フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。
今回は、さまざまな遠近法について、PowerPointの機能だけで説明する方法を紹介します。遠近法は、さまざまな作品制作の際に使えますが、今回は、ポスター制作などのようなデザイン制作の際に、キャッチコピーなどを目立たせるために活用することを想定した、説明方法を紹介します。
紙でデザインを描くのと違って、ICTを使うことで、デザインをその場ですぐに変更できるので、同じ状態のものを、ある要素だけその場で変えて見せることで、実際に見え方がどう変わったのかがわかりやすく示すことができます。
授業前準備
遠近法を説明するための提示資料を、事前にPowerPointを使って教材ファイルを準備しておきましょう。
- PowerPointを起動して、スライド1枚に以下のような同じ円を2つ配置する。
- 1.で作ったスライドを複製して、合計9枚用意する。1~9枚目のスライドが同じものになる。2枚目~9枚目のスライドは、授業中に児童生徒の目の前で変化する様子を見せるためのスライドとして利用する。
- スライドを1枚挿入する。新しく挿入した10枚目のスライドに、以下のような2つの三角形が向き合った図形を配置する。
- 3.で作ったスライドを3枚複製する。10~12枚目のスライドが同じものになる。
- 11枚目と12枚目のスライドは、授業中にスライドを切り替えて見せて説明するために使う。
- 11枚目は、図形の線を使って、以下のように仕上げます。
- 12枚目は、同様に図形の線を使って、以下のように仕上げます。
授業の流れ
授業の中で遠近法について説明するために、PowerPointを起動して、作成しておいた教材ファイルを開きましょう。
1枚目と10枚目は、初期状態がわかるように編集せずにそのままとっておき、2~9枚目は、授業中に実際に目の前に変化の様子を見せ、11・12枚目は、スライドを切り替えて見せて説明するために使います。
2枚目~9枚目のスライドは、以下の操作をすることで、画面の2つの円のどちらが近く見えるか/遠くに見えるか、を質問してください。
- 2枚目: 大きさによる遠近法
- 右側の円だけ大きくします。
- 大きいものほど、近く感じやすいです。
- 3枚目: 色による遠近法1
- 右側の円だけ色を赤にします。
- 赤や黄などの暖色系の色は、前方に進出してくるように見え、青や紫などの寒色系の色は、後退していくように見えます。
- 4枚目: 色による遠近法2
- 3枚目の円の後ろに、互いの色の四角を配置します。
- 3枚目の状態よりも、円の見え方が違うように感じるかと思います。
- 5枚目: 線の太さによる遠近法
- 右側の円だけ線の太さを太くします。
- それだけではわかりづらい場合は、図形で線を引き、細い線と太い線を引いて比較させたり、図形の二等辺三角形を細く作って、線の太さがだんだん太くなっている線のように見える形を作ります。線が太いと、近くにあるように感じやすいです。
- 6枚目: 焦点による遠近法
- 右側の円だけ輪郭をぼかします。
- 円を選び、リボンの「書式」タブの「図形のスタイル」グループにある「図形の効果」の「ぼかし」で任意の数値を選びます。
- 遠くにあるものほど、焦点がぼやけて見えます。
- 7枚目: 重なりによる遠近法
- 左側の円を右側の円に少し重ねます。
- 重ねることで、前後の位置関係がわかりやすくなります。
- 8枚目: 影の重なりによる遠近法
- 右側の円に影を付け、左側の円を右側の円の影に少し重ねます。
- 右側の円を選び、リボンの「書式」タブの「図形のスタイル」グループにある「図形の効果」の「影」で「影のオプション」を選びます。「図形の書式設定」ウィンドウが表示されたら、透明度・サイズ・ぼかし・角度・距離のバーを調整して影を付けます。
- 左側の円を右側の円の影に少し重ねます。このとき、影の手前に円がきてしまう場合は、円を選んだまま、リボンの「書式」タブの「配置」グループにある「背面へ移動」をクリックします。
- 物体同士が重なっていなくても、影の重なりで前後関係がわかります。
- 右側の円に影を付け、左側の円を右側の円の影に少し重ねます。
- 9枚目: 大きさ・焦点・重なりによる遠近法
- 右側の円をコピー・貼り付けで2つに増やし、1つは大きくして輪郭をぼかして左側の円の手前に少し重なるように配置します。もう1つは小さくして輪郭をぼかして左側の円の後ろに少し重なるように配置します。
- 写真撮影で、ピントを合わせたものより手前にあるものや奥にあるものがぼやけて撮影される現象を再現したものです。
- 11枚目: 透視図法による遠近法1
- 上下の線がない状態だと、透視図法を表しているように見えず、遠近感がありませんでしたが、三角形が接している部分を消失点として、消失点に向かう線を足すことで、透視図法による遠近感を感じやすくなります。
- 上下の線がない状態だと、透視図法を表しているように見えず、遠近感がありませんでしたが、三角形が接している部分を消失点として、消失点に向かう線を足すことで、透視図法による遠近感を感じやすくなります。
- 12枚目: 透視図法による遠近法2
- 消失点とつながっている三角形の辺を補助線と見立てて、三角形の中に垂直の線を足し、線同士の幅を消失点に向かって徐々に狭くすることで、透視図法による遠近感を感じやすくなります。
- ちなみに、線の幅が等間隔だと、遠近感は感じません。
- 消失点とつながっている三角形の辺を補助線と見立てて、三角形の中に垂直の線を足し、線同士の幅を消失点に向かって徐々に狭くすることで、透視図法による遠近感を感じやすくなります。
まとめ
遠近法を知っておくと、目立たせたいところが手前にくるようにしたり、作品の中に奥行きや空間を作ったり、メリハリをつけたりすることができるので、デザインだけでなく、自画像や風景画、静物画などでも活用できます。
上記の遠近法の説明をしながら、実際に該当する遠近法を使用している作品のサンプルを見せたり、逆に、作品のサンプルを見せてから、どこが目立っているか、どうして目立って見えるのかを児童生徒に考えさせてから、該当する遠近法を説明するということもできるかと思います。
(前田)