつく、メモを書く、しゃべる、など)を伝えて、黙って座るよりはどんどん書いていく(=アウトプット)を薦めることが多いそうです。
 アイデアをノートにメモすることを澤田先生としては推奨しているが、スマホでやっている生徒も多いそうです。このあたりは、慣れの問題なのか、実際に何か違いがあるのか、思考や表現手段の多様性の問題なのか、興味はあります。授業を見ていて、途中でスマホを見ている生徒がとても多いと思ったのですが、そうした理由だったのかと理解できました。こうした思考手段と表現手段の多様性を認めている授業のスタイルがとてもいいと感じました。
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 澤田先生は、前回の授業までの生徒の進捗状況を、生徒の振り返りである「大福帳」を元にiPad miniに記録し、それを元にして、個別の生徒相談(カンファランス)に行く生徒をある程度考えています。Google Classroomで集めたデータは、この大福帳の記録を補う目的で使っています。先生は教室を回り、生徒たちとカンファランスをしていきます。このカンファランスは、ライティング・ワークショップにおいて、非常に重要な意味を持っています。周りの生徒たちの集中をそらさないように、小さな声で個別にカンファランスは行われます。カンファランスでは、生徒が文章を澤田先生に見せながら、感じていることを話します。文章ができてくると、質問も具体的になるので、カンファランスはだんだん長くなるそうです。だいたい1回の授業で10〜15人とカンファランスをするそうです。
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 見ていたカンファランスの中では、生徒の「僕の個人的な思いですけど…」というポロッと出た言葉に対して、澤田先生が「それこそ、君が考えたことであり、価値があることだよ」と伝えていました。こうして、一人ひとりの背中を押してあげるカンファランスは、生徒たちにとって非常に価値のある時間ではないかと思いました。
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 澤田先生が訳された『イン・ザ・ミドル』の中で、著者のアトウェルはライティング・ワークショップの中で、生徒に概念の本質が伝わるオリジナル用語を使うと書かれています。例えば、「それで?の法則」「一粒の小石の法則」「骨まで削ぎ落とせの法則」などのオリジナル用語が紹介されています。
 澤田先生はカンファランスのなかで、「語る主語を小さくする」「問いが明確」「ちゃんと定義している」などのコメントを返していましたが、こうした言葉はアトウェルのオリジナル用語を思い起こさせるものでした。
 また、内容だけではなく、「文末が単調にならないようにするために、音読してみたらいいよ」などのような具体的な手法もアドバイスされていました。

 ある生徒に対して、文章を読んだ澤田先生が「(あなたは)理性の人なんだな、と思う文章だね」とカンファランスの中で言葉をかけていました。作文から、書き手の性質にまでコメントが及ぶカンファランスが生徒たちに与える影響は、ライティング・ワークショップを継続すればするほど大きくなるだろうと感じました。

 先生と生徒のカンファランスだけでなく、生徒同士がそれぞれの文章を読み合い、感想を言う編集会議も、あちこちで行われていました。同じファイルを開いて読めるGoogleドキュメントによって、簡単にこうしたこともできるようになっています。先生は、「書いたものは消さないように」と常に言っているそうです。編集会議やカンファランスを行うごとに生徒はどんどん書き直していきますが、その履歴もクラウド上に残すことができるのも、G-Suite for Educationを使っている利点だと思います。

大福帳に進捗を書き込む

 授業時間の終わりに、生徒たちは自分の顔写真入りの大福帳プリントに進捗を書き込みます。書き込まれた進捗を、澤田先生が音声入力でGoogleスプレッドシートに入力しているそうです。この進捗を見て、澤田先生は次回の授業の進め方などを検討しているそうです。

 No.3に続きます。
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(為田)