教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『ピア・フィードバック ICTも活用した生徒主体の学び方』

 スター・サックシュタインさんの『ピア・フィードバック ICTも活用した生徒主体の学び方』を読みました。ICTを活用することで、「書いたものや作ったものを先生に提出して、先生からフィードバックをもらう」というだけの生徒と先生の関係性だけでなく、生徒同士でもフィードバックを与え合うことができるようになります。また、フィードバックのタイミングも、「提出するタイミング」だけでなく、クラウドにあるデータにいつでもフィードバックをすることができる、という変化もあります。
 そうしたことを、具体的にどんなふうにできるのかを解説してくれている本でした。

 まえがきで、「ピア・フィードバックの力」として、フィードバックをするのを先生だけの仕事にするのではなく、生徒同士のフィードバックもすることでどう変わるのか、ということが書かれています。

長い間、生徒にフィードバックを与えることは教師である私の責任だと考えていました。傲慢にも、その職責を果たす唯一の人間だと信じていたのです(結局のところ、教室の中で学位をもっているの私だけですから!)。
時間が経つにつれて、私は重大なことを学びました。何年にもわたって多くの生徒達を指導してきたおかげで分かったことですが、生徒は教師からのフィードバックより、生徒同士のフィードバックのほうが積極的に受け入れられるのです。基本的な指導と継続的なサポートがあれば、生徒は優れたフィードバックの提供者になれます。そのフィードバックには、読み手や聞き手といった視点からの、何がよいのかという鋭い指摘や改善に向けての建設的な方法が含まれています。
互いにフィードバックをしあうように生徒をエンパワーすることには別の利点もあります。それは、彼らが学習者としての自分自身に気づけることです。教えるということは、学ぶことにおける究極的な表現だからです。生徒にフィードバックを与えたり受け取ったりする機会を頻繁に提供することは、彼らの学習経験を豊かにする力強い方法となります。(p.4-5)

 この本は、「パート1 フィードバックの力」「パート2 フィードバックを生徒に紹介する」「パート3 ピア・フィードバックの基本」の3つのパートに分かれています。
 実際に、どんなツールを使うのか、どんな活動を授業で行うのか、どんなことに気をつけるのかなどまで、書かれています。実際に授業でやってみたらどんなふうになるのかを考えられる本だと思います。

 「ピア・フィードバック」という言葉で、自分のなかでいちばん思い出すのは、2018年10月11日に参観させていただいた、筑波大学附属駒場高校の澤田英輔先生が教える高校2年生の現代文の授業です。先生が自分で書いた文章も見せながら、生徒からのフィードバックを受けていたシーンは、「こんな授業をやってみたい」と思わされるものでした。(僕は、まだこういう授業はできていないなあ、とレポートを読み返してみて思いました…)

blog.ict-in-education.jp

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 一人1台の情報端末が導入されたからこそ、学校でピア・フィードバックをしやすい環境ができたとも言えます。これからの授業づくりに役立つ本だと思いました。

(為田)